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そんな時に、南の国の王女との結婚の話が舞い込んだ。僕がヘレネを愛していることを知っている父上が頭を抱えているところに遭遇した僕は、言ってしまったんだ。「いいですよ」って。それが、三つ目。
国のことも、ヘレネの気持ちも、ぜんぶ、全部無視して僕の気持ちを優先すれば、僕は幸せになれたかもしれない。結婚してから精いっぱいの愛を注げば、いずれは彼女の気持ちも僕の方を向いてくれたのではないだろうか。
でも、僕にはその勇気がなかった。
僕はレオン殿に連絡して事情を話した。レオン殿が婚約者を持とうとしないことは知っていた。ヘレネは気持ちを自覚していないようだったがレオン殿は明らかにヘレネに好意を持っていたから、婚約する気にならなかったのだろう。
案の定、彼は二つ返事で了承した。
もう後戻りはできなかった。これはヘレネのためなのだ。
第一王子である僕はいずれ王位を継ぐ。小国という立場では、ヘレネよりも国全体の利益を優先しなければならないことが増えるだろう。
一方でレオン殿は大国である北の帝国の第3皇子、しかも皇位継承権を放棄している。彼の方がヘレネを幸せにできるだろう。侯爵夫人だ。今は公爵令嬢だから格下のように聞こえはするが、小国の公爵と大国の侯爵で比較すれば当然大国の侯爵の方が上だ。
僕が身を引くだけで、愛し合う2人は生涯を共にできるのだ。ヘレネもその方がより幸せだ。僕の決断は、きっと間違っていない。
「ヘレネ、幸せそうです」
僕はぽつりと呟いた。春のおだやかな光に祝福された2人は、この先間違いなく愛し合う幸せな夫婦であり続けるだろう。
「ああ、そうだな」
父上は優しく返事をしてくれる。
僕は窓の外に視線を向けた。
さてさて、僕も気持ちを切り替えなければ。
嫁いでくる王女は容姿端麗で性格は快活で思いやりにあふれていると聞く。きっと愛せるはずだ。
光がにじむ。僕の今の顔はヘレネたちには見せられないな。
国のことも、ヘレネの気持ちも、ぜんぶ、全部無視して僕の気持ちを優先すれば、僕は幸せになれたかもしれない。結婚してから精いっぱいの愛を注げば、いずれは彼女の気持ちも僕の方を向いてくれたのではないだろうか。
でも、僕にはその勇気がなかった。
僕はレオン殿に連絡して事情を話した。レオン殿が婚約者を持とうとしないことは知っていた。ヘレネは気持ちを自覚していないようだったがレオン殿は明らかにヘレネに好意を持っていたから、婚約する気にならなかったのだろう。
案の定、彼は二つ返事で了承した。
もう後戻りはできなかった。これはヘレネのためなのだ。
第一王子である僕はいずれ王位を継ぐ。小国という立場では、ヘレネよりも国全体の利益を優先しなければならないことが増えるだろう。
一方でレオン殿は大国である北の帝国の第3皇子、しかも皇位継承権を放棄している。彼の方がヘレネを幸せにできるだろう。侯爵夫人だ。今は公爵令嬢だから格下のように聞こえはするが、小国の公爵と大国の侯爵で比較すれば当然大国の侯爵の方が上だ。
僕が身を引くだけで、愛し合う2人は生涯を共にできるのだ。ヘレネもその方がより幸せだ。僕の決断は、きっと間違っていない。
「ヘレネ、幸せそうです」
僕はぽつりと呟いた。春のおだやかな光に祝福された2人は、この先間違いなく愛し合う幸せな夫婦であり続けるだろう。
「ああ、そうだな」
父上は優しく返事をしてくれる。
僕は窓の外に視線を向けた。
さてさて、僕も気持ちを切り替えなければ。
嫁いでくる王女は容姿端麗で性格は快活で思いやりにあふれていると聞く。きっと愛せるはずだ。
光がにじむ。僕の今の顔はヘレネたちには見せられないな。
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