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21 愛している1
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「「愛してる」って言われながら抱かれると、女はいつもよりずっと気持ちよくなれるらしいのよ」
いつもと変わらぬ調子の姫様の言葉。けれど
「それは…流石に…」
リチャード様は、躊躇った。
「なによ。罵るのは平気なのに愛を囁くことはできないの?おかしな男ね」
「っ…」
「まぁいいわ」
ほっと胸を撫で下ろすリチャード様。
「あなたの代わりなんていくらでもいるもの」
「っ…!」
けれど続けられた姫様の言葉に、弾かれたように顔を上げた。
「いつも言っているでしょう?私はあなたに無理強いする気はないのよ。これはあくまで、ミリアへの罰なのだから。リチャードが妻に遠慮して言えないなら、心にもない言葉を平然と言える男にやらせるだけだわ」
「…っ…」
「初めて会う男に「愛してる」なんて嘘だと分かりきった言葉を吐かれながら抱かれるミリアは、どんな顔をするのかしらね?とても楽しみだわ」
どうしてこの方は、こんな残酷なことを言う時でさえ、こんなにも美しいのだろう…。
何もできず、ただぼんやりと姫様を見つめる。
「ふふっ。そのまま恋に落ちてしまったりするのかしらね?」
姫様は、いつも通りとても楽しそうだ。
「リチャード。誰か呼んできて。前に言った通り誰でもいいのよ。私の目の前で、命令通りにミリアを抱けるのならね。…ああでも、毎回見繕うのは面倒だから、どうせなら長続きしそうな男がいいわ」
今度こそ、ダメかもしれない。リチャード様は断るかもしれない。
だって、真面目なリチャード様が、嘘でも「愛してる」なんて私に言えるとは思えない。
奥様がいる、リチャード様が…。
悄然と、うなだれる。
顔を上げられない。顔を上げたら絶対に、リチャード様に縋ってしまうから。
だからせめて、俯いたままリチャード様を送り出してそして……
………そして…リチャード様が選んだ誰か…に…
ブルブルと体が震えてしまうのは、どうしようもなかった。
嫌だ…。
リチャード様以外の誰かに触れられるなど。嫌だ。
嫌…嫌…嫌…嫌……
コツコツと靴音がして、俯いた視界に軍靴のつま先が入った。
「はあっ…」
リチャード様の重いため息。
びくりと肩が震える。
呆れられてしまった。
これで最後かもしれないのに…。
「はあ…」
もう一度、大きなため息。
「申し…訳…」
「…私が君を、今さら見捨てる訳がないだろう」
小さな呟き。
驚いて顔を上げた。
リチャード様の真っ直ぐな瞳と視線が合う。
「だが覚えておいて欲しい。今日私が君に何を言おうと、それは口先だけのことだ。気持ちなど、欠片もないと」
「はい…はいっ…」
夢中で頷いた。
リチャード様が相手をしてくださるのなら、私は平気だ。
たとえどれだけ辛くても平気だ。
相手がリチャード様ならば…
そう、思っていたのだけれど。
想像していたよりもずっと、この日は辛かった。
リチャード様が、何度も私に囁くのだ。「愛している」と。
キスをしながら。
胸を愛撫しながら。
…挿れて、奥を突きながら。
「愛している」と繰り返すのだ。
何度も。何度も。
胸が切り裂かれたように痛くて。
でも同時に、得も言われぬ喜びが全身を満たした。
何度、「これは姫様に命令されただけなのだから」と自分に言い聞かせても無駄だった。
気持ちなどないと、はっきり告げられていたのに。
涙が止まらなくなるほど嬉しかった。
いつもと変わらぬ調子の姫様の言葉。けれど
「それは…流石に…」
リチャード様は、躊躇った。
「なによ。罵るのは平気なのに愛を囁くことはできないの?おかしな男ね」
「っ…」
「まぁいいわ」
ほっと胸を撫で下ろすリチャード様。
「あなたの代わりなんていくらでもいるもの」
「っ…!」
けれど続けられた姫様の言葉に、弾かれたように顔を上げた。
「いつも言っているでしょう?私はあなたに無理強いする気はないのよ。これはあくまで、ミリアへの罰なのだから。リチャードが妻に遠慮して言えないなら、心にもない言葉を平然と言える男にやらせるだけだわ」
「…っ…」
「初めて会う男に「愛してる」なんて嘘だと分かりきった言葉を吐かれながら抱かれるミリアは、どんな顔をするのかしらね?とても楽しみだわ」
どうしてこの方は、こんな残酷なことを言う時でさえ、こんなにも美しいのだろう…。
何もできず、ただぼんやりと姫様を見つめる。
「ふふっ。そのまま恋に落ちてしまったりするのかしらね?」
姫様は、いつも通りとても楽しそうだ。
「リチャード。誰か呼んできて。前に言った通り誰でもいいのよ。私の目の前で、命令通りにミリアを抱けるのならね。…ああでも、毎回見繕うのは面倒だから、どうせなら長続きしそうな男がいいわ」
今度こそ、ダメかもしれない。リチャード様は断るかもしれない。
だって、真面目なリチャード様が、嘘でも「愛してる」なんて私に言えるとは思えない。
奥様がいる、リチャード様が…。
悄然と、うなだれる。
顔を上げられない。顔を上げたら絶対に、リチャード様に縋ってしまうから。
だからせめて、俯いたままリチャード様を送り出してそして……
………そして…リチャード様が選んだ誰か…に…
ブルブルと体が震えてしまうのは、どうしようもなかった。
嫌だ…。
リチャード様以外の誰かに触れられるなど。嫌だ。
嫌…嫌…嫌…嫌……
コツコツと靴音がして、俯いた視界に軍靴のつま先が入った。
「はあっ…」
リチャード様の重いため息。
びくりと肩が震える。
呆れられてしまった。
これで最後かもしれないのに…。
「はあ…」
もう一度、大きなため息。
「申し…訳…」
「…私が君を、今さら見捨てる訳がないだろう」
小さな呟き。
驚いて顔を上げた。
リチャード様の真っ直ぐな瞳と視線が合う。
「だが覚えておいて欲しい。今日私が君に何を言おうと、それは口先だけのことだ。気持ちなど、欠片もないと」
「はい…はいっ…」
夢中で頷いた。
リチャード様が相手をしてくださるのなら、私は平気だ。
たとえどれだけ辛くても平気だ。
相手がリチャード様ならば…
そう、思っていたのだけれど。
想像していたよりもずっと、この日は辛かった。
リチャード様が、何度も私に囁くのだ。「愛している」と。
キスをしながら。
胸を愛撫しながら。
…挿れて、奥を突きながら。
「愛している」と繰り返すのだ。
何度も。何度も。
胸が切り裂かれたように痛くて。
でも同時に、得も言われぬ喜びが全身を満たした。
何度、「これは姫様に命令されただけなのだから」と自分に言い聞かせても無駄だった。
気持ちなどないと、はっきり告げられていたのに。
涙が止まらなくなるほど嬉しかった。
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