文字の大きさ
大
中
小
385 / 2,093
都市崩壊編
放たれた槍
――自身の変化を実感するようにミドルは握りしめた槍に視線を向け、この日のために王妃から受け取った「聖剣」に匹敵する能力を持つ槍を掲げる。名前は「ロンギヌス」と呼ばれ、製作者は過去に召喚された勇者であると伝えられているが、実際の所は槍が誰が作り出したのかは文献には残っていない。
レナが持ち込んだ「カラドボルグ」や「エクスカリバー」そしてゴウライの手に渡った「デュランダル」に対抗するために王妃も過去の勇者が作り出した聖具を集めており、ミドルが受け取ったロンギヌスも王妃の人脈によって入手した伝説の槍である。
『この槍の力を使いこなせたとき、貴方は勇者を超える存在になれるのよ』
王妃から槍を受け取ったときに言われた言葉を思い出し、彼女の期待に応えるためにミドルはロンギヌスを握りしめると、自分と向かい合うように立つレナ達に顔を向ける。その表情は先ほどまでの苦痛は一切感じられず、むしろ今までにない力の高揚感を感じていた。
「ああっ……これは凄いね。流石は竜種というべきかな」
「お前……」
「くっ……!?悪いけどもう少し小さく喋ってくれないかな?どうやら五感が完全に馴染んでいないせいか、妙に耳が聞こえるようになってね」
ミドルの変化にレナが呟いた途端、彼はまるで至近距離から大声を放たれたように聴覚が過敏に感じ取ってしまう。その様子を見た剣聖達はミドルの変化に危機感を感じ取り、各々が武器を構える。
「こいつ……やりやがったな」
「竜種の経験値を全て奪い取ったというのか……」
「既に英雄の領域に至った人間が竜種の経験値を得た場合……どうなるのでしょうか?」
「知らないわよそんなこと……前例がないんだから」
歴史上でも竜種に戦闘を挑み、勝利をする人間は少なからず存在する。しかし、今回のミドルの場合は地竜の体内に眠っていた核を破壊したことで全ての経験値を独り占めした事に等しい。過去に召喚された勇者のような偉大な存在ならばともかく、この世界で生まれ育った人間の中で上位の竜種の経験値を一人だけで受け入れた人間は存在しない。
「おい、ゴウライ!!お前は何度も竜種を仕留めているんだろ!?あいつみたいに変化することはあるのか?」
『確かに吾輩は何度か竜種を討伐している。しかし、ここまでの大物を相手にしたことはないぞ』
最強の剣聖であるゴウライも過去に何度か竜種の討伐を行っているが、彼女が倒した竜種の殆どは成体ではなく幼体の竜種ばかりであり、今回の地竜のような怪物を倒したことはない。だが、幼体とはいえ単独で竜種を屠る力を誇るのはゴウライだけであり、彼女は背中のデュランダルを引き抜いてミドルの元へ向かう。
『だが、これほどの大物と戦える機会が巡り合うとは行幸だ。ここは手合わせを願おうではないか』
「……構いません。僕も貴方とは一度戦ってみたかった」
「なっ!?おいっ!?」
大剣を引き抜いて近寄ってくるゴウライに対してミドルも槍を構え、二人は嬉々とした表情を浮かべて向かい合う(片方は兜に隠れて顔は見えないが)。そんな二人の行動にシュンは声を掛けようとしたが、彼が止める前にミドルは動き出す。
「だが……まずは先に君との決着を付けさせてもらう!!」
『何っ!?』
「レナ!!」
武器を構えたゴウライに対してミドルは目にも止まらぬ速度で彼女の横を駆け抜けると、ゴンゾウに抱えられているレナの元へ向かう。咄嗟にレナの周囲に存在した人間は彼を庇うために動こうとしたが、今のミドルの視界はまるでカメラ映像のスローモーションのように周囲の人間の動作がゆっくりと見えた。
「もう、遅いっ!!」
他の人間が行動を移す前にミドルはレナの肉体に目掛けて槍を振りかざし、投擲する。投げ放たれたロンギヌスは全身に不気味な光を放ちながら標的であるレナの胸元へ向かい、その肉体を貫こうとした。
「くっ……!?」
迫りくる槍の刃に対してレナは両目の眼を光り輝かせ、剣鬼としての能力を発動させる。その瞬間、レナの肉体に重力を操作する紅色の魔力が滲み、周囲の光景がスローモーションのように物体の動作が減速する。
(間に合えっ!!)
加速した肉体を動かし、どうにかゴンゾウの肩の上から飛び降りようとした。結果的には槍が肉体に衝突する前にレナは地面に向けて落下する事に成功し、投擲された槍を回避する事に成功した。
(なっ!?)
だが、ロンギヌスは空中で方向転換を行い、軌道を変更して地面に向けて飛び降りたレナの心臓に目掛けて最接近する。まるで自動追尾のように近づいてくる槍にレナは目を見開き、このままでは助からないことを理解する。
(不味い……!?)
咄嗟に両腕を交差して胸元への直撃を避けようとしたレナだったが、ロンギヌスの刃がレナの肉体を傷つける事はなく、衝突の寸前にレナの傍に存在した人物が庇うように身を乗り出す。
「させないっ!!」
「っ……!?」
レナの耳元に聞き覚えのある声が響き渡り、その直後にレナの視界には自分の身代わりとなって胸元に槍を受けた人間の姿が映し出された――
レナが持ち込んだ「カラドボルグ」や「エクスカリバー」そしてゴウライの手に渡った「デュランダル」に対抗するために王妃も過去の勇者が作り出した聖具を集めており、ミドルが受け取ったロンギヌスも王妃の人脈によって入手した伝説の槍である。
『この槍の力を使いこなせたとき、貴方は勇者を超える存在になれるのよ』
王妃から槍を受け取ったときに言われた言葉を思い出し、彼女の期待に応えるためにミドルはロンギヌスを握りしめると、自分と向かい合うように立つレナ達に顔を向ける。その表情は先ほどまでの苦痛は一切感じられず、むしろ今までにない力の高揚感を感じていた。
「ああっ……これは凄いね。流石は竜種というべきかな」
「お前……」
「くっ……!?悪いけどもう少し小さく喋ってくれないかな?どうやら五感が完全に馴染んでいないせいか、妙に耳が聞こえるようになってね」
ミドルの変化にレナが呟いた途端、彼はまるで至近距離から大声を放たれたように聴覚が過敏に感じ取ってしまう。その様子を見た剣聖達はミドルの変化に危機感を感じ取り、各々が武器を構える。
「こいつ……やりやがったな」
「竜種の経験値を全て奪い取ったというのか……」
「既に英雄の領域に至った人間が竜種の経験値を得た場合……どうなるのでしょうか?」
「知らないわよそんなこと……前例がないんだから」
歴史上でも竜種に戦闘を挑み、勝利をする人間は少なからず存在する。しかし、今回のミドルの場合は地竜の体内に眠っていた核を破壊したことで全ての経験値を独り占めした事に等しい。過去に召喚された勇者のような偉大な存在ならばともかく、この世界で生まれ育った人間の中で上位の竜種の経験値を一人だけで受け入れた人間は存在しない。
「おい、ゴウライ!!お前は何度も竜種を仕留めているんだろ!?あいつみたいに変化することはあるのか?」
『確かに吾輩は何度か竜種を討伐している。しかし、ここまでの大物を相手にしたことはないぞ』
最強の剣聖であるゴウライも過去に何度か竜種の討伐を行っているが、彼女が倒した竜種の殆どは成体ではなく幼体の竜種ばかりであり、今回の地竜のような怪物を倒したことはない。だが、幼体とはいえ単独で竜種を屠る力を誇るのはゴウライだけであり、彼女は背中のデュランダルを引き抜いてミドルの元へ向かう。
『だが、これほどの大物と戦える機会が巡り合うとは行幸だ。ここは手合わせを願おうではないか』
「……構いません。僕も貴方とは一度戦ってみたかった」
「なっ!?おいっ!?」
大剣を引き抜いて近寄ってくるゴウライに対してミドルも槍を構え、二人は嬉々とした表情を浮かべて向かい合う(片方は兜に隠れて顔は見えないが)。そんな二人の行動にシュンは声を掛けようとしたが、彼が止める前にミドルは動き出す。
「だが……まずは先に君との決着を付けさせてもらう!!」
『何っ!?』
「レナ!!」
武器を構えたゴウライに対してミドルは目にも止まらぬ速度で彼女の横を駆け抜けると、ゴンゾウに抱えられているレナの元へ向かう。咄嗟にレナの周囲に存在した人間は彼を庇うために動こうとしたが、今のミドルの視界はまるでカメラ映像のスローモーションのように周囲の人間の動作がゆっくりと見えた。
「もう、遅いっ!!」
他の人間が行動を移す前にミドルはレナの肉体に目掛けて槍を振りかざし、投擲する。投げ放たれたロンギヌスは全身に不気味な光を放ちながら標的であるレナの胸元へ向かい、その肉体を貫こうとした。
「くっ……!?」
迫りくる槍の刃に対してレナは両目の眼を光り輝かせ、剣鬼としての能力を発動させる。その瞬間、レナの肉体に重力を操作する紅色の魔力が滲み、周囲の光景がスローモーションのように物体の動作が減速する。
(間に合えっ!!)
加速した肉体を動かし、どうにかゴンゾウの肩の上から飛び降りようとした。結果的には槍が肉体に衝突する前にレナは地面に向けて落下する事に成功し、投擲された槍を回避する事に成功した。
(なっ!?)
だが、ロンギヌスは空中で方向転換を行い、軌道を変更して地面に向けて飛び降りたレナの心臓に目掛けて最接近する。まるで自動追尾のように近づいてくる槍にレナは目を見開き、このままでは助からないことを理解する。
(不味い……!?)
咄嗟に両腕を交差して胸元への直撃を避けようとしたレナだったが、ロンギヌスの刃がレナの肉体を傷つける事はなく、衝突の寸前にレナの傍に存在した人物が庇うように身を乗り出す。
「させないっ!!」
「っ……!?」
レナの耳元に聞き覚えのある声が響き渡り、その直後にレナの視界には自分の身代わりとなって胸元に槍を受けた人間の姿が映し出された――
感想 5,097
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
スキルを奪われてお詫びチートをもらったので余生を楽しく……過ごさせてくれ
異世界に召喚されたその日、巻き込まれた青年に俺が得るはずだったスキルを奪われた。
お詫びとしてチートスキルを授かった俺は、第二の人生くらい好きに生きようと旅に出る。
行き着いた先は、寂れた町の場末の酒場だ。
なぜか客は男ばかりだが、日雇い冒険者や恐妻家の肉屋たちとの気楽な毎日は悪くない。
……ただ一人、どう見ても貴族のような美青年がこの地味な酒場へ通ってくる理由だけは、さっぱりわからない。
「お前らツケはやめろ」
そんな穏やかな日々を送っていたはずなのに、ある日、酒場へ厄介な依頼が舞い込んできた――。
他サイトでも掲載しています。
不定期更新です。
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~
皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。
だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。
しかし彼女は知らなかった。
帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。
これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
祝 書籍化決定!!
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
コミカライズ企画進行中です!!
3巻発売です!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&3巻出版!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(3巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
夏にはいよいよコミカライズ連載開始予定です!乞うご期待!!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)