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「今までこの子達は何の力を使って道術使ってたんだろう……?」
霊力の他にも何か力があるのか?あんまりこの世界の設定に関わるような本読んでなかったからなぁ。寝ている間にちょっと書庫に行ってみるか。
「えーっと、歴史の本とか……あった」
育成ゲームなのに手が込んでいるな。
ぱらぱらとその本をめくってみる。
「ふぅん? 妖怪と妖怪を退治する道士がいると」
へえー。RPGみたいな要素だな。育成ゲームに必要かどうかと言われたら要らないと思うけど。いろんな人間がその道士をまとめて組織を作っているらしい。
その中でも最も栄誉がある組織は「映月」という宮廷直属、正確に言うと皇太子が作り上げたとされる道士の集団だという。選りすぐりにエリート集団で、完全な実力主義。妖怪退治のエキスパートなので色々な場所から依頼を受けて妖怪を退けているらしい。
「妖怪は人々を襲う邪悪な存在。妖力を用いて術を使う生物……」
おお、ファンタジーだな~。でも、あの子達には関係ない話だな。他に良い本ないかな。
その後色々本を見たが、これといった情報一つ出てこなかった。もしかしたらこの書庫にはないのかも知れない。そもそも、ゲームのくせにこんなに詳しい本がある事自体が珍しいんだ。それ以上を求めたって仕方ないだろう。
「所詮、あの子達もゲームの存在で、一生現実の俺と会うことはないんだから……」
なんだか虚しくなってきて、俺は一度ゲームをセーブして切った。
時計をみるともう夜の8時になっている。ぐうっと腹が鳴り、朝から何も食べていないことに気付く。ひとまず食べ物を探すためキッチンに向かった。
「ご飯……冷蔵庫に何もない……」
休日だからとゲームをやりすぎた。買い出しに行く予定だったのを思い出したが、今更スーパーに行くのも億劫だ。
「コンビニですませるか」
幸いなことに近い位置にコンビニがあったので、夕飯を買いにスマホと家の鍵を持って外に出る。
空は真っ暗だが、街灯の明かりや家の電気のお陰で夜道は全く怖くない。
「とはいえ、車通りが無いわけじゃないから気をつけないと……な?」
そんな独り言を言っていると、不意に数メートル先の街灯がチカチカと点滅した。そして、ふっと消える。
なんだか不気味に感じて一度足を止めると、次には何事も無かったかのようについた。
しかし、何故かその下に人がいた。
「うおっ!」
驚いて思わず声を上げてしまう。先ほどまでは確かにいなかったはずなのに、瞬きをしただけで現れるだろうか?いや、ありえない。
ま、まさか幽霊……?
そういう現象には一生無縁だと思っていたのだが、自分の目で確かに見た。疑いようがない。
一歩二歩、俺は後ろに下がっていく。すると、ぱちりと瞬きをした一瞬で目の前に金色の何かが広がった。
「やあ、こんな遅くに申し訳ない。折角あの子達の好感度が一番高くて死ななそうな君に頼みがあるんだが」
「……っ!!」
手首を掴まれた。その異常に冷たい手を振り払おうとするが体が硬直して動けない。
そうこうしているうちにぐっと奴の顔が近づいた。黄金色の髪、ぞっとするほど美しい顔。彼は不気味に笑顔を貼り付けてそんなことを言っていた。肌身で俺は、彼を自分と同じ人間では無いと判断した。その異様さにぞわりと背筋を震わせる。
「ゲームの中にいるあの子達に会いたくないかい?」
「な、に、言って」
「まあ、大変心苦しいが選ばれてしまった君には拒否権はないのだけど」
とんっと軽く肩を押された。するとぱあっと足下が光り出し、体がどんどん沈んでいく。誰かに助けを求めようとも声がでない。
「もう二度と会うことはないから私のことは気にしないで。君のために用意したからどうか楽しんでおくれ」
彼は笑って手を振っていた。それを最後に俺の意識はぷつりと切れてしまう。
――そうして俺は、異世界に転移してしまったらしい。
霊力の他にも何か力があるのか?あんまりこの世界の設定に関わるような本読んでなかったからなぁ。寝ている間にちょっと書庫に行ってみるか。
「えーっと、歴史の本とか……あった」
育成ゲームなのに手が込んでいるな。
ぱらぱらとその本をめくってみる。
「ふぅん? 妖怪と妖怪を退治する道士がいると」
へえー。RPGみたいな要素だな。育成ゲームに必要かどうかと言われたら要らないと思うけど。いろんな人間がその道士をまとめて組織を作っているらしい。
その中でも最も栄誉がある組織は「映月」という宮廷直属、正確に言うと皇太子が作り上げたとされる道士の集団だという。選りすぐりにエリート集団で、完全な実力主義。妖怪退治のエキスパートなので色々な場所から依頼を受けて妖怪を退けているらしい。
「妖怪は人々を襲う邪悪な存在。妖力を用いて術を使う生物……」
おお、ファンタジーだな~。でも、あの子達には関係ない話だな。他に良い本ないかな。
その後色々本を見たが、これといった情報一つ出てこなかった。もしかしたらこの書庫にはないのかも知れない。そもそも、ゲームのくせにこんなに詳しい本がある事自体が珍しいんだ。それ以上を求めたって仕方ないだろう。
「所詮、あの子達もゲームの存在で、一生現実の俺と会うことはないんだから……」
なんだか虚しくなってきて、俺は一度ゲームをセーブして切った。
時計をみるともう夜の8時になっている。ぐうっと腹が鳴り、朝から何も食べていないことに気付く。ひとまず食べ物を探すためキッチンに向かった。
「ご飯……冷蔵庫に何もない……」
休日だからとゲームをやりすぎた。買い出しに行く予定だったのを思い出したが、今更スーパーに行くのも億劫だ。
「コンビニですませるか」
幸いなことに近い位置にコンビニがあったので、夕飯を買いにスマホと家の鍵を持って外に出る。
空は真っ暗だが、街灯の明かりや家の電気のお陰で夜道は全く怖くない。
「とはいえ、車通りが無いわけじゃないから気をつけないと……な?」
そんな独り言を言っていると、不意に数メートル先の街灯がチカチカと点滅した。そして、ふっと消える。
なんだか不気味に感じて一度足を止めると、次には何事も無かったかのようについた。
しかし、何故かその下に人がいた。
「うおっ!」
驚いて思わず声を上げてしまう。先ほどまでは確かにいなかったはずなのに、瞬きをしただけで現れるだろうか?いや、ありえない。
ま、まさか幽霊……?
そういう現象には一生無縁だと思っていたのだが、自分の目で確かに見た。疑いようがない。
一歩二歩、俺は後ろに下がっていく。すると、ぱちりと瞬きをした一瞬で目の前に金色の何かが広がった。
「やあ、こんな遅くに申し訳ない。折角あの子達の好感度が一番高くて死ななそうな君に頼みがあるんだが」
「……っ!!」
手首を掴まれた。その異常に冷たい手を振り払おうとするが体が硬直して動けない。
そうこうしているうちにぐっと奴の顔が近づいた。黄金色の髪、ぞっとするほど美しい顔。彼は不気味に笑顔を貼り付けてそんなことを言っていた。肌身で俺は、彼を自分と同じ人間では無いと判断した。その異様さにぞわりと背筋を震わせる。
「ゲームの中にいるあの子達に会いたくないかい?」
「な、に、言って」
「まあ、大変心苦しいが選ばれてしまった君には拒否権はないのだけど」
とんっと軽く肩を押された。するとぱあっと足下が光り出し、体がどんどん沈んでいく。誰かに助けを求めようとも声がでない。
「もう二度と会うことはないから私のことは気にしないで。君のために用意したからどうか楽しんでおくれ」
彼は笑って手を振っていた。それを最後に俺の意識はぷつりと切れてしまう。
――そうして俺は、異世界に転移してしまったらしい。
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