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24.食料調達
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その後は順調で、何事もなく野営できたのであった。その後は特に何も無かったからあえて語る必要はないだろう。
ミリアとゆっくり馬車で話せて幸せな時間だったけどな。
「街が見えましたよ!」
次の街では油断しないようにしないとな。
「次は皆で行動致しましょう!」
リンスさんがそう宣言する。
ダンテさんとベリーさんは苦笑いである。
ようやく反省したかと言った感じ。
もしかして、リンスさんは常習犯だったんだろうか。言う事を聞くことの方が少ない。みたいな。
「いやー。ミリア様とナイル様には感謝しかありませんな。リンスお嬢様が人の言う事を聞く、反省するのなんか滅多にありませんからな。有難う御座います」
こっそりとダンテさんに礼を言われた。やっぱり普段はお転婆なお嬢様らしい。俺達と合流してからはそんなお転婆さはあまり発揮していなかったが。この前のような事があったから、さすがに懲りたんだろう。
「まずは、食料の調達です。お嬢様、何か気になるのがあれば購入されてみてはいかかですか?その方が食事のバリエーションも増えますし」
「それはいいわね! 行きますわよ!」
リンスさん、割とチョロい。
ダンテさんは流石に何年もリンスさんの身の回りの世話をしてるだけある。性格をよく熟知している。
それなら、この前のような事も予期出来たんでは無いかと思ったりもするけどな。あれは俺がいたから大丈夫って思ってくれたのかな?
「これなんかどうでしょうか? 甘くて美味しいですぞ?」
ダンテさんが手に取ったのはオレンジ色したマンゴーのような果物である。
「それは、食べたことがあるわね。食べるわ。えーっと、それはなんですの?」
黒い板状の物を見てそう質問する。
「それはノリさ。海藻を乾燥させたものだよ」
ダンテさんに聞いたつもりだろうが、親切に店の人が教えてくれた。
海藻か。いいな。
おれ、骨だから食えないんだった。
はぁ。肉体が欲しい。
「ノリ……美味しいんですの?」
「そういう人が多いから試食を用意してんのさ。食べてみるかい?」
「ゴクリ……えぇ。食べますわ」
少し躊躇った後に食べると回答して頬を変な汗が伝っている。黒い食べ物だから不安なんだろう。
店の人が鍋から海藻入りの汁物を器に盛りつける。器に入っている海藻は少し緑がかっていた。
リンスさんはフォークでその海藻と掬うと目をギュッと閉じて一気に口に入れた。少し口の中で味わったのだろう。
目を見開いて。
「美味しいですわ! ダンテ! これをいっぱい買うのですわ!」
「はっ! かしこまりました。ご主人、これはどのくらいの数ありますか?」
「あぁ。ここにある十枚だよ。けどさ、これ手間がかかるから意外と高いんだ。一枚で銀貨五枚なんだぞ? そんな大量に────」
ダンテが皮袋に手を入れるとジャラリと金貨を五枚出した。
「これで、全部下さい」
「お、おう。わかった。ありがてぇや」
ノリを十枚取ると全てをダンテさんに渡した。
それを受け取ると今度はダンテさんが名刺のような物を出しておじさんに渡した。
「お嬢様がここまで気に入った食べ物は初めてです。宜しければ、定期的に頂けませんか?料金はもう少し多くお支払いするので、王都に運べますか?」
「なぁ!? いいのかい? 王都までならいつも頼んでる商人にお願いすれば運んでくれる。是非、頼みてぇ。この辺りじゃ、なかなか売れなくてなぁ」
「ぜひ、アーノルド家と契約をお願いします。後で契約書を使いの者に持って来てもらいますので」
「あ、あぁ。有難う御座います」
そのオジサンは口を開けてまだ事態を飲み込めていないような呆然としていた。
「おじさま? 食事時の楽しみが出来ましたわ。礼を言いますわ」
スカートを掴んで礼をするリンスさん。
食にそんなにこだわり無さそうだったけど。
「お嬢様はかなりの偏食家で私共はいつも苦労させられていたんでございます。こんなに自分から美味しいと言って食べるのは稀なんでございます」
不思議そうに見ていた俺とミリアにそう説明してくれたダンテさん。
「へぇ。リンスさん、良かったですね!」
「えぇ! なんか食材の買い物も楽しいものたんですわね! ダンテ、今度から食材の買い出しにはわたくしも連れていきなさい?」
「は、はい! お、お嬢様がそんな事を言うなんて……成長しましたね……リンスお嬢様……」
ダンテさんは涙を流している。
そんなに? そんなに嬉しかったの?
「侍女であるわたくしめなんぞと買い物をして頂けただけでも幸せなのに、自分が買い出しに行くなんて……なんて素晴らしいお嬢様なの? こんな木っ端な私が付いていていいものなんでしょうか……」
なんかベリーさんがすげぇ卑下たこと言ってる。ホントに精神的に大丈夫なのかな?そんなんで。
「そ、そんなに言うことですの? わたくしはこんなに食材の買い物が楽しいものだとは知らなかったですわ。あっ! あれはなんですの!?」
今度は赤いものを見つけたようだ。
あれ……この世界にもあるんだ。
「すっ、すっぱいですわーーー!」
「カッカッカッ! 酸っぱいじゃろう? じゃが、その奥にこの梅の旨味があるじゃろう? 分かるかえ?」
お婆さんがなんか料理評論家みたいなこと言ってる。そんな事わかんないだろ。あれって、酸っぱいだけの時あるよな。
「分かりますわ! ダンテ、これも買っておくのですわ!」
「はっ! かしこまりました!」
なんだかダンテさんが嬉しそう。
よかったね。ダンテさん。
あー食いたいなぁ。梅干し。
あっ。いかんいかん。ヨダレが……出ないわ。
骨だもん。
ミリアとゆっくり馬車で話せて幸せな時間だったけどな。
「街が見えましたよ!」
次の街では油断しないようにしないとな。
「次は皆で行動致しましょう!」
リンスさんがそう宣言する。
ダンテさんとベリーさんは苦笑いである。
ようやく反省したかと言った感じ。
もしかして、リンスさんは常習犯だったんだろうか。言う事を聞くことの方が少ない。みたいな。
「いやー。ミリア様とナイル様には感謝しかありませんな。リンスお嬢様が人の言う事を聞く、反省するのなんか滅多にありませんからな。有難う御座います」
こっそりとダンテさんに礼を言われた。やっぱり普段はお転婆なお嬢様らしい。俺達と合流してからはそんなお転婆さはあまり発揮していなかったが。この前のような事があったから、さすがに懲りたんだろう。
「まずは、食料の調達です。お嬢様、何か気になるのがあれば購入されてみてはいかかですか?その方が食事のバリエーションも増えますし」
「それはいいわね! 行きますわよ!」
リンスさん、割とチョロい。
ダンテさんは流石に何年もリンスさんの身の回りの世話をしてるだけある。性格をよく熟知している。
それなら、この前のような事も予期出来たんでは無いかと思ったりもするけどな。あれは俺がいたから大丈夫って思ってくれたのかな?
「これなんかどうでしょうか? 甘くて美味しいですぞ?」
ダンテさんが手に取ったのはオレンジ色したマンゴーのような果物である。
「それは、食べたことがあるわね。食べるわ。えーっと、それはなんですの?」
黒い板状の物を見てそう質問する。
「それはノリさ。海藻を乾燥させたものだよ」
ダンテさんに聞いたつもりだろうが、親切に店の人が教えてくれた。
海藻か。いいな。
おれ、骨だから食えないんだった。
はぁ。肉体が欲しい。
「ノリ……美味しいんですの?」
「そういう人が多いから試食を用意してんのさ。食べてみるかい?」
「ゴクリ……えぇ。食べますわ」
少し躊躇った後に食べると回答して頬を変な汗が伝っている。黒い食べ物だから不安なんだろう。
店の人が鍋から海藻入りの汁物を器に盛りつける。器に入っている海藻は少し緑がかっていた。
リンスさんはフォークでその海藻と掬うと目をギュッと閉じて一気に口に入れた。少し口の中で味わったのだろう。
目を見開いて。
「美味しいですわ! ダンテ! これをいっぱい買うのですわ!」
「はっ! かしこまりました。ご主人、これはどのくらいの数ありますか?」
「あぁ。ここにある十枚だよ。けどさ、これ手間がかかるから意外と高いんだ。一枚で銀貨五枚なんだぞ? そんな大量に────」
ダンテが皮袋に手を入れるとジャラリと金貨を五枚出した。
「これで、全部下さい」
「お、おう。わかった。ありがてぇや」
ノリを十枚取ると全てをダンテさんに渡した。
それを受け取ると今度はダンテさんが名刺のような物を出しておじさんに渡した。
「お嬢様がここまで気に入った食べ物は初めてです。宜しければ、定期的に頂けませんか?料金はもう少し多くお支払いするので、王都に運べますか?」
「なぁ!? いいのかい? 王都までならいつも頼んでる商人にお願いすれば運んでくれる。是非、頼みてぇ。この辺りじゃ、なかなか売れなくてなぁ」
「ぜひ、アーノルド家と契約をお願いします。後で契約書を使いの者に持って来てもらいますので」
「あ、あぁ。有難う御座います」
そのオジサンは口を開けてまだ事態を飲み込めていないような呆然としていた。
「おじさま? 食事時の楽しみが出来ましたわ。礼を言いますわ」
スカートを掴んで礼をするリンスさん。
食にそんなにこだわり無さそうだったけど。
「お嬢様はかなりの偏食家で私共はいつも苦労させられていたんでございます。こんなに自分から美味しいと言って食べるのは稀なんでございます」
不思議そうに見ていた俺とミリアにそう説明してくれたダンテさん。
「へぇ。リンスさん、良かったですね!」
「えぇ! なんか食材の買い物も楽しいものたんですわね! ダンテ、今度から食材の買い出しにはわたくしも連れていきなさい?」
「は、はい! お、お嬢様がそんな事を言うなんて……成長しましたね……リンスお嬢様……」
ダンテさんは涙を流している。
そんなに? そんなに嬉しかったの?
「侍女であるわたくしめなんぞと買い物をして頂けただけでも幸せなのに、自分が買い出しに行くなんて……なんて素晴らしいお嬢様なの? こんな木っ端な私が付いていていいものなんでしょうか……」
なんかベリーさんがすげぇ卑下たこと言ってる。ホントに精神的に大丈夫なのかな?そんなんで。
「そ、そんなに言うことですの? わたくしはこんなに食材の買い物が楽しいものだとは知らなかったですわ。あっ! あれはなんですの!?」
今度は赤いものを見つけたようだ。
あれ……この世界にもあるんだ。
「すっ、すっぱいですわーーー!」
「カッカッカッ! 酸っぱいじゃろう? じゃが、その奥にこの梅の旨味があるじゃろう? 分かるかえ?」
お婆さんがなんか料理評論家みたいなこと言ってる。そんな事わかんないだろ。あれって、酸っぱいだけの時あるよな。
「分かりますわ! ダンテ、これも買っておくのですわ!」
「はっ! かしこまりました!」
なんだかダンテさんが嬉しそう。
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あー食いたいなぁ。梅干し。
あっ。いかんいかん。ヨダレが……出ないわ。
骨だもん。
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