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1.特異な提案
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「ラメリア、お前にはバルドリュー伯爵家でメイドとして働いてもらう」
「はい?」
父の言葉に、私は少し上ずった声で答えることになった。
しかしそれは、当然の反応であるといえるだろう。なぜならお父様が言っていることは、まったくもって意味がわからないことだからだ。
「どうして私が伯爵家のメイドなんかしなければならないんですか? 公爵家の令嬢が他家のそれも地位が低い家に奉仕するなんて聞いたことがありませんよ」
「ああ、確かに珍しいことではあるかもしれないな。だが、お前にはそれが必要だ」
「仰っていることの意味がわかりませんね?」
貴族の令嬢が、より身分の高い家にメイドとして働きに行くということは、私も聞いたことがある。
だが公爵家の令嬢である私が、伯爵家に仕えるなんて信じられることではない。
「王家や、せめて同じ公爵家であるならば、まだ私も納得することができますが、地位が低い伯爵家に仕えるというのは納得できません。それはお父様にとっても、屈辱的なことではありませんか? エルヴェルト公爵家の名を落とすことになりますよ?」
「バルドリュー伯爵家は、エルヴェルト公爵家の遠縁にあたる家だ。故にお前のことは、公にはならんさ」
「どこから漏れるかわからないでしょうに……」
お父様の頑なな態度に、私は少し怒りを覚えていた。
どうしてそこまで、私をメイドとして働かせたいのだろうか。その真意を早く話してもらいたい。
「お父様、私を伯爵家でメイドとして働かせたい理由を話してください。それを明確にしていただかなければ、納得することなんてできませんよ」
「もちろん元より話すつもりだったさ……ラメリア、お前は優しい子だ」
「え?」
そこで私は、少し勢いを失うことになった。
お父様の言葉が、予想外のものだったためである。
まさか、今このタイミングでそんなことを言われるとは思っていなかった。なんだか少し照れ臭くて、お父様から目をそらしてしまう。
「しかし、お前はその優しさ故に鬼を心に宿している。それはお前も、自覚しているのではないだろうか?」
「鬼……」
「私はお前に、その狂暴な一面を抑える術を身に着けて欲しいと思っている。しかしそれは、ここでは成し遂げられないものだ。私はそう判断した」
「……」
お父様が何を言っているのか、私は理解していた。
確かに、私は怒ると周りが見えなくなってしまうことがある。それは私の悪い癖であるだろう。
伯爵家に勤めることが、それを矯正する手段になるのかは、少しわからない。しかしそれでも、それがお父様が悩んだ結果であることは、その表情からわかった。
「……わかりました。お父様がそこまで言うなら、その提案を受け入れましょう」
「そう言ってもらえると、こちらとしてもありがたいよ」
結局私は、お父様からの提案を受け入れることにした。
考えた結果、何か見えてくるものがあるかもしれないと思ったからだ。
こうして私は、遠縁の伯爵家にメイドとして奉仕することになったのだった。
「はい?」
父の言葉に、私は少し上ずった声で答えることになった。
しかしそれは、当然の反応であるといえるだろう。なぜならお父様が言っていることは、まったくもって意味がわからないことだからだ。
「どうして私が伯爵家のメイドなんかしなければならないんですか? 公爵家の令嬢が他家のそれも地位が低い家に奉仕するなんて聞いたことがありませんよ」
「ああ、確かに珍しいことではあるかもしれないな。だが、お前にはそれが必要だ」
「仰っていることの意味がわかりませんね?」
貴族の令嬢が、より身分の高い家にメイドとして働きに行くということは、私も聞いたことがある。
だが公爵家の令嬢である私が、伯爵家に仕えるなんて信じられることではない。
「王家や、せめて同じ公爵家であるならば、まだ私も納得することができますが、地位が低い伯爵家に仕えるというのは納得できません。それはお父様にとっても、屈辱的なことではありませんか? エルヴェルト公爵家の名を落とすことになりますよ?」
「バルドリュー伯爵家は、エルヴェルト公爵家の遠縁にあたる家だ。故にお前のことは、公にはならんさ」
「どこから漏れるかわからないでしょうに……」
お父様の頑なな態度に、私は少し怒りを覚えていた。
どうしてそこまで、私をメイドとして働かせたいのだろうか。その真意を早く話してもらいたい。
「お父様、私を伯爵家でメイドとして働かせたい理由を話してください。それを明確にしていただかなければ、納得することなんてできませんよ」
「もちろん元より話すつもりだったさ……ラメリア、お前は優しい子だ」
「え?」
そこで私は、少し勢いを失うことになった。
お父様の言葉が、予想外のものだったためである。
まさか、今このタイミングでそんなことを言われるとは思っていなかった。なんだか少し照れ臭くて、お父様から目をそらしてしまう。
「しかし、お前はその優しさ故に鬼を心に宿している。それはお前も、自覚しているのではないだろうか?」
「鬼……」
「私はお前に、その狂暴な一面を抑える術を身に着けて欲しいと思っている。しかしそれは、ここでは成し遂げられないものだ。私はそう判断した」
「……」
お父様が何を言っているのか、私は理解していた。
確かに、私は怒ると周りが見えなくなってしまうことがある。それは私の悪い癖であるだろう。
伯爵家に勤めることが、それを矯正する手段になるのかは、少しわからない。しかしそれでも、それがお父様が悩んだ結果であることは、その表情からわかった。
「……わかりました。お父様がそこまで言うなら、その提案を受け入れましょう」
「そう言ってもらえると、こちらとしてもありがたいよ」
結局私は、お父様からの提案を受け入れることにした。
考えた結果、何か見えてくるものがあるかもしれないと思ったからだ。
こうして私は、遠縁の伯爵家にメイドとして奉仕することになったのだった。
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