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6.知り合いの令嬢
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客室から出てきた私は、早足で王城の中を歩いていた。
とにかく重要なのは、無事に家に帰ることである。イルヴァン様が何を考えているかはわからないが、それを最優先に考えた方がいいだろう。
「……あら? あなたは、マルテリア嬢ではありませんか?」
「え?」
急いでいた私は、話しかけられたことによって足を止めざるを得なかった。
声が聞こえてきた方向を見ると、見覚えがある女性がいる。その女性の姿に、私は少し驚いてしまう。
「あなたは、クルメリア・ガルファンド侯爵令嬢ですか?」
「ええ、お久し振りですね。まさか、あなたとこんな所で会うなんて思っていませんでした」
「それは、こちらの台詞ですよ」
そこにいたのは、知り合いの侯爵令嬢であった。
彼女がどうしてこんな所にいるのか、それが私にはわからない。私が知っている限りでは、彼女が王城に来る用事なんてないはずなのだが。
「ふふ、私がどうしてここにいるのか、ですか? それは非常に簡単な話です」
「簡単な話?」
「あなたのおかげですよ。マルテリア嬢」
「私のおかげ?」
クルメリア嬢は、私に対して笑みを浮かべていた。
その下卑た笑みに、私はとある仮説を思いついた。もしかしたら、私の婚約破棄には彼女が関わっているのではないだろうか。
「流石のあなたでも、ここまでヒントを与えてあげればわかりますか……そうですよ。私が、新しい第二王子の婚約者です」
「ど、どうしてあなたが……?」
「私の方が相応しいと、イルヴァン様が思ってくださったからですよ。簡単な話だと言ったでしょう。私の方が、魅力的だったというだけです」
クルメリア嬢は、勝ち誇ったというような顔をしていた。前々から知っていたことではあるが、彼女はプライドが高い。そんな彼女にとって、王子に見初められたという事実は嬉しいものであるのだろう。
ただ私は、そんな彼女の態度に違和感を抱いていた。なんというか、彼女がわざと私を煽っているような気がしたのだ。
そこで私は思い出した。早く帰った方がいいと、ずっとそう思っていたということを。
「……クルメリア嬢、申し訳ありませんが、私は急いでいるのです」
「あら? そうですか?」
「ええ、ですからこれで失礼いたします」
「あっ……」
クルメリア嬢に適当に言葉をぶつけてから、私は再び早足で歩き始めた。
なんというか、不安だ。イルヴァン様に婚約破棄を告げられてから、ずっと心に何かが引っかかっている。
「……危ないっ!」
「え?」
そんなことを考えている私は、突然横から衝撃を受けた。
それによって私の体は、ゆっくりと地面に倒れていく。
その際に私の視界に映ったのは赤いものだった。それが血であることを直感で確信した瞬間、私の意識は途切れたのだった。
とにかく重要なのは、無事に家に帰ることである。イルヴァン様が何を考えているかはわからないが、それを最優先に考えた方がいいだろう。
「……あら? あなたは、マルテリア嬢ではありませんか?」
「え?」
急いでいた私は、話しかけられたことによって足を止めざるを得なかった。
声が聞こえてきた方向を見ると、見覚えがある女性がいる。その女性の姿に、私は少し驚いてしまう。
「あなたは、クルメリア・ガルファンド侯爵令嬢ですか?」
「ええ、お久し振りですね。まさか、あなたとこんな所で会うなんて思っていませんでした」
「それは、こちらの台詞ですよ」
そこにいたのは、知り合いの侯爵令嬢であった。
彼女がどうしてこんな所にいるのか、それが私にはわからない。私が知っている限りでは、彼女が王城に来る用事なんてないはずなのだが。
「ふふ、私がどうしてここにいるのか、ですか? それは非常に簡単な話です」
「簡単な話?」
「あなたのおかげですよ。マルテリア嬢」
「私のおかげ?」
クルメリア嬢は、私に対して笑みを浮かべていた。
その下卑た笑みに、私はとある仮説を思いついた。もしかしたら、私の婚約破棄には彼女が関わっているのではないだろうか。
「流石のあなたでも、ここまでヒントを与えてあげればわかりますか……そうですよ。私が、新しい第二王子の婚約者です」
「ど、どうしてあなたが……?」
「私の方が相応しいと、イルヴァン様が思ってくださったからですよ。簡単な話だと言ったでしょう。私の方が、魅力的だったというだけです」
クルメリア嬢は、勝ち誇ったというような顔をしていた。前々から知っていたことではあるが、彼女はプライドが高い。そんな彼女にとって、王子に見初められたという事実は嬉しいものであるのだろう。
ただ私は、そんな彼女の態度に違和感を抱いていた。なんというか、彼女がわざと私を煽っているような気がしたのだ。
そこで私は思い出した。早く帰った方がいいと、ずっとそう思っていたということを。
「……クルメリア嬢、申し訳ありませんが、私は急いでいるのです」
「あら? そうですか?」
「ええ、ですからこれで失礼いたします」
「あっ……」
クルメリア嬢に適当に言葉をぶつけてから、私は再び早足で歩き始めた。
なんというか、不安だ。イルヴァン様に婚約破棄を告げられてから、ずっと心に何かが引っかかっている。
「……危ないっ!」
「え?」
そんなことを考えている私は、突然横から衝撃を受けた。
それによって私の体は、ゆっくりと地面に倒れていく。
その際に私の視界に映ったのは赤いものだった。それが血であることを直感で確信した瞬間、私の意識は途切れたのだった。
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