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第32話 大切なことは
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私は、お兄様とともにお父様とアルニラ様の元に来ていた。
入学式に来なかったお父様は、何かを思い出したかのように目を丸くしていた。私が悲しんでいることを伝えたお兄様の意図を、理解したのだろう。
それは、私にはわからないことである。一体、お兄様は何を意図して、お父様は何を理解したのだろうか。
「そうだ……一番大切な言葉を忘れていたな。入学おめでとう。ラルネア……」
「あっ……」
お父様の言葉に、私は気づいた。
確かに、私はこれを言って欲しかったのだ。
入学することの喜びを、ともに分かち合いたかった。だから、お父様に入学式に来て欲しかった。ただ、それだけだったのだ。
「ありがとうございます……お父様」
「いや……私は、まだまだ駄目だな。アルードの言葉の意図を何も理解できないとは……」
私のお礼に、お父様は少し苦笑いした。
お父様は後悔しているが、私は別にそれが悪いことだとは思っていない。お父様の立場で、お兄様の言葉をすぐに理解するのは難しいことだろう。どうしても、罪悪感が勝ってしまうはずだ。
それでも、結論に辿り着けたのだから、お父様はすごいだろう。
「あなたに、もう一つ言いたいことがあります」
「む……?」
そこで、アルニラ様がお父様に話しかけた。
その口調は、少し厳しめだ。よくわからないが、お父様はまだ間違いを犯していたようである。
「あなたは先程、自身が取り返しのつかないことをしたと言いました。ですが、それをあの子の前で言うことは許されることではありません」
「それは……」
「あなたがしたことが、どれ程のことであっても、それをあの子の前で言わないでください。これ以上言わなくてもわかりますよね?」
「……そうだな」
アルニラ様が怒っていたのは、お父様の先程の発言だった。
それは恐らく、取り返しのつかないことをした結果、私が生まれたという事実があるからだろう。
私が生まれてきたのは、お父様が取り返しのつかないことをしたからである。それは、間違いなく取り返しがつかないことだ。しかし、私の前でだけはそれを言ってはいけなかったのである。
「すまなかったな……ラルネア」
「いえ……」
なぜなら、私が生まれてきたことを否定しているかのように取られ兼ねないからだ。お父様にそのような意図がなくても、そう思わせる可能性がある。だから、言わない方がいいと、アルニラ様は言っているのだ。
それを、私の前で注意したのは、お父様がそう思っていないことを知らせるためだろう。どこまで優しいアルニラ様らしい言葉である。
入学式に来なかったお父様は、何かを思い出したかのように目を丸くしていた。私が悲しんでいることを伝えたお兄様の意図を、理解したのだろう。
それは、私にはわからないことである。一体、お兄様は何を意図して、お父様は何を理解したのだろうか。
「そうだ……一番大切な言葉を忘れていたな。入学おめでとう。ラルネア……」
「あっ……」
お父様の言葉に、私は気づいた。
確かに、私はこれを言って欲しかったのだ。
入学することの喜びを、ともに分かち合いたかった。だから、お父様に入学式に来て欲しかった。ただ、それだけだったのだ。
「ありがとうございます……お父様」
「いや……私は、まだまだ駄目だな。アルードの言葉の意図を何も理解できないとは……」
私のお礼に、お父様は少し苦笑いした。
お父様は後悔しているが、私は別にそれが悪いことだとは思っていない。お父様の立場で、お兄様の言葉をすぐに理解するのは難しいことだろう。どうしても、罪悪感が勝ってしまうはずだ。
それでも、結論に辿り着けたのだから、お父様はすごいだろう。
「あなたに、もう一つ言いたいことがあります」
「む……?」
そこで、アルニラ様がお父様に話しかけた。
その口調は、少し厳しめだ。よくわからないが、お父様はまだ間違いを犯していたようである。
「あなたは先程、自身が取り返しのつかないことをしたと言いました。ですが、それをあの子の前で言うことは許されることではありません」
「それは……」
「あなたがしたことが、どれ程のことであっても、それをあの子の前で言わないでください。これ以上言わなくてもわかりますよね?」
「……そうだな」
アルニラ様が怒っていたのは、お父様の先程の発言だった。
それは恐らく、取り返しのつかないことをした結果、私が生まれたという事実があるからだろう。
私が生まれてきたのは、お父様が取り返しのつかないことをしたからである。それは、間違いなく取り返しがつかないことだ。しかし、私の前でだけはそれを言ってはいけなかったのである。
「すまなかったな……ラルネア」
「いえ……」
なぜなら、私が生まれてきたことを否定しているかのように取られ兼ねないからだ。お父様にそのような意図がなくても、そう思わせる可能性がある。だから、言わない方がいいと、アルニラ様は言っているのだ。
それを、私の前で注意したのは、お父様がそう思っていないことを知らせるためだろう。どこまで優しいアルニラ様らしい言葉である。
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