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第37話 長女の言葉
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私は、部屋でくつろいでいた。
ただ、そうやって休んでいる内も、お兄様との婚約のことがずっと気掛かりである。
この婚約は、喜ぶべきものだ。だが、このような形でお兄様と結ばれることになるなど、まったく予想していなかったことである。
だからなのか、私はとてもよくわからない気持ちになっていた。色々とあって、まだ心の整理ができていないのだ。
「失礼します」
「あ、はい……」
そんな私の耳に、部屋の戸を叩く音が聞こえてきた。
現在、お母さんはアルニラ様の元にいる。そのため、私が出るしかない。
「あっ……イルマリお姉様」
「ラルネア、お邪魔してもいいかしら?」
「あ、はい。大丈夫です」
部屋を訪ねて来たのは、イルマリお姉様だった。
何故この部屋を訪ねて来たのかは、大体わかる。恐らく、私とお兄様との婚約を聞きつけて、来てくれたのだろう。
イルマリ姉様は、とても優しい。だから、きっと私が悩んでいると思って来てくれたのだろう。
ただ、今日は、イルマリお姉様一人のようだ。いつもなら、ウィルテリナお姉様も一緒のはずである。しかし、どちらかに予定があったら一人で来ることもあるので、今日はそのパータンなのだろう。
「さて……まずは、あなたにお祝いの言葉を贈らせてもらえるかしら?」
「お祝いですか?」
「ええ、アルードお兄様との婚約が決まったのでしょう? おめでとう、ラルネア」
「あ、はい……」
イルマリお姉様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
やはり、お姉様はそれを聞きつけて来てくれたようだ。
ただ、私はお祝いの言葉を素直に受け取れるような心情ではなかった。色々と複雑な心境だからだ。
「ラルネア、あなたがどういう気持ちかはわからないけれど、でも、そういう顔をしているのは良くないわ」
「え?」
「婚約というものは、喜ぶべきことなのよ? 例え、あなたがどう思っていてもそれは変わらない。例えば、魔法学校で婚約のことが知られて、クラスの人にお祝いの言葉をかけられた時、そのような態度でいるとどう思われる? それを考えたら、賢いあなたならわかるはずよね?」
「あっ……」
イルマリお姉様の言葉に、私は気づいた。
確かに、私はお祝いの言葉にこのような表情をしていてはいけないのだ。
貴族として、そんな顔をしている所を、他の人に見られたら、色々な噂を立てられたり、侮られたりするだろう。
それは、あってはならないことなのだ。ルーデイン家の一員として、堂々としていなければならない。それを、私はすっかり忘れていたようだ。
ただ、そうやって休んでいる内も、お兄様との婚約のことがずっと気掛かりである。
この婚約は、喜ぶべきものだ。だが、このような形でお兄様と結ばれることになるなど、まったく予想していなかったことである。
だからなのか、私はとてもよくわからない気持ちになっていた。色々とあって、まだ心の整理ができていないのだ。
「失礼します」
「あ、はい……」
そんな私の耳に、部屋の戸を叩く音が聞こえてきた。
現在、お母さんはアルニラ様の元にいる。そのため、私が出るしかない。
「あっ……イルマリお姉様」
「ラルネア、お邪魔してもいいかしら?」
「あ、はい。大丈夫です」
部屋を訪ねて来たのは、イルマリお姉様だった。
何故この部屋を訪ねて来たのかは、大体わかる。恐らく、私とお兄様との婚約を聞きつけて、来てくれたのだろう。
イルマリ姉様は、とても優しい。だから、きっと私が悩んでいると思って来てくれたのだろう。
ただ、今日は、イルマリお姉様一人のようだ。いつもなら、ウィルテリナお姉様も一緒のはずである。しかし、どちらかに予定があったら一人で来ることもあるので、今日はそのパータンなのだろう。
「さて……まずは、あなたにお祝いの言葉を贈らせてもらえるかしら?」
「お祝いですか?」
「ええ、アルードお兄様との婚約が決まったのでしょう? おめでとう、ラルネア」
「あ、はい……」
イルマリお姉様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
やはり、お姉様はそれを聞きつけて来てくれたようだ。
ただ、私はお祝いの言葉を素直に受け取れるような心情ではなかった。色々と複雑な心境だからだ。
「ラルネア、あなたがどういう気持ちかはわからないけれど、でも、そういう顔をしているのは良くないわ」
「え?」
「婚約というものは、喜ぶべきことなのよ? 例え、あなたがどう思っていてもそれは変わらない。例えば、魔法学校で婚約のことが知られて、クラスの人にお祝いの言葉をかけられた時、そのような態度でいるとどう思われる? それを考えたら、賢いあなたならわかるはずよね?」
「あっ……」
イルマリお姉様の言葉に、私は気づいた。
確かに、私はお祝いの言葉にこのような表情をしていてはいけないのだ。
貴族として、そんな顔をしている所を、他の人に見られたら、色々な噂を立てられたり、侮られたりするだろう。
それは、あってはならないことなのだ。ルーデイン家の一員として、堂々としていなければならない。それを、私はすっかり忘れていたようだ。
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