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第29話 勇者、学業に励む
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翌朝、一晩寝てすっかり元気になった俺は、身支度を整えてからマントを捲って中を確認した。
既にリリーナは起きていて、赤い砂粒のような瞳で俺を見上げて来る。ちゃんと寝れたか?と尋ねそうになったが、この分身に睡眠は必要なのだろうか。
「俺は出かけるけど、リリーナはここにいるか?」
リリーナは俺を見上げてジュと一度鳴くと、小さな手足をバタつかせてマントの中から抜け出した。俺はリリーナが残したパン屑を払って、マントを広げて身に付ける。
「また夜に戻って来るから……」
ここに隠れていてくれ、と続けようとして、客観的に自分を見て言葉が止まる。
どうして俺は、ネズミに外出許可を取っているのだろう。
しかし、リリーナはあのオーナーの娘で、オーナーと同じく学園を追放されている。
理事たちはオーナーを恨んでいるようだし、その娘が学園に忍び込んでいる事がバレたらきっと無傷では済まない。俺は虫が潰されるように簡単に殺されかけたのだから。
魔術で作った分身一体が殺されても死んだりしないけれど、出来るだけ身を潜めていた方がいい。
そう思っていたのに、リリーナは俺の腕を伝って肩まで駆け上がり、直後に背中にぽすんと軽い衝撃があった。マントのフードの中に収まったリリーナは、そのまま出て来ない。
「わかった。動かないようにな。俺も、出来るだけ潰さないようにするから」
俺が背中に向かって話しかけると、フードの中からジュと怒ったような鳴き声が聞こえた。
+++++
ポテコに連れられて昨日通りかかった食堂に行くと、朝食の時間帯で賑やかに混み合っていた。
モベドスは入学に年齢制限がない。リリーナは4歳で入学したと聞いていたし、生徒の中にはコルダやクラウィスくらいの年齢の幼い子供も混ざっていた。
あんな非道な理事たちが仕切っている学園に子ども1人で大丈夫かと心配になってしまうが、歳の離れた友人と一緒に年相応の笑顔でお喋りをしながら食事をしている。
生徒たちの多くは黒いローブを着ているが、理事のように顔を隠してはいない。物々しいローブも単なる制服のようだ。
中には寝起きでパジャマのような服を着ている人もいるし、リリーナのように若干コスプレに近い個性的な服を着ている人もいる。
そして、勇者のマントを着て剣を下げている俺を全然気にしていない。何人かぎょっとした顔をした生徒がいたけれど、普通に場違いな格好をしている奴に驚いただけだろう。
理事に反抗して勇者だと隠さず堂々としていようと勇者のマントに剣を身に付けていたが、少し恥ずかしくなってきた。ローブが手に入らないか、後でポテコに聞いてみよう。
「案外、普通だな……」
アムジュネマニスの中枢モベドスだ。校舎の見た目の通り殺伐とした雰囲気を想像していた。
しかし、ここは俺が前世で通っていた真面目なF欄大学の食堂の雰囲気と大差ない。むしろ勇者養成校のギスギスした雰囲気よりも仲が良さそうな気がする。
「外の人たちは色々言うけど、この学園が特別優れてるってわけじゃないよ」
俺の正面に腰掛けたポテコは、朝食のパンを小さく千切りながら言った。
ポテコが何か食べるのは久しぶりに見る。故郷に帰って来てモベドスの流儀に合わせているのだろうか。
「充分魔術を学んだ後に更に高めたいっていう、研究熱心な人が集まってるだけ。先輩、あんまり物珍しそうな顔しない」
ポテコに言われて、俺は周囲を見回すのを止めて食事をしているフリをした。
しかし、周囲の話に聞き耳を立ててみると、高度な魔術の話が至る所から聞こえて来る。俺でも何とか理解できるレベルの話だが、5歳くらいの子が古代黒魔術の100ページ以上の術式を暗記していたり、一万年以上前に崩壊した17柱の術式を解読しようとしていたり、高度過ぎる話に俺が如何に場違いなのか思い知らされた。
「だから、この学園には教師とか生徒とかそういう括りはあってないようなものなの。全員が研究者だから」
ポテコがあれだけ俺にモベドスに入学するのは無理だと繰り返していた理由がよくわかる。
モベドスに集まっているのは、魔力が高い人間や魔術が上手な人間ではなくて、地道に研究を続けて魔術の発展に寄与するような人間だ。厳しい入学条件は、研究情報の機密性を維持するためだろう。アムジュネマニスの魔術は、国の軍事力に直結している。
最短コースで勇者の資格だけとって養成校を卒業した俺がいるのは申し訳なくなるような高度な学術機関だ。
「先輩は、魔術師を馬鹿にしてるんだと思ってた」
「まさか。そんな訳ないだろ」
俺はすぐに否定したが、ポテコにそう思われても仕方ないと思う。
金にならない、終わりが見えない研究。携わる人間を軽んじるつもりはないが、俺は絶対にやらないと思う。
「だから、先輩が何か知るために入学したのは、ボクは良い事だと思う」
「そうだ。図書館に行かないと」
何はともあれ、まずは特別閉架書庫とやらの資料を見せてもらわなければ。
急いて椅子から立ち上がったが、ポテコは千切ったパンをちまちまと口に運びながら首を横に振った。
「確認したら、学園長と面接しなきゃダメだって」
「面接?でも、入学は許可するって言われたのに」
「学園長が希望してるらしいよ。さっき図書館に行って先輩の申請しようとしたけど、面接終わってからじゃなきゃダメだって」
モベドスのトップの学園長。和やかな歓談ができるとは思えない。
理事が大集合して拷問してきたのだから、その上に立つ学園長は更に手の込んだやり方で俺を虐めて来るはずだ。
「殺されたり、しないよな?」
そんなに生き急ぐこともないだろうと、俺は椅子に座り直してジャムの瓶を手に取った。
予想通り、ポテコは「さぁ、どうだろ?」とパンを食べる手を止めないまま、真面目な顔で首を傾げた。
学園長との面接ならどこか会議室に行くのかと思ったが、ポテコに案内されたのは国庫資料館、とだけ入口に書かれた建物だった。
学園内にいくつかある図書館の中でも、特に機密資料を保存してある場所らしい。
資料は全て厳重に鍵のかかった書庫の中に保管されているから本が1冊も表に出ておらず、入り口のカウンターに職員が1人だけ座っている。ポテコが名乗ると、視線も合わせずに鍵を放り投げてきた。
しかし、中に入る瞬間に強烈な魔術が発動して、身に着けている物から思考の中身まで、全て読み取られて記録されたのがわかった。この様子だと、国家機密レベルの資料がありそうだ。
館内に入って奥に進むと、狭い廊下の両側にずらりと金属の扉が並んでいた。
ここの資料は外に持ち出せないから、中で読めるように書斎も兼ねている。最長1時間入室出来て、中は時間の流れを歪めているから体感で1週間程度まで延ばすことができる。
資料を汚したり盗もうとしたら職員が飛んで来るし、ここの館は特に厳しく管理されているから怪しい素振りを見せたら問答無用で殺される。
廊下を歩きながら、ポテコがそう教えてくれた。
建物と同じ真っ白で飾り気のない廊下は、ずっと先まで伸びていて終わりが見えない。
「先輩が読みたい資料がある特別閉架書庫は、そこまで厳しくないから安心してね」
「学園長はこんなところにいるのか……理事長と学園長って、どっちが偉いんだ?」
「うーん……学園長っていうのは、あだ名みたいなものかな」
あだ名が付いているなんて、もしかしたら親しみやすい人柄の、長老タイプかもしれない。俺の生存率が少し上がった気がした。
俺が前世で通った高校にも、校長というあだ名の教師がいた。校長と同じタイプのヅラを被っていたからだ。
三條は頑なに教師をあだ名で呼ばなかったが、友達との会話の中ではその呼び名で通じていたから、きっと内心は呼んでいたんだろう。
そんな事をふと思い出したのも、死の危機を前にした走馬灯だろうか。
やっと廊下の突き当たりに到着して、正面にある扉の前でポテコは俺に振り返った。
「会えばわかるよ。理事よりも話は通じる人。殺されたりはしないよ」
「そうだよな」
「うん。多分」
「多分か……」
「先輩、ニーアに何か言っておくことある?」
「……」
俺が黙るとポテコは「嘘だよ」と初めて聞くような明るい声で言った。しかし、ポテコはそんな冗談を言う性格ではないから、少なくとも本心からそう言ったはずだ。
「……事務所の引き出しに遺書が入ってるから読んでくれ」
「わかった。伝えとく」
ポテコに鍵を渡されて、仕方なく扉を開ける。
思っていたよりも安っぽい鍵で、軽い音と共にすぐに開く。鍵に頼らなくてもいいくらい、厳重な魔術が周囲に施されているからだ。
「待って」
覚悟を決めて中に入ろうとした時、後ろからポテコが俺のマントを掴んだ。そのまま引っ張られてマントを脱がされる。
「先輩、相手は一応偉い人だから」
確かに、マントを着て剣を携えているのが勇者の正装だが、丸腰の相手と対峙する時はやや威圧的でもある。
それに、今は研究生の1人として来ているから、勇者の証は不要だ。
他人に預けるのは不安だが、勇者養成校の生徒でもあるポテコなら大丈夫だろうと、マントと一緒に剣を預けた。
「それじゃあ、生きて帰って来てね」
「ああ、努力する……あ」
ポテコが腕に抱えたマントの隙間で、リリーナの赤い目が光ったのが見えた。
ネズミが嫌いなポテコが気付いたら、叩き潰してしまうかもしれない。
「どうしたの?」
「……なんでもない」
ポテコがリリーナを見つけないように祈りつつ、重い扉を開けて中に入った。
既にリリーナは起きていて、赤い砂粒のような瞳で俺を見上げて来る。ちゃんと寝れたか?と尋ねそうになったが、この分身に睡眠は必要なのだろうか。
「俺は出かけるけど、リリーナはここにいるか?」
リリーナは俺を見上げてジュと一度鳴くと、小さな手足をバタつかせてマントの中から抜け出した。俺はリリーナが残したパン屑を払って、マントを広げて身に付ける。
「また夜に戻って来るから……」
ここに隠れていてくれ、と続けようとして、客観的に自分を見て言葉が止まる。
どうして俺は、ネズミに外出許可を取っているのだろう。
しかし、リリーナはあのオーナーの娘で、オーナーと同じく学園を追放されている。
理事たちはオーナーを恨んでいるようだし、その娘が学園に忍び込んでいる事がバレたらきっと無傷では済まない。俺は虫が潰されるように簡単に殺されかけたのだから。
魔術で作った分身一体が殺されても死んだりしないけれど、出来るだけ身を潜めていた方がいい。
そう思っていたのに、リリーナは俺の腕を伝って肩まで駆け上がり、直後に背中にぽすんと軽い衝撃があった。マントのフードの中に収まったリリーナは、そのまま出て来ない。
「わかった。動かないようにな。俺も、出来るだけ潰さないようにするから」
俺が背中に向かって話しかけると、フードの中からジュと怒ったような鳴き声が聞こえた。
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ポテコに連れられて昨日通りかかった食堂に行くと、朝食の時間帯で賑やかに混み合っていた。
モベドスは入学に年齢制限がない。リリーナは4歳で入学したと聞いていたし、生徒の中にはコルダやクラウィスくらいの年齢の幼い子供も混ざっていた。
あんな非道な理事たちが仕切っている学園に子ども1人で大丈夫かと心配になってしまうが、歳の離れた友人と一緒に年相応の笑顔でお喋りをしながら食事をしている。
生徒たちの多くは黒いローブを着ているが、理事のように顔を隠してはいない。物々しいローブも単なる制服のようだ。
中には寝起きでパジャマのような服を着ている人もいるし、リリーナのように若干コスプレに近い個性的な服を着ている人もいる。
そして、勇者のマントを着て剣を下げている俺を全然気にしていない。何人かぎょっとした顔をした生徒がいたけれど、普通に場違いな格好をしている奴に驚いただけだろう。
理事に反抗して勇者だと隠さず堂々としていようと勇者のマントに剣を身に付けていたが、少し恥ずかしくなってきた。ローブが手に入らないか、後でポテコに聞いてみよう。
「案外、普通だな……」
アムジュネマニスの中枢モベドスだ。校舎の見た目の通り殺伐とした雰囲気を想像していた。
しかし、ここは俺が前世で通っていた真面目なF欄大学の食堂の雰囲気と大差ない。むしろ勇者養成校のギスギスした雰囲気よりも仲が良さそうな気がする。
「外の人たちは色々言うけど、この学園が特別優れてるってわけじゃないよ」
俺の正面に腰掛けたポテコは、朝食のパンを小さく千切りながら言った。
ポテコが何か食べるのは久しぶりに見る。故郷に帰って来てモベドスの流儀に合わせているのだろうか。
「充分魔術を学んだ後に更に高めたいっていう、研究熱心な人が集まってるだけ。先輩、あんまり物珍しそうな顔しない」
ポテコに言われて、俺は周囲を見回すのを止めて食事をしているフリをした。
しかし、周囲の話に聞き耳を立ててみると、高度な魔術の話が至る所から聞こえて来る。俺でも何とか理解できるレベルの話だが、5歳くらいの子が古代黒魔術の100ページ以上の術式を暗記していたり、一万年以上前に崩壊した17柱の術式を解読しようとしていたり、高度過ぎる話に俺が如何に場違いなのか思い知らされた。
「だから、この学園には教師とか生徒とかそういう括りはあってないようなものなの。全員が研究者だから」
ポテコがあれだけ俺にモベドスに入学するのは無理だと繰り返していた理由がよくわかる。
モベドスに集まっているのは、魔力が高い人間や魔術が上手な人間ではなくて、地道に研究を続けて魔術の発展に寄与するような人間だ。厳しい入学条件は、研究情報の機密性を維持するためだろう。アムジュネマニスの魔術は、国の軍事力に直結している。
最短コースで勇者の資格だけとって養成校を卒業した俺がいるのは申し訳なくなるような高度な学術機関だ。
「先輩は、魔術師を馬鹿にしてるんだと思ってた」
「まさか。そんな訳ないだろ」
俺はすぐに否定したが、ポテコにそう思われても仕方ないと思う。
金にならない、終わりが見えない研究。携わる人間を軽んじるつもりはないが、俺は絶対にやらないと思う。
「だから、先輩が何か知るために入学したのは、ボクは良い事だと思う」
「そうだ。図書館に行かないと」
何はともあれ、まずは特別閉架書庫とやらの資料を見せてもらわなければ。
急いて椅子から立ち上がったが、ポテコは千切ったパンをちまちまと口に運びながら首を横に振った。
「確認したら、学園長と面接しなきゃダメだって」
「面接?でも、入学は許可するって言われたのに」
「学園長が希望してるらしいよ。さっき図書館に行って先輩の申請しようとしたけど、面接終わってからじゃなきゃダメだって」
モベドスのトップの学園長。和やかな歓談ができるとは思えない。
理事が大集合して拷問してきたのだから、その上に立つ学園長は更に手の込んだやり方で俺を虐めて来るはずだ。
「殺されたり、しないよな?」
そんなに生き急ぐこともないだろうと、俺は椅子に座り直してジャムの瓶を手に取った。
予想通り、ポテコは「さぁ、どうだろ?」とパンを食べる手を止めないまま、真面目な顔で首を傾げた。
学園長との面接ならどこか会議室に行くのかと思ったが、ポテコに案内されたのは国庫資料館、とだけ入口に書かれた建物だった。
学園内にいくつかある図書館の中でも、特に機密資料を保存してある場所らしい。
資料は全て厳重に鍵のかかった書庫の中に保管されているから本が1冊も表に出ておらず、入り口のカウンターに職員が1人だけ座っている。ポテコが名乗ると、視線も合わせずに鍵を放り投げてきた。
しかし、中に入る瞬間に強烈な魔術が発動して、身に着けている物から思考の中身まで、全て読み取られて記録されたのがわかった。この様子だと、国家機密レベルの資料がありそうだ。
館内に入って奥に進むと、狭い廊下の両側にずらりと金属の扉が並んでいた。
ここの資料は外に持ち出せないから、中で読めるように書斎も兼ねている。最長1時間入室出来て、中は時間の流れを歪めているから体感で1週間程度まで延ばすことができる。
資料を汚したり盗もうとしたら職員が飛んで来るし、ここの館は特に厳しく管理されているから怪しい素振りを見せたら問答無用で殺される。
廊下を歩きながら、ポテコがそう教えてくれた。
建物と同じ真っ白で飾り気のない廊下は、ずっと先まで伸びていて終わりが見えない。
「先輩が読みたい資料がある特別閉架書庫は、そこまで厳しくないから安心してね」
「学園長はこんなところにいるのか……理事長と学園長って、どっちが偉いんだ?」
「うーん……学園長っていうのは、あだ名みたいなものかな」
あだ名が付いているなんて、もしかしたら親しみやすい人柄の、長老タイプかもしれない。俺の生存率が少し上がった気がした。
俺が前世で通った高校にも、校長というあだ名の教師がいた。校長と同じタイプのヅラを被っていたからだ。
三條は頑なに教師をあだ名で呼ばなかったが、友達との会話の中ではその呼び名で通じていたから、きっと内心は呼んでいたんだろう。
そんな事をふと思い出したのも、死の危機を前にした走馬灯だろうか。
やっと廊下の突き当たりに到着して、正面にある扉の前でポテコは俺に振り返った。
「会えばわかるよ。理事よりも話は通じる人。殺されたりはしないよ」
「そうだよな」
「うん。多分」
「多分か……」
「先輩、ニーアに何か言っておくことある?」
「……」
俺が黙るとポテコは「嘘だよ」と初めて聞くような明るい声で言った。しかし、ポテコはそんな冗談を言う性格ではないから、少なくとも本心からそう言ったはずだ。
「……事務所の引き出しに遺書が入ってるから読んでくれ」
「わかった。伝えとく」
ポテコに鍵を渡されて、仕方なく扉を開ける。
思っていたよりも安っぽい鍵で、軽い音と共にすぐに開く。鍵に頼らなくてもいいくらい、厳重な魔術が周囲に施されているからだ。
「待って」
覚悟を決めて中に入ろうとした時、後ろからポテコが俺のマントを掴んだ。そのまま引っ張られてマントを脱がされる。
「先輩、相手は一応偉い人だから」
確かに、マントを着て剣を携えているのが勇者の正装だが、丸腰の相手と対峙する時はやや威圧的でもある。
それに、今は研究生の1人として来ているから、勇者の証は不要だ。
他人に預けるのは不安だが、勇者養成校の生徒でもあるポテコなら大丈夫だろうと、マントと一緒に剣を預けた。
「それじゃあ、生きて帰って来てね」
「ああ、努力する……あ」
ポテコが腕に抱えたマントの隙間で、リリーナの赤い目が光ったのが見えた。
ネズミが嫌いなポテコが気付いたら、叩き潰してしまうかもしれない。
「どうしたの?」
「……なんでもない」
ポテコがリリーナを見つけないように祈りつつ、重い扉を開けて中に入った。
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