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幕間 伯爵家の客

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 リディアール伯爵邸。

「久しぶりだね、と言ってもまだ数ヶ月も経ってないか」

「そうだな、リコットはすっかり領主が板についてきたんじゃないか」

「仕方ないよ、僕しかやる人がいないんだから」

 僕リコット・リディアールは学生時代の友人の訪問を受けていた。

 彼の名はハイル・アスオート、王国騎士団に所属している。

 因みに彼の父親は現騎士団長、将来は彼が後を引き継ぐ、予定だ。

「で、騎士団の方はどう? 結構こきつかわれてるんじゃないの?」

「あぁ~……、実は騎士団は辞めた」

 ブーーーッ!?!?

 思わず飲んでいた紅茶を吹き出してしまった。

「ケホッケホッ、や、辞めた、ってどういう事!? お父さんの後を引き継いで立派な騎士が夢、ってずっと言っていたじゃないかっ!?」

「そのつもりだったんだ……、でも思う所があって辞めたんだ、おかげで親父からは勘当された」

 あまりにも急展開で僕は混乱していた。

「だから、今はただの平民だし無職なんだよ。今は各地を転々と旅をしている」

「そうなんだ……、あ、王太子様は? 君は側近の一人だったじゃないか? 引き止められたんじゃないか?」

「……その王太子が辞めるきっかけなんだよ」

「え?」

 もしかして地雷を踏んだ?

「……信頼ってさ結ぶまでには時間がかかるけど壊れる時は一瞬なんだよな」

「まぁ……、うん、壊れる時は一瞬だよね」

 なんとか話を合わせようとする、でも彼と王太子の間に何かあったのはわかる。

 そういえばあの王太子はあまり良い評判を聞かない、主に女性関係について。

 特に人の婚約者に手を出す、とかで貴族間では有名だ。

 でも、ハイルには確か婚約者はいなかった筈だけど……。

「……姉さんが王太子に遊ばれていたんだ」

「え……」

「姉さんは王太子の子を妊娠していたんだ。でも、王太子は認知しようとしなかった。 それだけじゃなく金でもみ消そうとしたんだ」

 クズだ、めちゃくちゃクズだった。

「親父は耐えろと言っていたが我慢できなかった。アイツ、『お前の姉ちゃん、いい体していたぞ』とかニヤニヤして言ってきて……、気がついたらぶん殴ってた」

 いや、それは殴って良い、と思う。

「うん、大体事情はわかった。ハイルは悪くないよ」

「ありがとな……」
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