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夜のお城はドッキドキ
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薄暗く、シンと静まり返った広い廊下を、サイラスと手を繋いでソロソロと歩く。
夜のお城探索は想像以上にスリリングで、ドキドキ、ワクワクする。
途中で巡回中の警備隊の人に見つかっても、サイラスが一緒だから夜中に6歳児が城内をウロチョロしていても大丈夫なのだ。
「ちょっと眠れなくて……気分転換でサイラスにお散歩へついて来てもらったの。」
潤んだ瞳で警備隊の人を見上げそう言えば、
「暗いのでお気をつけて。」
と、すんなり通してくれる。
「なんか楽しいね!」
「そうだね。」
妙にテンションが上がっちゃってムフフと変な笑い声を出す私を見て、サイラスがクスクスと可笑しそうに笑っている。
暫くサイラスと手を繋いで歩いていたら、窓の外が青白く光っている場所にやって来た。
「たぶん、あそこが裏庭だよ。」
サイラスが窓の外を指差した先には、大きくて立派な木が、青白くキラキラと光を放って生えている。
その大きな木だけが生えている裏庭は、全体が淡く青白い光に包まれていて、怖い……というよりは神秘的なモノを感じてゾクゾクする。
夜に真っ暗な中で見ているから余計にそう思えるのかもしれないけど。
サイラスが裏庭に通じる扉を開ける。
ギギギィ
と、古びた扉を開ける音が、シンと静まり返っている廊下に響いた。
直に浴びる青白い光は、嫌な感じは全くしなくて、逆にとても心地良く感じられる。
「なんか……綺麗だね。」
「……ああ、そうだね。」
開けた扉の前で、暫くサイラスと"宿り木"を眺めたまま立ち尽くしていると、
何かの鳴き声らしきものが微かに聞こえた気がした。
「どうかした?」
「ん~……今なんか聞こえたような……あ、ほらまた。」
やっぱり微かに、ピィピィと鳥?のような鳴き声がするんだよね。
静かに見て耳を澄ましていたら、今度はサイラスにも聞こえたみたいで。
「宿り木の方から聞こえてくるな。」
「だよね。」
裏庭は中庭よりもかなり狭いけど、それでも、私達が立っている入口から宿り木まではかなり距離がある。
「行ってみよう。」
サイラスと手を繋ぎ直して裏庭へ足を踏み入れた。
……けど、繋いでいた手がグンッと引っ張られ、体が後ろにのけ反る。
ビックリして後ろを振り返ると、サイラスが入口に立ち止まったまま動いていない。
「どうしたの?早く行こうよ。」
「…………裏庭へ、入れないんだ。」
「へ?」
入れない?なんで?……私、普通に入れたけど…………。
「あっ!もしかして……国王様が言ってた宿り木に近寄れないって、こういう事?」
「うん……本当だったみたいだね。まさか、一歩も入れないとは思わなかったけど。」
サイラスがそう言いながら何とか足を動かそうとしているけど、裏庭へはどうしても入れないみたいだ。
「私は何も違和感を感じなかったよ。」
「そうだね…………。」
なんでか分からず首を傾げつつも、さっきから聞こえる鳴き声が気になってしょうがない。
宿り木に近付きたくても、手を繋いでいるサイラスは裏庭に入れないし……どうしようかな。
サイラスの様子を伺うと、サイラスは目を伏せて考え込んじゃってるけど、手を離してくれる気配は無い。
「…………ユーカの話しを聞く限りでは、この城の……いや、恐らくこの世界の人間は誰も入れないんじゃないかな。」
「誰も?」
「うん。この裏庭を覆う不思議な力が、裏庭へ入ろうとするのを妨害してるんだ。俺の意思とは関係無く、体もその力に抗うことが出来なくなっているみたいだ。」
「私は全然平気だけど?」
訳が分からず首を傾げっぱなしの私を見て、サイラスが苦笑する。
「俺が予想するに…………ユーカはきっと、この世界の人間じゃないから……この世界で言うところの"神"的な存在の力が効かないんじゃないかな。」
…………あ~、なるほど。
私だけ力が効かないって、何か特別な感じがするけど…………実際には、私が異質な存在だって認めているようなものだよね。
"お前は、この世界の人間じゃないんだよ"
そう、神様にも言われているような気がして、それはそれでショックかも。
複雑そうな顔をしている私の手を、サイラスが引っ張って私の体を入口へと引き戻した。
「もう、いいよ。宿り木は見れたし、部屋へ戻ろう?」
「うん、でも……」
眉尻を下げて私の頭を撫でるサイラスから、チラッと宿り木の方へ目を向けた。
宿り木からは、やっぱり鳴き声が聞こえていて、その声も心なしか小さくなった気がする。
「ねえサイラス、あの鳴き声が気になるから、ちょっとだけ行ってみてもいい?」
「駄目」
「でも、私だけしか行けないみたいだし?不死鳥に何かあったのなら大変じゃない?」
「駄目。俺は不死鳥なんかよりユーカの方が大事。」
…………ああ、うん、そっか。そうだったよね。
サイラスは"超"がつくほど私に過保護だもんね。
最近、寝る時以外、あまり一緒に居れてないから、うっかり忘れてたよ。
でも、こうしている間にも鳥の鳴き声が段々小さくなって、今はもう聞こえなくなってしまった。
「さあ、戻るよ。」
そう言って、サイラスがクルッと踵を返した、その瞬間。
私は繋いでいた手をバッと振り払って宿り木へと走り出した。
「ごめん、サイラス!ちょっと様子を見てくるだけだから!」
「ユーカ!!」
夜のお城探索は想像以上にスリリングで、ドキドキ、ワクワクする。
途中で巡回中の警備隊の人に見つかっても、サイラスが一緒だから夜中に6歳児が城内をウロチョロしていても大丈夫なのだ。
「ちょっと眠れなくて……気分転換でサイラスにお散歩へついて来てもらったの。」
潤んだ瞳で警備隊の人を見上げそう言えば、
「暗いのでお気をつけて。」
と、すんなり通してくれる。
「なんか楽しいね!」
「そうだね。」
妙にテンションが上がっちゃってムフフと変な笑い声を出す私を見て、サイラスがクスクスと可笑しそうに笑っている。
暫くサイラスと手を繋いで歩いていたら、窓の外が青白く光っている場所にやって来た。
「たぶん、あそこが裏庭だよ。」
サイラスが窓の外を指差した先には、大きくて立派な木が、青白くキラキラと光を放って生えている。
その大きな木だけが生えている裏庭は、全体が淡く青白い光に包まれていて、怖い……というよりは神秘的なモノを感じてゾクゾクする。
夜に真っ暗な中で見ているから余計にそう思えるのかもしれないけど。
サイラスが裏庭に通じる扉を開ける。
ギギギィ
と、古びた扉を開ける音が、シンと静まり返っている廊下に響いた。
直に浴びる青白い光は、嫌な感じは全くしなくて、逆にとても心地良く感じられる。
「なんか……綺麗だね。」
「……ああ、そうだね。」
開けた扉の前で、暫くサイラスと"宿り木"を眺めたまま立ち尽くしていると、
何かの鳴き声らしきものが微かに聞こえた気がした。
「どうかした?」
「ん~……今なんか聞こえたような……あ、ほらまた。」
やっぱり微かに、ピィピィと鳥?のような鳴き声がするんだよね。
静かに見て耳を澄ましていたら、今度はサイラスにも聞こえたみたいで。
「宿り木の方から聞こえてくるな。」
「だよね。」
裏庭は中庭よりもかなり狭いけど、それでも、私達が立っている入口から宿り木まではかなり距離がある。
「行ってみよう。」
サイラスと手を繋ぎ直して裏庭へ足を踏み入れた。
……けど、繋いでいた手がグンッと引っ張られ、体が後ろにのけ反る。
ビックリして後ろを振り返ると、サイラスが入口に立ち止まったまま動いていない。
「どうしたの?早く行こうよ。」
「…………裏庭へ、入れないんだ。」
「へ?」
入れない?なんで?……私、普通に入れたけど…………。
「あっ!もしかして……国王様が言ってた宿り木に近寄れないって、こういう事?」
「うん……本当だったみたいだね。まさか、一歩も入れないとは思わなかったけど。」
サイラスがそう言いながら何とか足を動かそうとしているけど、裏庭へはどうしても入れないみたいだ。
「私は何も違和感を感じなかったよ。」
「そうだね…………。」
なんでか分からず首を傾げつつも、さっきから聞こえる鳴き声が気になってしょうがない。
宿り木に近付きたくても、手を繋いでいるサイラスは裏庭に入れないし……どうしようかな。
サイラスの様子を伺うと、サイラスは目を伏せて考え込んじゃってるけど、手を離してくれる気配は無い。
「…………ユーカの話しを聞く限りでは、この城の……いや、恐らくこの世界の人間は誰も入れないんじゃないかな。」
「誰も?」
「うん。この裏庭を覆う不思議な力が、裏庭へ入ろうとするのを妨害してるんだ。俺の意思とは関係無く、体もその力に抗うことが出来なくなっているみたいだ。」
「私は全然平気だけど?」
訳が分からず首を傾げっぱなしの私を見て、サイラスが苦笑する。
「俺が予想するに…………ユーカはきっと、この世界の人間じゃないから……この世界で言うところの"神"的な存在の力が効かないんじゃないかな。」
…………あ~、なるほど。
私だけ力が効かないって、何か特別な感じがするけど…………実際には、私が異質な存在だって認めているようなものだよね。
"お前は、この世界の人間じゃないんだよ"
そう、神様にも言われているような気がして、それはそれでショックかも。
複雑そうな顔をしている私の手を、サイラスが引っ張って私の体を入口へと引き戻した。
「もう、いいよ。宿り木は見れたし、部屋へ戻ろう?」
「うん、でも……」
眉尻を下げて私の頭を撫でるサイラスから、チラッと宿り木の方へ目を向けた。
宿り木からは、やっぱり鳴き声が聞こえていて、その声も心なしか小さくなった気がする。
「ねえサイラス、あの鳴き声が気になるから、ちょっとだけ行ってみてもいい?」
「駄目」
「でも、私だけしか行けないみたいだし?不死鳥に何かあったのなら大変じゃない?」
「駄目。俺は不死鳥なんかよりユーカの方が大事。」
…………ああ、うん、そっか。そうだったよね。
サイラスは"超"がつくほど私に過保護だもんね。
最近、寝る時以外、あまり一緒に居れてないから、うっかり忘れてたよ。
でも、こうしている間にも鳥の鳴き声が段々小さくなって、今はもう聞こえなくなってしまった。
「さあ、戻るよ。」
そう言って、サイラスがクルッと踵を返した、その瞬間。
私は繋いでいた手をバッと振り払って宿り木へと走り出した。
「ごめん、サイラス!ちょっと様子を見てくるだけだから!」
「ユーカ!!」
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