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第3話
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父としては、私が王妃でなくなったから屋敷に戻って来たと考えていたようだ。
実際は家族の縁を切る手続きをするためで、父は、いいえシーフェス領主は唖然としながら私に尋ねる。
「エルノアは正気か? 私がその誓約書に署名すれば、数時間前まで王妃だったお前は平民に成り下がるぞ?」
「構いません。王妃から平民と言いましたけど……私の扱いを聞いていたのに、平民よりいい暮らしをしていると思っていたのですか?」
「ぐっ……」
シーフェス領主は、私の発言に何も言い返すことができない。
娘が王妃という立場はよかったのかもしれないけど、私が城の人達から蔑まれていると話しても家族は何もすることはなかった。
そんな家族の元に戻りたくないから、平民でも問題ない。
今までの生活より苦しくなるとは思えず、ランアス国から出て行きたかった。
「私は絶対にドスラの元には戻りません。早く署名してください」
「いいだろう! これでお前はただの平民だ!!」
私が用意していた誓約書の魔法道具に、元父シーフェスが署名する。
2枚の誓約書の1枚はシーフェス領主、もう1枚は私が持つことができて……これでもう、ランアス国にいる理由はない。
私が屋敷の外まで出ると、元父はついてくる。
王妃の親という立場でなくなるこるのが嫌なのか、まだ私を説得しようとしてきた。
「……今ならまだ間に合う。エルノアはドスラ陛下に謝罪しろ!」
「さようなら。もう二度と会うこともないでしょう」
「クソッ! 早くここから消えろ! 平民となり後悔の日々を送ればよい!」
後悔の日々を送るのは、私よりもドスラや目の前にいる元父だ。
兵士長の報告を聞いた場合、ドスラが私を連れ戻そうと行動するかもしれない。
国を出る準備はずっとしていたから……待たせていた馬に乗り、私は屋敷から出て行こうとする。
その時――屋敷に、元兄のフリードがやって来た。
私がいることに気付いていないのか、焦った様子のフリードを見て元父が尋ねる。
「フリードよ。エルノアが馬鹿なことをしたが……何かあったのか?」
「急に働いていた領民達が倒れだした! 理由がまったくわからない!」
「なんだと!?」
元兄フリードは私がいることより、領民達に起きた異変のことが気になっているようだ。
私を心配してくれたこともなくて、元父と同じようにドスラ王に従っておけと命令していた人でもある。
もう会うことはないだろうから、最後に私は領民達が倒れた理由を教えることにした。
「それは私が、全ての結界を解除したからですね」
「はぁっ? エルノアは何を言っている? どうしてここにいるんだ?」
「働いている人達は私が張った結界の恩恵を受けていましたが、それを失い反動が来たのでしょう。数時間もすれば動けるようになりますけど、今までと同じ力は二度と発揮できません」
城の兵士達と同じことが、シーフェス家の領民達にも起きたようだ。
私は城とシーフェス領は特に結界魔法で結界を強化していたから、強い反動がきてもおかしくはない。
結界魔法については家に代々伝えられてきたことだから、元父と元兄はすぐ納得したようだ。
「エルノアは、本当に結界魔法が使えたのか……今からどこに行くつもりだ!?」
「ランアス国から出て行きます」
「まっ、待て! 今までのことは全て謝る! ドスラ陛下に従わなくていいから、せめてここにいてくれぇぇっ!!」
フリードの焦り方から、元父は私が消えればどうなるかを想像したようだ。
もうここにいる必要がないから、私は無視して馬を走らせる。
後ろで私を引き留める声が聞こえたけど、その声は距離が離れると聞こえなくなっていた。
シーフェス公爵家の屋敷にドスラ達がやって来たのは、その数日後になる。
そこで私が平民になり出て行ったと知って――ドスラは、更に後悔するようになっていた。
実際は家族の縁を切る手続きをするためで、父は、いいえシーフェス領主は唖然としながら私に尋ねる。
「エルノアは正気か? 私がその誓約書に署名すれば、数時間前まで王妃だったお前は平民に成り下がるぞ?」
「構いません。王妃から平民と言いましたけど……私の扱いを聞いていたのに、平民よりいい暮らしをしていると思っていたのですか?」
「ぐっ……」
シーフェス領主は、私の発言に何も言い返すことができない。
娘が王妃という立場はよかったのかもしれないけど、私が城の人達から蔑まれていると話しても家族は何もすることはなかった。
そんな家族の元に戻りたくないから、平民でも問題ない。
今までの生活より苦しくなるとは思えず、ランアス国から出て行きたかった。
「私は絶対にドスラの元には戻りません。早く署名してください」
「いいだろう! これでお前はただの平民だ!!」
私が用意していた誓約書の魔法道具に、元父シーフェスが署名する。
2枚の誓約書の1枚はシーフェス領主、もう1枚は私が持つことができて……これでもう、ランアス国にいる理由はない。
私が屋敷の外まで出ると、元父はついてくる。
王妃の親という立場でなくなるこるのが嫌なのか、まだ私を説得しようとしてきた。
「……今ならまだ間に合う。エルノアはドスラ陛下に謝罪しろ!」
「さようなら。もう二度と会うこともないでしょう」
「クソッ! 早くここから消えろ! 平民となり後悔の日々を送ればよい!」
後悔の日々を送るのは、私よりもドスラや目の前にいる元父だ。
兵士長の報告を聞いた場合、ドスラが私を連れ戻そうと行動するかもしれない。
国を出る準備はずっとしていたから……待たせていた馬に乗り、私は屋敷から出て行こうとする。
その時――屋敷に、元兄のフリードがやって来た。
私がいることに気付いていないのか、焦った様子のフリードを見て元父が尋ねる。
「フリードよ。エルノアが馬鹿なことをしたが……何かあったのか?」
「急に働いていた領民達が倒れだした! 理由がまったくわからない!」
「なんだと!?」
元兄フリードは私がいることより、領民達に起きた異変のことが気になっているようだ。
私を心配してくれたこともなくて、元父と同じようにドスラ王に従っておけと命令していた人でもある。
もう会うことはないだろうから、最後に私は領民達が倒れた理由を教えることにした。
「それは私が、全ての結界を解除したからですね」
「はぁっ? エルノアは何を言っている? どうしてここにいるんだ?」
「働いている人達は私が張った結界の恩恵を受けていましたが、それを失い反動が来たのでしょう。数時間もすれば動けるようになりますけど、今までと同じ力は二度と発揮できません」
城の兵士達と同じことが、シーフェス家の領民達にも起きたようだ。
私は城とシーフェス領は特に結界魔法で結界を強化していたから、強い反動がきてもおかしくはない。
結界魔法については家に代々伝えられてきたことだから、元父と元兄はすぐ納得したようだ。
「エルノアは、本当に結界魔法が使えたのか……今からどこに行くつもりだ!?」
「ランアス国から出て行きます」
「まっ、待て! 今までのことは全て謝る! ドスラ陛下に従わなくていいから、せめてここにいてくれぇぇっ!!」
フリードの焦り方から、元父は私が消えればどうなるかを想像したようだ。
もうここにいる必要がないから、私は無視して馬を走らせる。
後ろで私を引き留める声が聞こえたけど、その声は距離が離れると聞こえなくなっていた。
シーフェス公爵家の屋敷にドスラ達がやって来たのは、その数日後になる。
そこで私が平民になり出て行ったと知って――ドスラは、更に後悔するようになっていた。
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