【完結(続編)ほかに相手がいるのに】

もえこ

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~彼氏~

罪悪

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「は~ …しっかし、結構待たされたな~~マジで、ショックだったわ。おまえがこっちに居ないって知らされた時…荷物もあるし…」

空港を離れ、街に向かうバスに乗った瞬間、拓海が横に座る私にぼそりと囁く。

「… ん …ごめん、ね… 」小さな声で、謝る。

拓海の態度から、
やはり不満はあったのだろうとわかる…。

逆の立場なら、確かにそうだろう…

サプライズで遠距離恋愛中の恋人の家のドアの前まで行き、はやる気持ちを抑えて、インターフォンを鳴らす。
中から出てきて驚く恋人の反応を楽しみに待っていれば、反応はなく、結果、中はもぬけの殻…
しかも、当の相手の帰宅は数時間も後…。

そんなことを知らされれば、誰でも、きっと落胆するに違いない。
拓海を苛つかせてしまったのは、もちろんわかる…

だけど…  

なんで、いきなり… ?

拓海がなんでこんな風に、私のマンションを突撃訪問することを思い立ったのか、どうしても不思議に思ってしまう…。
少なくとも、私は…そんなことをされるのがあまり好きではない。

合鍵さえ拓海に渡すのを躊躇している。

それは、自分が知らぬ間に、他人に部屋に入られるのが嫌だからだ…。
たとえ、長年付き合っている彼氏の、拓海であっても… 家族であっても…
嫌なのは、嫌で…

部屋の状態だって、どういう状態かわからない…
特に、毎日の仕事で疲れている平日は、多少乱れていることだってある…。
でもその状態を、人には見せたくない…。

だからこそ、来るときは少し早めに…事前に、言って欲しい…
私はそう、拓海にはいつも言ってあるのだ…。

合鍵を渡して欲しいと言われた時には、そんな説明も何度かしていて、
私のその性分…その部分を譲ることが出来ないことは…もちろん、拓海もわかっているはずだ。

なのに、なんで…

今回、いきなり…?

無断で入ることはできなくても、私が突然そういうことをすると嫌がると、わかっているはずなのに…
なんでいきなり、拓海がマンションを訪ねて来たのか、不可解で仕方ない…。

やはり、何か疑われている…?

たとえば…だけど…
私が誰か…誰かと部屋で一緒にいるのかもしれない、などと…拓海は想像したのだろうか…

「いや、俺もなんも確認せずにいきなり来たから、仕方ねえんだけど、よ…まあ、とりあえず会えたからいいや…」

頭の中だけで色々なことを想像している最中、拓海が私を見て、小さく笑った。
その眼が…拓海の視線が、思いのほか優しくて…私の胸の奥が、ズキンと音を立てた。

「… ん …なんか、ごめんね、タイミング、悪くて…」

言いながら、拓海から、思わず視線を逸らす…。

ズキズキズキ…
この痛みは、わかる…

もう…完全に、罪悪感の痛みだ…




















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