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~就寝~
駄目な女
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「葉月……」
拓海の低い声が、頭上から聞こえてくる…。
「… … …」
私の思考は一旦、停止する…。
この状況で、本当は停止なんてさせている場合ではないにも関わらずだ…。
拓海に何も言わず…
別れの理由の詳細を語らず…ただ、私の気持ちの問題だと…ただそれだけを伝えて、拓海と別れようと思っていた…。
だからこそ私はこれまで、必死に…
でもきっと、無意識に…
私の杉崎さんへの気持ちを拓海に読まれないように…悟られないように、
彼の話をするときは出来るだけ自然に、してきたつもりだ…
当然、拓海と電話で雑談や…仕事内容の話をする際にも、杉崎さんの名前を敢えて出すことはしなかった…。
それだけ、拓海に杉崎さんを…杉崎さんという存在を、印象付けたくなかった…。
でも…今思えば、それは無意味なことだったのかもしれない…。
家が近所のせいもあって、何度かお互いにペアで遭遇したし…
旅行の下見の時も、拓海に正面から誰と行ったのかを聞かれて…杉崎さんと私、二人で行ったと正直に話してしまった…。
確かあの時…拓海は…男女の社員二人だけで、車で下見に行かせるなんてセクハラじゃないのか…とかなんとか、
不満げに漏らしていたっけ…。
もちろん、拓海は私に対して直接、怒るなんてことはしなかったけど…
思えばあの頃から、拓海は…少しずつ…感じ始めたのかもしれない…。
私自身、はっきり自覚していなかった杉崎さんに対する淡い気持ちに…拓海は気付き始めていたのかもしれない…
しかも、今回の二人きりの出張…
日帰りではなく、一泊二日の出張…。
その場所が拓海の住んでいる地域とさほど離れていないにも関わらず、私がそのことを言わなかったこと…。
そして、一緒に行った相手が、よりにもよって異性である杉崎さんであったこと…。
きっと、これらのすべての要素が…拓海を苛つかせていたのかもしれない…。
そして、今のこの状況で…寝言で…
寝ぼけていたとはいえ、杉崎さんの名前を呼んでしまった…なんて…
しかも、拓海が話していることをそのまま信じれば…
拓海が私にキスをしている最中に…私が何度も、杉崎さんの名前を…呼んだと…。
本当に、最低… 私は、馬鹿だ…
逆の立場になればわかる…。
自分の恋人が、キスの最中…そういう行為の最中に…別の人の名前を、呼ぶなんて…
拓海がこんな風に怒っていても、無理はない…。
「…おい… 何、黙ってる… ?答えろよ… おまえ、あいつと…そう…なのか… ?」
「… … … 」
私は横を向いたまま、無言になる…。
認めたく、ない…。
認めるわけにはいかない…
もしも今、すんなり認めれば…拓海はきっと…烈火のごとく、怒り出すだろう…。
私自身、拓海とのこんな状況はもちろん初めてのことで、怖い…。
そしてきっと、杉崎さんにも迷惑がかかる…。
ないと願いたいが、拓海が杉崎さんの所に…怒りの感情に任せて押しかけるようなことも、あるかもしれない…
自宅は知らないが、会社の場所は知っているのだ…
ああ… やっぱり、そうだと、認めるわけにはいかない…。
なんとか、取り繕わねば…
もう…真面目で、正直な私は、どこにもいない…
駄目な女に、なり下がった…
でも… もういい…
私は、心を決める…。
「葉月…横向いてねえでいい加減こっち見ろよ…おまえとアイツ…デキてるのかって、聞いてんだよっ…!無視すんな!」
「あっ… …」
しびれを切らした拓海に顎をつかまれ、無理矢理に上を向かされる…。
「… … …」
拓海に…こんな強引なことをされたのは初めてで、言葉を失う…。
薄暗闇の中…拓海の双眸がギラリと光った気がして…怖くなる…
でも…
「言えよ…怒らねえから… 正直に、話せ… …」
嘘だ… もうすでに… ものすごく怒ってる…
「…できてなんて、ない… でも… 」
私は覚悟を決めて、拓海を見上げ…口を開いた。
拓海の低い声が、頭上から聞こえてくる…。
「… … …」
私の思考は一旦、停止する…。
この状況で、本当は停止なんてさせている場合ではないにも関わらずだ…。
拓海に何も言わず…
別れの理由の詳細を語らず…ただ、私の気持ちの問題だと…ただそれだけを伝えて、拓海と別れようと思っていた…。
だからこそ私はこれまで、必死に…
でもきっと、無意識に…
私の杉崎さんへの気持ちを拓海に読まれないように…悟られないように、
彼の話をするときは出来るだけ自然に、してきたつもりだ…
当然、拓海と電話で雑談や…仕事内容の話をする際にも、杉崎さんの名前を敢えて出すことはしなかった…。
それだけ、拓海に杉崎さんを…杉崎さんという存在を、印象付けたくなかった…。
でも…今思えば、それは無意味なことだったのかもしれない…。
家が近所のせいもあって、何度かお互いにペアで遭遇したし…
旅行の下見の時も、拓海に正面から誰と行ったのかを聞かれて…杉崎さんと私、二人で行ったと正直に話してしまった…。
確かあの時…拓海は…男女の社員二人だけで、車で下見に行かせるなんてセクハラじゃないのか…とかなんとか、
不満げに漏らしていたっけ…。
もちろん、拓海は私に対して直接、怒るなんてことはしなかったけど…
思えばあの頃から、拓海は…少しずつ…感じ始めたのかもしれない…。
私自身、はっきり自覚していなかった杉崎さんに対する淡い気持ちに…拓海は気付き始めていたのかもしれない…
しかも、今回の二人きりの出張…
日帰りではなく、一泊二日の出張…。
その場所が拓海の住んでいる地域とさほど離れていないにも関わらず、私がそのことを言わなかったこと…。
そして、一緒に行った相手が、よりにもよって異性である杉崎さんであったこと…。
きっと、これらのすべての要素が…拓海を苛つかせていたのかもしれない…。
そして、今のこの状況で…寝言で…
寝ぼけていたとはいえ、杉崎さんの名前を呼んでしまった…なんて…
しかも、拓海が話していることをそのまま信じれば…
拓海が私にキスをしている最中に…私が何度も、杉崎さんの名前を…呼んだと…。
本当に、最低… 私は、馬鹿だ…
逆の立場になればわかる…。
自分の恋人が、キスの最中…そういう行為の最中に…別の人の名前を、呼ぶなんて…
拓海がこんな風に怒っていても、無理はない…。
「…おい… 何、黙ってる… ?答えろよ… おまえ、あいつと…そう…なのか… ?」
「… … … 」
私は横を向いたまま、無言になる…。
認めたく、ない…。
認めるわけにはいかない…
もしも今、すんなり認めれば…拓海はきっと…烈火のごとく、怒り出すだろう…。
私自身、拓海とのこんな状況はもちろん初めてのことで、怖い…。
そしてきっと、杉崎さんにも迷惑がかかる…。
ないと願いたいが、拓海が杉崎さんの所に…怒りの感情に任せて押しかけるようなことも、あるかもしれない…
自宅は知らないが、会社の場所は知っているのだ…
ああ… やっぱり、そうだと、認めるわけにはいかない…。
なんとか、取り繕わねば…
もう…真面目で、正直な私は、どこにもいない…
駄目な女に、なり下がった…
でも… もういい…
私は、心を決める…。
「葉月…横向いてねえでいい加減こっち見ろよ…おまえとアイツ…デキてるのかって、聞いてんだよっ…!無視すんな!」
「あっ… …」
しびれを切らした拓海に顎をつかまれ、無理矢理に上を向かされる…。
「… … …」
拓海に…こんな強引なことをされたのは初めてで、言葉を失う…。
薄暗闇の中…拓海の双眸がギラリと光った気がして…怖くなる…
でも…
「言えよ…怒らねえから… 正直に、話せ… …」
嘘だ… もうすでに… ものすごく怒ってる…
「…できてなんて、ない… でも… 」
私は覚悟を決めて、拓海を見上げ…口を開いた。
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