【完結(続編)ほかに相手がいるのに】

もえこ

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~就寝~

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「… 拓海… 話すから… …手、離して… 」

少しだけ…私の顎にかかった拓海の手の力が緩んで、ほっとする…。

「… 言えよ… 葉月… 」

私は真っすぐに、拓海を見上げる…。

「… できて、なんて… ない …  」

拓海に、こんな風に嘘をつくこと…

嘘をつくことになるなんて、想像もしていなかった…。

自分の発言に罪悪感を覚え、ズキリと胸に痛みが走るが、ここで、うろたえるわけにはいかない…。
疑われないように、堂々と言わなきゃ… 
私は自分を必死に奮い立たせる…。

「… 本当か…?葉月… 」

「… うん…だって、杉崎さんには彼女…林さんも、いるんだよ…」

こんな時に…そんな言い訳をした自分が心底嫌になる…。
どの口が…そんなことを言っているんだろう…。
彼女がいる杉崎さんに…駄目だと思いながらも…必要以上に近付いてしまったのは、この私、なのに…

最低だ… 

理性がないに、等しい…
とてもではないが、綺麗な恋愛とはいえない…。

泥棒猫…   略奪…
とにかく…物語の主人公には到底、なれない…狡い、恋愛だ…  

人を好きになるということが… 
好きな人と、身も心も結ばれるということは…本当はとても、幸せなことであるはずなのに…

私は、間違った… 

色々、抑えが効かずに、順番を間違った…。
いや…我慢が…欲望を抑えることができなかったという方が、正解か…。

お互いがお互いに…それぞれの別れを…綺麗に待つことができなかった…

早く、杉崎さんに触れたい…キスをしたい…
女として、抱かれたいという…そんないやらしい女の欲望に、抗うことができなかった…。

私は拓海を裏切り、優しい先輩でもある林さんをも、裏切ったのだ…。

「葉月… おまえ…じゃあ、なんで…さっき…」

降りてきた声に、ハッとする…。
拓海が何か言いかけたところに、思わず、言葉を重ねてしまう…

「…ごめん…とにかくもう、拓海とは付き合えない…」

「…じゃあ… なんで…?なんでおまえは…あの男の名前を呼んだ…」

「え… … 」

「寝ている時に…俺が、眠ってるお前にキスをしている時にさ…なんで、あいつの名前を口にした…?」

「… … …」

「普通に考えて、おかしいじゃん…普段意識してない奴が…おまえの夢に出てくること自体…変だろ… 」

「…それ、は… 」

「ああ…なん、だよ… 」

「それは、私が… 杉崎さんに…憧れてて… 」

拓海の疑っているそういう行為…男女の行為を…否定したとしても…
気持ちの部分は杉崎さんに向いていると真実を伝えた方がいい…なぜかその時、そんな風に思った…

「… 憧れ… 」

「うん…憧れみたいな…そんな気持ち…」

「 憧れ… ふーん… そっか…  へー…」
ぼそりと…拓海が感情の見えない声で、呟く…。

「… 拓海…? 」

「… も… なんか、いいや…もう、どうでも… おまえの気持ち…なんか… 知るか…」

「え… … …」
 
「もう… いい … 俺は… 」

ギシリと、ベッドが軋む音を立てる…。

「あっ… 」

いきなり…拓海の逞しい腕が伸びてきて…
服の上から…両手で胸を揉むようにつかまれ、息を飲む…。

「拓海… や、だ… 痛、い…  」

「やだじゃ、ねえ… 俺は、認めない…まだ、…別れるとか…承諾、してない… 」

「んっ…いやっ… あっ…  やっ…  」
両方の胸を…激しく揉みしだかれ、息が上がる…

「…おまえのその…煮え切らない態度…マジで、意味…わかんねえ…      ちっ… 」

「… … … …」また…舌打ちだ…

「俺はおまえの彼氏だ…彼氏だから久々に会った彼女を抱く…当然、だよな…?」

「たく…拓、海… あ、 んぅっ…  んんっ… 」

いきなり拓海の上半身が私の上に体重をかけるように覆いかぶさり、強引に唇を塞ぐ…。

性急に差し込まれた舌が…暴れるかのように私の口内を彷徨い始め、息が苦しくなる…

「んっ… ふ… んっ… 」

引き剥がそうとするが、即座に両手を頭上でひとまとめにされ…逃れることができない…。

拓海の強引過ぎる仕草…  
それでも…私を傷付けないように手加減しているのがわかってしまう…

もう…本当は…こんなこと、したくない…
したくなかった…

でも… 無理だ…  

拓海を怒らせた… 
悪いのは私だ…
タイミングも全て…伝え方も…態度も…何もかもを…間違ってしまった…。

これ以上は、抗えない…  
今夜は… 今夜だけは…  

私はそんな…あきらめの気持ちで、身体の力を抜いた…。






  






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