【完結(続編)ほかに相手がいるのに】

もえこ

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~誘い~

要望

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「… … … 」

どくんどくん…  鼓動が、次第に早くなる…

杉崎さんの指が、私の唇の端に、そっと、触れている… …

杉崎さんと正面から目が合い、身体が強張る…。

真剣な目… 

いつもの、杉崎さんの綺麗な目… 
その眼光が… いつもより、鋭い気がしたのは気のせいだろうか…。

私はごくりと、息を飲む…。 

「 …あ…  あの…  杉崎、さん… 」

「… … ん… ?何… ?」

何か、問題でも…?

そんな風に言いたげな表情で、私を見つめてくる杉崎さん…。
杉崎さんの視線が、静かに私に絡みつくような… そんな…

「あっ… 」 

いまだ、止まっていただけの、指が…

杉崎さんの長い指が、私の唇を静かになぞり始め、身体の中を、微弱な電流が走る…。

「あ… っの、杉崎さん、 …や、ここ…お店、ですっ… 人が来ますっ… 」
私は、たまらずに杉崎さんの指から離れるように身をよじる…。

体温が急上昇しているのが自分でもわかる…身体が熱くなる…。

「… 別に…誰が来ても構わないよ…俺は… 」

にこりと、綺麗な弧を描く唇とは対照的に、杉崎さんの眼は、笑っていないような気がした。

「 … す、杉…崎さん …」

耳を、疑う…。

外でも…

多少人目が合っても、割と堂々と…私にベタベタと接触してくる拓海とは、全く違う性質の杉崎さん…

いつもその行動には分別があり、控えめな行動しか目にしてこなかった杉崎さんが、
たとえ半個室の部屋であったとしても…こんな風に、公然と私に…しかも、唇に触れてくることなんて…

あ… 

私はハッとする…。

そうだ…一度だけ… 
前に一度だけ、こんなことがあった… こんな感じの個室で… 一度だけ… 

確か、あの時…  まさか、今夜も… ?

「… … … 」

次の言葉が出てこない…

「… 水無月さん… あれ… 固まっちゃったね… ?」

「… あの… もう、離して… ください…」

馬鹿な私は… 自分から、嫌だと、杉崎さんの手を払いのけることすらできない…

相手が拓海なら「やめてよ」と少し怒って、すぐにその手を払いのけただろう…。

でも… できない…   絶対に、そんなことはできない…。

杉崎さんの熱い視線が… それとは対照的な、甘やかな唇が…

私を見えない糸で、そこに縛り付けるかのように…
私はもはや…この人から逃れることができない…

それほどに…  好き…  

「… 今すぐ キス、…したい… 」

「 …え…?」  

私は正面から、もう一度…

 杉崎さんを、信じられない気持ちで見つめた。


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