【完結（続編）ほかに相手がいるのに】

～誘い～

セクハラ

　…　今すぐ、キスしたい　…

確かに、今杉崎さんはそう、口にした。

「…　…　…」

こんな場所で…　こんなことを言うなんて、杉崎さんらしくない…。
キスなんて、できるはずもない…。

「あ…　…　あの、…」

何か言おうと口を開こうとした瞬間、

「…　なんてね…　」
柔らかな笑顔とともに、すっと、私の頬から…杉崎さんの手が離れていく…

「…　…　…　」

「…ごめん、驚かせて…　冗談だから…」
杉崎さんが申し訳なさそうに微笑みながら私を見る。

「…　そう、ですよね…冗談　…　…」
私もつられて、なんとか微笑む。

　　　　　　…ビックリした…　

心臓がいまだに、バクバクしているのがわかる…。

「…ごめんね、なんかたいして量は飲んでないのに、これじゃ、完全におっさんのセクハラだな…」

「いえ…あの、大丈夫です…全然、気にしていませんので…」

取り繕うように、なんとかそう口にする。

「…ごめん…ところで…ちょっと、気になってることがあって今夜、思い切って誘ったんだけど…」

　　　　　気になっていること…？　　

さっき、杉崎さんから言われた、

私が、出張の後から…杉崎さんを避けているように見えるという言葉…

その言葉に、関係することだろうか…。
仮に、拓海とのことを聞かれた場合は、どのように答えよう…　？

　　　　「なんでしょう…？」

私はドキドキしつつも、
あくまで平静を装いながら、杉崎さんを見返した。