【完結(続編)ほかに相手がいるのに】

もえこ

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~誘い~

質問

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杉崎さんが私に聞きたいこととは、いったい何だろう…

「… あのさ …」杉崎さんが遠慮がちに声を発する。

「… はい … 」

カタンと静かにグラスをテーブルに置いて、
杉崎さんが私を真っ直ぐに見つめながら、意を決したかのように口を開いた。

「… あの後… 出張の後のこと… 少しだけ聞いてもいいかな…?」

「… はい …」

      出張の、後のこと…?

あの日、空港まで拓海が迎えに来ていた… 

出張の後のこと…

つまり、拓海と合流した後…
やはり、杉崎さんが私に尋ねようとしていることは、拓海関連の話なのかもしれない…
そう思った瞬間、杉崎さんの質問が私の耳に届いた。

「あの日… 彼氏が迎えに来てたよね… あの後、ひょっとして…何かあったのかなって…」

「… あ… あの、後… …」

       何かあった… ?

あったと言えば、あった… 

というか、ほとんどのことが…

拓海と会った後の、私の数々の選択が…
拓海と会った後の、私の行動の…ほとんどが…ううん…多分、すべてが…
失敗だったとしかいえないようなことが、沢山あった…。

当初の予定では、できるだけトラブルを回避するために、
私が拓海のいる福岡に行った時に、家以外の場所で、冷静に別れを告げる予定にしていた…。

なのに、拓海が突然こちらに現われたことに驚くままに、思わず、別れを告げてしまったこと…
そしてその状況で、拓海を家に上げてしまったこと…

そしてさらに… 
現実には、拓海にキスをされていたにもかかわらず、
私は… その相手を杉崎さんだと思い込み、夢を見ていたとはいえ、迂闊にも杉崎さんの名前を呼んでしまったこと…

そしてそのことが… 拓海を怒らせ、杉崎さんとのことを疑わせ… 

その後…  あんなことに… 

ああ…   駄目だ…
また、思い出しそうになる… 

「…あ …えっと… … …別に、何も… 」

頭で考えるより先に、そんな否定の言葉が出ていた…。

どこが、別に何も…?  

自分で自分を笑いたくなる…。

そんなわけはない…  
あの後、私にとっては、とてもショックなことが、起きてしまった…
そしてそのショックは、いまだに私の中に不安な形で残っていて…夜もなかなか寝付けないくらいだ。

「…水無月さん…なんだか顔色が悪い… 大丈夫…?もしかして今、具合、悪かったりする…?もう、帰ろうか?」

「……あ …いえ…大丈夫です… 」なんとか返事をする。

「きつかったら遠慮なく言って。あの…水無月さんが出張後、元気ないように見えて…ひょっとして、彼氏と喧嘩になったとか…何か良くないことがあったんじゃないかって…勝手に心配したりしてたんだけど…」

  喧嘩…  何か、良くないこと…

全て、正解だった… 

喧嘩、しました。

そして、良くないことが、
杉崎さんの予想通り、拓海との間でかなり良くないことが、起きました…。

そう答えたい気もほんの少しだけしたけど、やはり、杉崎さんに、事の詳細を話せる状態ではなかった…。

拓海が避妊してくれなくて…なかば、無理矢理に抱かれた…

そんなことを杉崎さんに言えば、杉崎さんはどんな反応をするだろう…

想像すらできないし… 想像するのが怖いと思った…。

「… … … … 」
何と返せばよいかわからず、私が無言のままでいると、杉崎さんが更に言葉を重ねる。

「もしかして…彼氏に何か…された…?俺とのことを、もしかして彼が、何か疑っていたとか…?」

「あの… 実は、彼に…拓海に、言ってしまったんです…。」

もう、先にこちらから話せることのみ…
一部のみ、事実を話してしまおうという気になった…。

「え… ?」杉崎さんの視線が揺らぐ…。

「あの夜…拓海に言いました…勢い余って言ってしまったんです。別れたいって…それで …まあ、ちょっと、あって…」

「…そうか……あの後…」驚きを隠せない表情の杉崎さん…

「…はい…本当はこちらから向こうに行った時に、冷静に伝えようって考えていたんですけど…つい…」

「… … …」

無言のまま、何か考え始めたかのように押し黙る杉崎さんを、私は恐る恐る見つめる…。

「あ… あの… 杉崎さん…?」

声を掛けると

「…それで…彼は納得してくれた…?もしかして…彼に何か、ひどいことでも、された…?」

「… … …」  

拓海は、納得してくれたっけ… 何か、… ひどいこと… されたっけ…?

杉崎さんのその質問の後に、
何か、差しさわりのない返事をスムーズにしなければいけないことは頭ではわかっていたのに…

馬鹿な私は、まるで、フリーズしたかのように… 

    そのまま、押し黙ってしまった…。





 




 



















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