【完結（続編）ほかに相手がいるのに】

～決意～

質問

「…　…　…　」

杉崎さんは、何も言わずに私を見下ろしている…。
その距離、わずか1メートル。

私は、はからずも密室に、杉崎さんといるという状況に…緊張のあまり、慌てたように言葉を発した。

「あの…　杉崎さん…　もしかして…さっきの電話って…いうのは…」

さきほど杉崎さんが口にした、急ぎの電話というのは…やっぱり、嘘だったのかもしれない…。

杉崎さんが、私たちのところに来た、タイミング…

そしてそもそも、お昼休みの時間帯に…杉崎さんが、急ぎだからといって、私なんかを呼びに来るはずがない…。
杉崎さんが説明をした瞬間、咄嗟にそんな風に思ってしまった…。

きっと、仕事の話なら…
しかも、急用であれば…杉崎さんは私の休憩時間を奪うことなく、難なく一人で対応するに違いないし、今までもそうだったから…。

「…あ…　やっぱりバレた…嘘ついてごめんね、急ぎの問い合わせなんてないよ。」

「…やっぱり…そう、でしたか…」

「なんだか気になってね…細野さんがわざわざ君を探しに部屋に来るのなんて、珍しかったから…」

「…　そう、ですね…　」なんとか、そう答える…。

確かに、今までに一度も…こんなことはなかった…。
だからこそ、細野さんが私を探していたとさっき本人の口から聞いて、かなり構えてしまったのだ…。

「…もしかして、何か…嫌なこと…言われたり、聞かれたり…しなかったかな…？」
私の思いをよそに、杉崎さんの真剣な視線とぶつかる。

「えっ…　…　」

「いや、その…細野さんって結構、グイグイ質問攻めしてくるから…そもそもなんで君を探してたのかなって…後になって、気になって…前に、二人で行った出張の話もしてたし…」　

杉崎さんのこの、質問の仕方…。
やはり、話を…聞かれていたのだろうか…さきほどから少し、気になってはいた。

なぜなら、自動販売機の後ろ側の通路は…こちらからは全く見えない死角のような位置にある…。

いつから杉崎さんはあそこにいたのだろうか…。

「やっぱり…何か、あった…？」

杉崎さんが、いつもと変わらない優しい眼で…心配そうに私を見下ろしている…　
ともかくも、答えなきゃ…　　　
　
　　　　　　　私は、口を開いた…。