【完結（続編）ほかに相手がいるのに】

～智花〜

獣

私は気を取り直して、なんとか言葉を発する。

「…呆れた…そんなこと…あの昼間の彼女に…堂々と言ってるんじゃないでしょうね…？」

「まさか…そんな馬鹿なことはしませんよさすがに…そんなこと言ったら平手打ちされます。ああ見えて、あの子、結構気が強いんですよ…だからあの場であなたに声を掛けるの、躊躇したくらいで…くくっ…」

身体を揺らして、楽しそうに笑う男…本当に、最低だ…。

「…そう、意外ね…あんなに大人しそうな子なのに…」人の見た目は、驚くほど当てにならない…。

「…あなたもね…そんなに見た目、強そうなのに…中身は…全然、強くねえ…」
ぼそりと、小さな声で男が呟いた。

「　あっ　…　」

男が、グラスに残ったワインを口に含んだ直後、強い力で私を引き寄せる…。

「　え、っ　…あっ　…ん　っ　、　んぅ…　」

唇の端から…
液体が、喉に…　私の体内に…流れ込む…冷たいのに少し生温かい…不思議なワインの温度…

こんなことをされたのは…初めてだ…　　
驚きで、私は目を見開く…　　　

「…ふ…やっぱ、うま…智花さんのエロい唇…なんで彼氏…あんたを捨てたんだろね…意味、不明…　」

「んっ　…　んっ　…！」

どさりと、ソファに押し倒される…。
獣のような男の目が…真上から私を遠慮なしに見下ろしてきて、ドキリとする…。
その手が、私のニットに伸びてくる…。

ああ…　

また、流される…　

この男に…　
この、どこまでも身勝手な男に…　
私の身体だけが目当ての…どこまでも軽い男に…私は今夜も、いいようにされる…

「…昼間、内心ショック受けてるくせに余裕ぶって答えるあんたの背中見て…もっと、泣かせたくなったって…言ったら、怒る…？くくっ…」

「…　…　…　」ああ…

酷いことを言われているのはわかっているのに…何ひとつ言葉が出てこない…。

もう、好きにして…そう、されたい…遊びでもいい…
今夜は、この若い獣のような、男の下で…　滅茶苦茶になりたい…。

　　　　　私は、静かに目を閉じた…。