大江戸貸本幻燈記

文政の江戸。鬼子母神の参道に、奇妙な噂が囁かれていた。

「宵書堂という貸本屋を知っているか」
「あの男から本を借りると、望みが叶う。ただし――」
「関わった者は、みな消える」

茶屋の看板娘・お蜜は、その男と出会ってしまった。
頭巾の下の顔は、見た者すら思い出せない。
穏やかな笑み。丁寧すぎる物腰。そして——

「本とは畢竟、毒や薬と同じでございます」

聖人と呼ばれた老人が、首を吊った。
狂った母親が、娘を送り出せた。
本が人を殺し、本が人を救う。

お蜜は問い続ける。
あんたは何者なの。本で何をしているの。
なぜ、笑っていられるの――

江戸の闇に蠢く人の業。それを見届ける貸本屋と、黙っていられない少女の物語。
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