今世では、もうあなたを愛することはない

潮の香。
波の音。
冷たい空気。

「こ…ここは…?…っ」

気が付くと目の前には足元まで海が来ており、私は人ひとりがやっと座れる岩肌の上にいた。

「な、なぜ、こんなところに…っ!」

頭上から何かが聞こえた気がした。

見上げるとそこには夫であるジェニングの愛人が立っている。

彼女が私をここに?

私を殺すために……!?

「た、助けて! 誰かああああ! 助けてえええぇぇ!!」

助けを求める声を挙げても、波音に攫われてどこにも届かない。
水嵩がどんどん増し、容赦なく私を引きずり込もうとする。

「ジェニング……」

ザッッッパ―――ン

私を裏切った愛する人の名を出した瞬間、私の身体は大きな波に飲まれた。



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