「あの…お話がございます」妻にそう言われる度に、僕は逃げ続ける

Kouei

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第2話 恋の終わり

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 ラフィーニャに誕生日プレゼントを貰った日から、僕たちは打ち解け合うようになった。
 時々他の友人たちと一緒に遊びに来た時も、ラフィーニャは必ず僕に声をかけてくれる。

「こんにちは、セネック様」

「こんにちは、ラフィーニャ様」

「これ…読みたいっておっしゃっていた本。父の書斎ありました」

「え、お借りしていいんですか?」

「もちろんです。そのためにお持ちしました」

 僕は彼女が差し出した書籍を受け取る。

「ありがとうございますっ あ、読み終えたらまたお返しに伺います」

「はいっ」

 僕は時々、本を返すためにケレス家を訪れるようになっていた。
 本当は兄上に渡せばいいのだが、僕は敢えてそうしなかった。

 彼女と出会ってから一年が過ぎると、僕は声変わりをし、身長は彼女の頭を越えた。けれど、年はいつまでも3つ違い。

 そんな事、当たり前だ。
 彼女から見ても、僕は未だに弟のようなものだろう。
 

 それでも良かった。
 それでもいいと思った。



 ラフィーニャが兄上と婚約するまでは…



 その日の空は、とても美しかった。
 鮮やかなセルリアンブルーが空一面を染め上げ、真っ白な飛行機雲が天に向かって伸びて行く。
 
 僕は飛行機雲を見上げながら、必死で涙をこらえた……

 そして両家立ち合いのもと、二人の婚約契約書が交わされ、その後会食が始まった。


「…おめでとうございます、兄上、ラフィーニャ様」

「ありがとう、セネック」

「ありがとうございます、セネック様…」

 
 お祝いの言葉を掛けるため、二人が並ぶ席に向かった。
 うまく笑えていただろうか?

 僕はまともに彼女の顔を見れずにいた。
 席に戻り、のろのろと食事を口にする。
 豪華な料理は、何一つ味がしなかった…


 そしてその日の夜、僕は部屋で一晩中泣き明かした。


 弟としてしか見られなくても、そばにいられればそれでいいと思っていた。
 けれどまさか、それがこんな形で現実のものになるなんて!

 僕など一人の男として見てもらえない。
 彼女が見ていたのは兄上。

 ラフィーニャが兄上の妻になる。

 彼女の美しい銀髪に触れるのも
 彼女の薄紅色の唇に触れるのも

 彼女の全てが兄上のものになる!

 焼けつくような思いが胸を渦巻き、嫉妬で頭がおかしくなりそうだった。  


「くそっ くそ! く…っ うあああああ!!!」


 僕は枕に顔を埋め、声にならない声を吐き出す。
 それしかできない自分が情けなくて、余計みじめになった

「ラフィーニャ様……」
 
 この夜…僕は初めての恋に終わりを告げた。




 だが、その一か月後。
 ラフィーニャと兄上の婚約が破棄される事となった。

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