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12 お別れ

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「おい」

ぎく。

翌朝キッチンで水を飲んでいた俺に王子が声をかけた。

「昨日のこと覚えてるよな」

「いや、あの、それは…」
あたふた動揺する俺に彼が近づいて来る。
あれから姫とちゃんとうまくいったのだろうか。

「その件はすみませんでした…。でもどうして…」
どうして媚薬だとわかったのか。

「王族は毒に敏感なんだよ 一口ですぐわかった あとお前嘘つくの下手すぎだ」

クロは俺から水の入ったコップを取り上げゴクリと一口飲んだ。

そしてふと俺の左の首に視線を落とす。
眉をひそめ、顔を近づけてきた。
な、なんだよ…。俺は一歩下がる。

彼はコップを机に置き、それからがぶりと首に噛み付いてきた。
「いたっ!」
痛みで目をギュッと瞑った。

な、なに…?


彼は俺をギロリと睨みつけると、コップを掴み俺の口に押し付けてくる。そして無理やり残りの水を全部飲まされた。
ごくごくごく…

「ぷはっ…っ」

「今日、俺帰るから見送りに来い」

彼はぶっきらぼうにそう言うとキッチンを出ていった。
首がヒリヒリする…。一体何だったんだ。







王子がキッチンを出て廊下を歩いていると前からアオがやってきた。通りすがりにアオが言う。

「キイロ君は僕のだ」

王子は冷たい目で彼を振り返った。












そういえば王子はなんで今日迎えが来ることわかるんだ?
今更ながら疑問に思う。外部と連絡取ってたってことなのかな。でもどうやって?
まぁ、どうでもいいか。俺はコップをシンクに置くと玄関に向かった。







王子は小人たちに丁寧にお礼を言うと小屋を出ていった。見送りに来いと言ったのに俺の方は一瞬も向かなかった。挨拶とか一切なし…。

というか従者は?
え、まってお姫様は??連れて行かないの?というか白雪姫どこに行ったわけ。昨日の夜から姿を見てないような…。

疑問だらけの俺は急いであとを追いかける。

「おぃ」
「おいってば」


俺が話しかけても彼は止まることなく歩き続ける。歩くの速すぎる。俺は軽く息を弾ませながら問いかける。

「森の、出口、わかるの…?」
「あぁ」
「お迎えは?」
「…」
「白雪姫は?」
「今日一日動けないと思うぞ」

「…?」
なんで?だって昨日姫は夜王子の部屋にいって…そして動けない…。

…。
えっ、えっそ、そういうこと?!
朝までにゃんにゃんしてたんですね。
うまくいったのか!かぁっと顔が赤くなる。うわぁ王子やるじゃん。


原作なら姫をそのまま馬に乗せて城まで帰るって話なのに…。後日迎えに来るってことなのかな。なーんだなら心配いらなかったじゃん。
俺は歩みを止めた。随分小屋から離れてしまったがまだここなら戻れるだろう。

「なるほど!わかった じゃあまたな」
彼に挨拶をしたその瞬間。




足から力が抜けた。





頭が重い体が熱い。はぁ、はぁ…。

さっき思いっきり走って疲れてしまったのだろうか。俺は地面に座り込んだ。

「薬が効いてきたようだな」

「…っ」
くすり…?

王子が俺のもとへやってきて屈む。
王子の髪がサラリと揺れる。
彼は俺の顎をつかむと




「いいか、毒はこうやって盛るんだよ」

そう言ったんだ。


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