ケ・セラ・セラ

雨上がりの空に、虹が架かった日。
若い兵士・高木伍長は、ひとりの上官に恋をした。

吉田傳中尉。
無駄を削ぎ落とした所作と、感情を表に出さない静かな男。
戦時という極限の中で、彼は「判断する側」として生きていた。

高木の恋は、告白ではなく「共有」から始まる。
空の色、夜の会話、意味を持たないはずの言葉。
——なるようになる。
それは、慰めでも希望でもない、ただ受け入れるための言葉だった。

二人の距離は、近づくことも遠ざかることもなく、
規律と沈黙の中で、確かに存在していく。

やがて下される、ひとつの決定。
それが誰の人生を、どこへ運ぶのか。
選ぶ者と、選ばれる者。
伝えられなかった言葉と、届いてしまった声。

これは、
戦場で結ばれることのなかった恋の物語であり、
それでも消えずに残り続けた感情の記録である。

虹は、理由を持たない。
けれど、人はそこに意味を見出してしまう。

——その日、恋は始まり、
そして、終わりの方角へと歩き出した。
24h.ポイント 63pt
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