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08.王妃

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強くなって欲しかった。

アベラルド公爵子息が息子のアルフレッドに掴みかかっても何も言わなかった。
むしろわたくしは、わたくしの犯した間違いが頭の中を駆け巡っていた。
目の前が真っ白になって、自分の身体が揺らぐのが分かった時、誰かがわたくしの身体を支えた。

「……大丈夫か」
「……あなた……」

陛下がわたくしの身体をしっかりと抱きとめてくれていたが、その国王も唇を噛み締めて俯いている。
触れている身体から、震えているのが分かる。
怒りなのか、後悔からなのか……。
アルフレッドが出て行っても何も言わなかった。言えなかった。

その後、アベラルド公爵親子が陛下に許可を貰い、退室して行く。
今更何をした所で時間が戻る事も、起きたことが無かった事にも出来ないが、このまま捨て置く事も出来ないだろう。
罪は罪として罰を与え、裁かねばならない。
そして見せしめ、同じことを繰り返さないよう。
悲しい事が二度と起こらないよう——

「わたくしは……間違っていたのかしら」

ジュリーを医師に任せ、わたくしは寝室に横たえられた。
側には陛下が居てくれている。本日の公務は他の人に任せられるものは任せたのだろう。

「それは結果論でしかない。お前はジュリーの為を思って行動したのだから」

陛下の暖かい言葉に涙が溢れる。
ジュリーの前では泣かなかった、泣けなかった。
辛く苦しんだジュリーの前で、自分が被害者かのように涙を流す事なんて出来ないと思った。

強く……強く……
女性の頂点に立てるように
卑怯な事に屈することなく
嫌味を聞き流し
堂々と真っ直ぐ前を見て

ジュリーが駄目なんかじゃない
ジュリーが相応しくないわけではない
わたくしのように、辛く苦しい思いをして欲しくなかっただけ

「わたくしが……ちゃんと気がついていればっ……!」

涙を流す私の頭を陛下が撫でる。
見ていて助けたところで先がない事も分かっている。
自分一人で立ち向かい解決しなければならない。これは乗り越える為の試練でもある。
だけれど……毒を飲むくらいならば……!
立ち向かうヒントを、手助けを、行ったのに!

「陛下、よろしいでしょうか」

ノックの後に、医師の声が室内に響いた。
陛下の許可と共に入った医師は、真剣な表情で告げた。

「アベラルド公爵令嬢の首をはねますか?」

それは、身体が手中にある際、確実に命を落とす為に用いる手段だ。
国が滅ぶような機密事項を他に回さない為、念には念を入れた行為。

「そんな……っ!」

苦しみ生きて、毒を飲んで苦しみ、更にそこへ鞭打つ行為をするのか!
反論しようとしたわたくしを陛下が止めた。
そして陛下は——
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