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東の国編
17.魔力中和 ※
しおりを挟むルークの項垂れた顔を、直接触れられないから魔力で押し上げる。目隠しを裂いて落としても、目は開いていない。力が入っておらず開いたままの口に、ミアは回復魔術を使いつつ手を添え、ミアの魔力を流し込んでいく。ありったけの魔力で、ルークの体内も体外も包んでいく。
ルークを、助けたい。ミアはそのために生きている。
あの家では要らない子と言われ、ずっと隠されて生きてきたのを、ルークが変えてくれた。だから、勝手に居なくならないで。ミアの任務は、一生ルークの傍にいることだ。もしルークに何かあったら割り切ろうとしていたけど、そんなの嫌だ。
「…………ミア」
「ルーク」
ミアの強い魔力を感じ取ったのだろうか、ルークが目を開ける。まだ、喜べない。暴走を繰り返したルークの中には、まだ、ルイスの魔力も残っている。
「……ミアが僕の目の前にいる…、人質ではなくなった?」
「うん」
「この部屋に、結界は張った?」
「うん」
「部屋の外に、師匠がいるね?」
「うん」
「ミアは、暴走していないね?」
「うん」
ルークがひとつひとつ確認していく。全体の状況はよく分からないが、それでも今、なぜミアがひとりで、自由な状態で居られるのかは、分かった。
「この手枷、壊せる?」
ミアが、滅多に使わない破壊魔術で手枷を壊してくれた。枷がついている本人が壊せないだけだ。同じ姿勢で長時間いたために身体が固まってしまい、バランスのとれないルークを、ミアが回復魔術で支えてくれた。
「ミア、ずっと欲しかった…」
「うん」
「ごめんね、辛いのに」
ルークが覚えていないだけで、ミアはきっと、顔も名前も分からない魔術師をずっと受け入れ続けていたはずだ。ミアの下腹部を擦ってあげる。さっきまで気を失っていたルークには、まだ暴走の兆しはないが、時間が経てば、いずれまたやってくる。
「もうすぐ、僕の中の魔力が暴れ出す。もし処理しきれなければ、その時は…」
「ううん、そんな時は来ないの」
ミアから、まだ自我のあるルークに口付けた。一年ぶりの、舌を絡めた番とのキスの味。
……すごく、甘い。
「ん、あ…」
「……っ、はは、全然違うね」
番との快感は、桁違い。
ルークは書物で読んだ文章を思い出す。番は本当に、交わるのに適した相手なのだ。
ミアの回復魔術のおかげで、少しずつ体勢を変えられるようになったルークは、ミアを組み敷いて、暴走が来る前にできる限りの愛撫をしようとした。自分の身体もほぐしながら、ミアの耳から首筋、鎖骨や胸を舐める。
「あっ、ルーク、まって、んあ、んか、へんっ」
「番って、すごいんだな…」
鎖骨から首筋まで、一気に舌を滑らせると、それだけでミアは軽く達してしまったようだ。服を捲り、胸の頂きを口に含みつつ、指は秘部に沿わせた。
「あ、まって、まって…!」
「ミア…」
久々でも十分すぎるほど濡れていて、ルークの指をすんなりと受け入れてくれる。顔を隠すミアを見ると、ルークの魔力が滾ってきて、余裕が無くなるのが分かる。
「ミア、そろそろ来る」
もうすでに息を乱しているミアとは、目線を合わせるのもやっとだが、顎を支えるとしっかりと目が合った。
「上手く、切り抜けてね」
ミアは必死に頷いたけど、それがルークに伝わったかは分からない。番との久々の交わりに、身体が黙っていなかった。
「んああっ…!」
ルークがミアの肩に噛みついた。痛みはあまり感じない。いや、痛いと言えば痛いけど、気持ちいい。痕がつくだろう。ミアが痕をつけてみてほしいと言っても、ルークはなかなかそれをしようとはしなかったのに。
……でも、それでいいの。
そのルークは、暴走し始めた魔力をどんどん放出していた。魔力放出をして、ミアが中和して戻していけば、ルークが助かる。
さっきまでの優しいルークは消えて、ミアの知らない鋭い目つきをしたルークが、自身を突き立ててくる。暴走前のルークが愛撫していてくれたし、何より番だ。それだけで、この一年のどの交わりよりも気持ちいい。ルーク自身が、ミアの最奥を狙って勢いよく入ってくる。
「んああああ!」
この快感には、耐えられないと、ミアは思った。一年前、ルークが初めて魔力暴走を起こした時と同じように、いや、その時以上に、ミアの最奥を狙ってルークは動き続ける。ミアが達しても達しても、ルークは止まらない。
「あっ、るーく、るーくっ!」
「ん…」
「んんっ!」
ミアもまた、快感に飲まれ魔力を垂れ流している自覚はあったが、ちゃんと混ざりあって、中和されて、元ある身体へと魔力が戻っていくのは確認できた。ルーク以外の魔力が身体に入らないように、意識を保っていたけど、中和ができているなら安心だ。
段々と達しすぎて声すら出なくなって、ミアはルークの違和感が全て消えたのかを見届けずに、意識を手放した。
☆
「はぁ…、はぁ…、ミア…」
何回果てたのかは分からないし、そんなに果てられるものなのかも分からない。ミアが気を失ったことにも気付かず、ひたすら腰を打ち付けていた。
自己中心的な行為をやっと終えて、目を瞑ってぐったりしているミアの唇にキスを落とす。ミアの涙の跡にも口を寄せ、指でも擦って、それから自分の魔力を確かめる。
……ああ、全部、自分の魔力だ。しかも、最大総量が更新されている。
この部屋の外には、ジョンと、あとは誰だろう。ルークを暴走させた張本人もいる気配がある。他にも何人か、知らない人が居る。
ミアを魔術で清めて、服を整える。ルークの服がないのはどうしようかと、考える。ミアがここにいて、人質ではなくなったと言っていた。
それならば、生活部屋に転移できるかもしれない。やってみる価値はある。ジョン以外もいるこの部屋の外に、生まれたままの姿で出る勇気はなかった。
「ぐっ…」
ミアを抱えようとするが、ルークに支えられるほどの筋力も体力もなかった。この一年、騎士としての訓練はしていなかったし、魔力暴走を起こしながら、ミアを抱き潰した後だ。当然だろう。
ルークは回復魔術で自分の身体を支えつつ、ミアを抱えて転移魔術を使った。全ての魔力が自分のものであると感じられる今、二種類の魔術を同時に使うことなど容易だ。そして、生活部屋にはきちんと転移できた。結界が破られている。
ミアを寝台に寝かせ、ルークも服を着る。今回は敵国に潜入していることもあり、魔術師のマントの下は普段着だ。
服を着てやっと一息つくことのできたルークは、ジョンを思い出す。連絡を取らないと。監獄前で、ルークとミアが出てくるのを待っているはずだ。通信魔術を飛ばす。
「師匠、僕です」
「無事か!」
「そこにはもういません。服を取りに部屋に戻っています。場所は分かりますか?」
「さっきミアがいた場所だな?」
「今、ミアは眠っているので、どういう経緯があったのかは知りませんが」
「向かうから、そこにいてくれ」
「分かりました」
ジョンは転移魔術を使えないから、来るまで少し時間があるだろう。もしかしたら、ジョンと一緒にいた人の中で、転移魔術を使える人がいるかもしれないが、そこまで強い魔力は感じなかった。ルークはミアに寄り添うように座って、その手を握り、落ち着いた息遣いを眺めた。
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