シンジケート -第零番地区-


 世界に存在しない区画、『第零番地区(ゼロ・ゾーン)』。

 ここでは、“世界に属さない人たち”が暮らしており、現実世界とは対をなす「場所」として、巨大な機械都市が建設されていた。

 ゼロ・ゾーンは、現実世界の“片割れ”であると言われる場所であり、また、過去と未来の交差点でもあった。

 現実は、たった一つの選択によって生まれ、一つの時間の先につながっていく。

 私たちが暮らしている「現在」とは、事象の地平面において1つの確率が収束した姿であり、時空の揺らぎが閉じた状態でもある。

 ただし、世界には“裏のチャンネル”と呼ばれる場所が存在していた。

 その場所は、まだ「現在」が「現実」に到達していない場所であり、また、過去と未来が“動き続けている場所”でもあった。


 現在にたどり着けていない、あらゆる可能性の集う場所。


 「ゼロ・ゾーン」とは、すなわち、“そうならなかったという時間”が集まる場所のことを指していた。

 「A」であり、「B」であるもの。

 それでいて、現実ではないもの。
 

 私たちは普段の生活の中で、何気ない選択を取ることがあるだろう。

 しかしその選択は、たった1つの時間と空間の岸辺に辿り着き、決して変わることのない「結果」へと結びつく。

 ——もし、あの時ああしていたら…


 長門高校に通っていた赤木ユウタは、突如として街中に現れた謎の球体に吸い込まれる。

 暗闇に包まれた視界の中で、走馬灯のような目まぐるしい景色が頭の中に駆け巡った後、得体の知れない化け物が、自分を襲おうとしていることに気づいて…
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