“最強のヤンキー”と恐れられている遠野青葉が、異世界先の学園で無双する!?


 赤司大牙がひとりでグラウンドの隅に立っていたのは、春の終わりの夕暮れだった。

 部活が終わった放課後だった。彼はひとり黙々と壁に向かってボールを投げていた。

 フォームはひどかった。軸足が流れ、リリースも甘い。投げた球はたいてい浮いて、ガシャンと鈍い音を立ててフェンスに当たった。
 ――それでも、大牙は毎日投げていた。誰に褒められるわけでもなく、誰かに見せるでもなく。

「おい」

 そんな彼に、ある日声をかけたのが――遠野青葉だった。

 制服のスカートに、だるそうに肩を落としたカバン。耳にはいくつものピアス。ぱっと見で「関わるな」と言わんばかりの空気を纏っていた彼女が、唐突に、芝の上に座りこんだ。

「お前、それじゃ肩ぶっ壊れるぞ」

 第一声がそれだった。

 大牙は驚いて振り返る。誰だ、この怖そうな人は――と一瞬思ったが、彼女はすでにボールを拾い上げ、勝手に構えを指導してきた。

「リリースポイント高すぎ。そんなんじゃスライダーもまともに曲がんねえし、インハイ抜けるだろ」

「……なんでわかるんだよ」

「うちの親父、元プロだからな。……まあ、クビになってからはロクなもんじゃなかったけど」

 その日からだった。
 最初は半信半疑で彼女のアドバイスを受け入れ、何度かキャッチボールをするようになり――気づけば、それが日課になっていた。
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