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第4章 ヒロインズ・バトル

第70話 ユウタ様?

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 ◇

 翌日。
 タッグトーナメントが前日にあったにもかかわらず、ブレイビア学園では普通に授業が行われていた。

 さすが王国騎士団が運営する最高峰の姫騎士育成機関。
 疲れただろうから特別に休みにしてあげよう――などという優しさは微塵も見えない。

『体育祭の翌日は休みでしょ』みたいな感覚でいる現代日本人からすると、これもソシャゲじゃ分からないリアルだなぁ。

 そして午後の実技演習もいつも通り普通に行われていた。

「ユータ、ちょっと休憩にしましょ。煮詰まってきたから頭の中を整理したいの」

 昨日の優勝の余韻に浸ることもなく、俺と濃密な模擬戦を繰り返していたアリエッタが悩ましそうな顔で告げた。

「了解だ」

 そんな顔をさせてしまったのが俺なのがやや申し訳ないが、こればっかりはアリエッタに頑張ってもらうしかないので、涙を飲んで心を鬼にしよう。

 アリエッタ頑張るんだぞ!
 アリエッタが頑張る限り、アリエッタ応援団長を自負する俺も全力でサポートし続けるからな!
 ファイオー!
 ファイオー!
 俺は心の中で、悩めるアリエッタにエールを送った。

「じゃあ次はアタシねー」

 アリエッタが1人作戦会議に入ると、すぐにルナが模擬戦の相手に立候補してくる。
 オッケーと返事をしかけたところで、それまで模擬戦を見ていたユリーナが俺たちのところに近づいてきた。

 今日は午後の模擬戦に、珍しくユリーナの姿があった。
 キララとクララの双子メイド姫騎士も一緒にいる。

「ちょっとユリーナ、どうしてあんたがいるのよ?」
 ユリーナたちを通行止めするように立ち塞がったアリエッタが問いかけると、

「午後の実技は、1年生合同ですわよ。わたくしがいても何の問題もありませんわ」
 ユリーナは金髪を優雅にかき上げながら、澄まし顔で答えた。

「そうだそうだー! ユリーナ様の言うとおりだー!」
 さらにはメイド姫騎士のキララが、ユリーナを盛り立てるような援護射撃を見せる。

 タッグトーナメントで戦った時にも思ったんだけど、めちゃくちゃ仲いいよなこの2人。
 主従って言うよりほとんど友達だ。
 自分大好きでプライドが高そうに見えて、その実ユリーナは意外と面倒見がよくて器の大きな女の子なのかもしれない。

 ちなみにもう一人のメイドのクララは、穏やかな笑みを浮かべながら、一歩引いたところで静かに見守っている。
 これまた慣れた様子だった。 
 多分これがこの3人のいつも通りなんだろう。

「それもあるけど、私が言いたいのはそういうことじゃなくて、どうしてあんたがわざわざ私たちのところに来たのかってことよ」

 アリエッタが指摘したように、今この場には、

・俺
・アリエッタ
・リューネ
・ルナ
・ユリーナ
・クララ
・キララ

 が一団となって集まっていて、かなりの大所帯を形成している。

 しかもオンリーワンな男の姫騎士な俺に加えて、アリエッタ、リューネ、ルナ、ユリーナと1年生Aランクの5人のうち4人が集まっているので、そういう意味でも目を引いていた。

「別にあなたと一緒にいようと思っているわけではありませんわアリエッタ・ローゼンベルク。わたくしの狙いはずばりユウタ様ですから」

「え、俺? っていうかユウタ様ってのはなんだ?」

 様付けされるとか人生で初めての経験なんだが。

「これからは敬意を表して、そのようにお呼びさせていただきたく存じますわ」
「敬意……? 俺に?」

「ええ、そうですわ」
「えーと、その心は?」

「わたくし考えましたのよ。キララをああもたやすく倒してみせたユウタ様は、1年生では最強――いいえおそらくは上級生を含めても、ユウタ様は学園で最強のはずですわ。であれば、敬意をもって接するのは当然ですし、ユウタ様と共にいれば学べるものも多いはずではないかと」

「それはそうかも?」
 ユリーナの説明を聞いた俺が納得しかけていると、

「却下。ノー。出直してらっしゃい。さようなら」
 アリエッタが不愉快さを隠そうともせずに、シッシッと手であっち行けのジェスチャーをした。

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