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まさかの邂逅1

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 ラヴァンディエ王国の第一王子、リュシアンが我が家──ランベール家にお忍びでやって来るという。
 その知らせを聞いた私は半ばパニック状態だ。

(ええっ?! な、なんで……っ?! なんでここに来るの?! 行くならベアトリスのお屋敷でしょ!!)

 ここまで原作から脱線するとは思わなかった。
 でもこの流れだと私が王子の婚約者になってしまうのだろうか。

(いやーっ!! それだけは絶対にいやーっ!!)

「と、父さま……! お、王子様が来るのですか……? 本当に? どうして?」

 私はふるふると震えながら、父さまにその理由を聞いてみた。

 ──父さまは、父さまだけは娘を生贄にするような人じゃないと信じたい──!!

 もしこれで婚約のための顔合わせだと言われたら、私は人間不信になってしまうだろう。
 だけど私の心配は杞憂だったようで、父さまが珍しく嫌悪感をあらわに、吐き捨てるように言った。

「そうなんだよねぇ。ほんといい迷惑だよね。誰も呼んでいないのに、権力を駆使して強引にねじ込んできたんだよ」

 ……私以上に、父さまは王子が来るのを嫌がっていた。それはそれで驚きだ。騎士は王家に忠誠を誓っていたのでは? と思ってしまう。

「あ、あの、父さま……?」

「あの糞ガ……王子がミミを見初めたらどうしてやろうか……。もう王家滅ぼしちゃう? それとも一家揃って亡命するか……?」

 愛娘の前では王家への忠誠は無いにも等しいようだ。
 父さまは権力よりも娘を大事にしてくれる、とても愛情深い人だった。

 あんなに嫌だったミシュリーヌへの転生だったけど、この人が自分の父さまだったことだけは神様に感謝出来る。

 ──それだけで、ミシュリーヌに転生しても良かったと、心の底から思うほどに。

 しかし父さまの様子を見るに、私より王子の来訪を嫌がっているようだ。

「王様が命令したのですか?」

 心優しい王様だと父様は言っていたけれど、無理矢理命令を下したのだろうか、と不思議に思う。

「うーん、リュシアン殿下が強く希望されたそうなんだ。だから親バ……子煩悩な陛下が是非に、と打診してきてね。私も断りにくかったんだよ」

 権力というから高圧的な命令かと思いきや、実際はただの懇願だったようだ。

 王様がそんな弱気でこの国は大丈夫なのだろうか。
 ……だから宰相の力が強いのかもしれないけれど。

 それにしても父さまはさっきから王族に対して暴言を吐きすぎなのではないだろうか。糞ガキに親バカって……。言い直してはいたけれどバレバレである。

 原作では宰相がベアトリスとシャルルを王子に紹介するために、お茶会をセッティングしていたけれど、今回の来訪は王子が希望したから、というのは理解できた。

「でも、どうして王子は希望したのですか?」

 一番気になるところはその理由だ。王子がミシュリーヌの存在を知ったとしても、わざわざ会いに来る必要がないはずなのに。

「……うーん、それがだねぇ……」

 父さまはとても言いづらそうに、口をモゴモゴとしている。余程言いにくい理由なのだろうか。

「……父さま?」

「うっ……! いや、それが、何というか……。私がすっごくミミの自慢をしちゃったから、かも?」

「は?」

 一瞬、幼女が発してはいけないドス声が出てしまった。
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