『錆びた天秤と黄金の勇者 〜無能の鑑定士、異なる世界の英雄たちを束ねる〜』
「大崩落」と呼ばれる未曾有の異変により、剣と魔法の世界「アルカディア」、蒸気機関と銃器が発達した近代世界「バルハイム」、霊力と陰陽術が息づく東洋の異界「豊葦原」という三つの異なる世界が一つに融合した混沌の街『カルディア』。
この街の片隅で古道具屋兼、ギルドの装備調整係として働く四十八歳のダグラス・ミルズは、前線の無理難題と上層部の予算削減の板挟みに遭いながら、胃薬片手に現場を回す生粋の裏方職人だった。
彼の固有スキル『摩耗視』は、物の傷み具合しか分からない「鍛冶師の丁稚にも劣る劣等スキル」と蔑まれていたが、ダグラスは三十年の泥臭い下積み経験と掛け合わせることで、武具の金属疲労から異世界間の物質の相性、さらには使い手の心身の歪みまでを見抜く究極の『審美眼』へと昇華させていた。
ある日、彼の工房に街の救世主である「黄金の勇者」セレスティアが泣き濡れて駆け込んでくる。
彼女の聖剣が原因不明の劣化を起こし、バルハイム出身のエリート兵站局長ギルバートの最新解析機によって「寿命」と断じられ、前線から外される危機に陥っていたのだ。
ダグラスは『摩耗視』で、その不調が寿命ではなく、異なる世界の魔素や火薬の煤、霊気が混ざり合ったことによる「異文化の消化不良」であることを見抜き、見事に聖剣を蘇らせる。
さらにダグラスは、同じく異世界の法則のズレに苦しむ抜刀術の達人・陣や狙撃手・エレノアの武具も次々と調律し、互いの力を高め合う連携を生み出していく。
しかし、データと科学技術を絶対視する合理主義者ギルバートは、ダグラスの非科学的な職人芸を認めず、最新鋭の科学魔導装甲部隊との未踏迷宮の攻略競合を突きつける。
理論と最新科学か、それとも泥水をすすってきた裏方の経験と審美眼か。
異なる世界の英雄たちと有能なエリート官僚を巻き込み、くたびれた老職人が世界の歯車を噛み合わせていく、渋くも熱い逆転の群像劇。
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