『灰と楔(くさび)の年代記』
三十年前の大噴火「灰の災厄」により旧帝国が崩壊し、鉱物毒を含んだ火山灰に覆われた世界。
かつて帝国の筆頭工兵監でありながら、上層部の命で水門を閉ざし、多くの民と妻子を見殺しにした過去を持つ五十二歳のカイルは、名を捨て流浪の石工として生きていた。冬が迫るある日、彼は北辺の荒廃した集落「セネカの谷」に辿り着く。
谷は三年前の地震で旧帝国時代の導水坑が崩落し、住民たちは灰の混じる沢の泥水を啜りながら、緩慢な滅びを待っていた。
宿とわずかな麦粥の代償として導水坑の修復を請け負ったカイルは、灰の病で片肺が石化した老鍛冶師ガッツ、自暴自棄になっていた孤児の若者ロルフと共に、岩盤を打ち抜くための鋼の大楔を鍛え上げる。
さらに、過去の崩落事故で息子を失い猛反対していた鉱夫頭ヨハンらに対し、山の重みを逃がす「合掌枠(がっしょうわく)」の土木技術を実証して説得。
住民一丸となって暗闇の坑道へ挑み、命懸けの破砕作業の末に清冽な地下水を蘇らせる。
しかし、溢れ出た真水は、火縄銃で武装した元帝国兵の野盗団と、毒に侵された怪物の群れ「灰被り(はいっかぶり)」を谷へと引き寄せてしまう。
圧倒的な暴力を前に、カイルは剣ではなく「工兵の知略」で立ち向かう。
夜間に水を撒いて築いた氷の斜面、敵を袋小路に誘い込む食い違いの石塁、そして古い火薬を精製し直した爆裂弾「震天雷(しんてんらい)」を駆使し、住民と共に外敵を迎え撃つ。
激戦の中、老鍛冶師ガッツが自らの命と引き換えに敵頭目の足を止め、カイルも左肩を撃ち抜かれるが、ガッツの大鎚を受け継いだロルフが、カイルの教え通り石造りの煙突の土台へ楔を打ち込み、崩落によって敵頭目を討ち果たした。
厳しい冬を越えて春が訪れ、奪った武器を打ち直した農具と、坑道の底泥から作った肥やし、そして新たな石の水路によって、死の谷に数十年ぶりとなる緑の麦が芽吹く。
過去の罪と向き合ったカイルは、逞しく成長したロルフに愛用の測量具を託し、この谷で共に生きていくことを決意するのだった。
かつて帝国の筆頭工兵監でありながら、上層部の命で水門を閉ざし、多くの民と妻子を見殺しにした過去を持つ五十二歳のカイルは、名を捨て流浪の石工として生きていた。冬が迫るある日、彼は北辺の荒廃した集落「セネカの谷」に辿り着く。
谷は三年前の地震で旧帝国時代の導水坑が崩落し、住民たちは灰の混じる沢の泥水を啜りながら、緩慢な滅びを待っていた。
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激戦の中、老鍛冶師ガッツが自らの命と引き換えに敵頭目の足を止め、カイルも左肩を撃ち抜かれるが、ガッツの大鎚を受け継いだロルフが、カイルの教え通り石造りの煙突の土台へ楔を打ち込み、崩落によって敵頭目を討ち果たした。
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