笑うヘンデルと二重奏

 ――「あの子が迎えにくるのよ。私を殺しにね」

 音楽教師である美音茜の母は、十年前から入退院を繰り返していた。ある日彼女が母を訪ねると、自分が死んだあとは何も遺さないで、と娘に告げた。突然告げられた妙な「遺言」を不思議に思いながらもその日一日を過ごしていると、病院から一本の電話が。それは母が死んだという連絡だった。
 不意にカレンダーが目に留まる。その日は、茜の双子の姉・雫が死んだ日だった。
 遺品整理をするために、母の教え子だった七葉郁が雫の遺品の楽譜『パッサカリア』を持って美音家に訪れる。徐々に思い出されていく、家族の記憶。その過去に触れていくと、茜と郁の前に十年前に死んだはずの雫が現れた――。
 これは、ある家族をめぐる不思議な二日間の物語。
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