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「王子様から求婚されるなんて!おめでとう、コーネリア!!」
母が私を抱きしめる。
此処はルクヴァタリア王国の宮殿、今夜は聖夜の舞踏会。
11才の誕生日を目前にした私は、貴族のこどもたちが集められた談話室にて、年齢的に子守りの役割を果たしながらも楽しく過ごしていた。
そこで、様子を見に来てくれた第一王子のグレイアム殿下と仲良くなって……
「──えっ!?」
その瞬間、私は全てを思い出した。
これは二度目の転生だ。
しかもまた悪役令嬢コーネリアに転生してしまった。
「ど、どうして……!?」
確かに今回の相手は前回私を絞殺した第二王子エリオットではなくて、次期宰相である才色兼備の第一王子グレイアム殿下のようだ。
母親譲りの艶めく黒髪と闇のような深紫の瞳は嫌われがちだから、容姿からの印象を補正するために人に優しく生きてきた。それは利己的な優しさであって、真心こめた優しさではない。
善人面の子守りは謂わば只の処世術。
それが功を奏して面倒見のいい第一王子グレイアム殿下と仲良くなれたわけだけど……
またコーネリアなの!?
「お母様。アマリア・メイプルという伯爵令嬢はいませんでしたか?」
「アマリア?あなたが面倒を見ていた子?」
「どうでしょう……覚えていなくて」
「え?迷子?」
至極真っ当な勘違いをした母が狼狽し、贈り物を届けてくれた四つ年上のグレイアム殿下と共に推定迷子の伯爵令嬢アマリア・メイプルを探し回るという聖夜の大事件となった。
「どこの伯爵家だい?」
「ええと……」
エリオット殿下とは違いグレイアム殿下は大らかで面倒見がよくて優しい。私の手を引いて真剣に謎の伯爵令嬢アマリア・メイプルを探してくれた。
ゲームの仕様で伯爵家の家名と名前が変更可能だった。
苗字のメイプルは何故か固定だ。それがどうしてなのかは製作元に問い合わせなければわからないし、その手段は使えない。
「メイプルか……アライアンスに聞いてみよう」
国王の長兄が宰相となって弟と国を支える習わしだが、現在の宰相は病に冒され先が短いというのは周知の事実だった。そのため、宰相の第一子アライアンスは早くから父親の補佐を務め、次期宰相であるはずのグレイアム殿下と父親の繋ぎとして代役の宰相を務めることになる。
私の七歳年上であるアライアンスは、10才の私には既に充分大人に見えた。
「婚約おめでとうございます、殿下。初めての共同作業が迷子探しですか。可愛いものですね」
にこやかに応じてくれたアライアンスの助けもあり、私たちは──私は『ルクヴァタリアの花冠』の主人公アマリア・メイプルと出会う。
「やあ、君がアマリアかい?」
アライアンスがしゃがみ込み優しい微笑みで尋ねる。
その隣にグレイアム殿下も片膝をつく。
だから私も、その隣で膝を抱えた。
柔らかなライトブラウンの髪に、優しい赤褐色の瞳。
見るからにメイプルシロップなアマリアはふんわりとした雰囲気の可愛らしい少女だった。
私がなりたかった、誰からも愛される可愛いアマリア。
彼女は聖歌隊に紛れ込んだ孤児だったのだ。
母が私を抱きしめる。
此処はルクヴァタリア王国の宮殿、今夜は聖夜の舞踏会。
11才の誕生日を目前にした私は、貴族のこどもたちが集められた談話室にて、年齢的に子守りの役割を果たしながらも楽しく過ごしていた。
そこで、様子を見に来てくれた第一王子のグレイアム殿下と仲良くなって……
「──えっ!?」
その瞬間、私は全てを思い出した。
これは二度目の転生だ。
しかもまた悪役令嬢コーネリアに転生してしまった。
「ど、どうして……!?」
確かに今回の相手は前回私を絞殺した第二王子エリオットではなくて、次期宰相である才色兼備の第一王子グレイアム殿下のようだ。
母親譲りの艶めく黒髪と闇のような深紫の瞳は嫌われがちだから、容姿からの印象を補正するために人に優しく生きてきた。それは利己的な優しさであって、真心こめた優しさではない。
善人面の子守りは謂わば只の処世術。
それが功を奏して面倒見のいい第一王子グレイアム殿下と仲良くなれたわけだけど……
またコーネリアなの!?
「お母様。アマリア・メイプルという伯爵令嬢はいませんでしたか?」
「アマリア?あなたが面倒を見ていた子?」
「どうでしょう……覚えていなくて」
「え?迷子?」
至極真っ当な勘違いをした母が狼狽し、贈り物を届けてくれた四つ年上のグレイアム殿下と共に推定迷子の伯爵令嬢アマリア・メイプルを探し回るという聖夜の大事件となった。
「どこの伯爵家だい?」
「ええと……」
エリオット殿下とは違いグレイアム殿下は大らかで面倒見がよくて優しい。私の手を引いて真剣に謎の伯爵令嬢アマリア・メイプルを探してくれた。
ゲームの仕様で伯爵家の家名と名前が変更可能だった。
苗字のメイプルは何故か固定だ。それがどうしてなのかは製作元に問い合わせなければわからないし、その手段は使えない。
「メイプルか……アライアンスに聞いてみよう」
国王の長兄が宰相となって弟と国を支える習わしだが、現在の宰相は病に冒され先が短いというのは周知の事実だった。そのため、宰相の第一子アライアンスは早くから父親の補佐を務め、次期宰相であるはずのグレイアム殿下と父親の繋ぎとして代役の宰相を務めることになる。
私の七歳年上であるアライアンスは、10才の私には既に充分大人に見えた。
「婚約おめでとうございます、殿下。初めての共同作業が迷子探しですか。可愛いものですね」
にこやかに応じてくれたアライアンスの助けもあり、私たちは──私は『ルクヴァタリアの花冠』の主人公アマリア・メイプルと出会う。
「やあ、君がアマリアかい?」
アライアンスがしゃがみ込み優しい微笑みで尋ねる。
その隣にグレイアム殿下も片膝をつく。
だから私も、その隣で膝を抱えた。
柔らかなライトブラウンの髪に、優しい赤褐色の瞳。
見るからにメイプルシロップなアマリアはふんわりとした雰囲気の可愛らしい少女だった。
私がなりたかった、誰からも愛される可愛いアマリア。
彼女は聖歌隊に紛れ込んだ孤児だったのだ。
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