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エルダーと婚約破棄して我が家に戻ると、お父様とお母様は頭を抱えて落ち込んでいた。
「い、嫌な予感が的中してしまった……」
「ま、まさか、やらかしてはいないのでしょうね?」
「やらかしたと言うのは、どういったことを言うのでしょうか?」
お母様は私をジト目で睨む。
そして嘆息して口を開いた。
「……槍を使っていないでしょうね?」
「使いましたわよ」
バタン! と勢いよく倒れるお母様。
お父様は顔を真っ青にしてお母様の体をさする。
「だ、大丈夫か、おい! しっかりしろ」
「あのお父様。先に言っておきますが、婚約を破棄したのと槍は関係ありませんわよ?」
「関係あろうがなかろうが、醜態を晒したことを嘆いておるのだ! 私もこいつも!」
「ああ……それは大変申し訳ございませんでした」
両親の気持ちを考えると、少し心が痛む。
さすがにやらかしてしまったか……しかし、あの時はああするのがベストだと思ったのだ。
私はあの行為を後悔はしていないが、両親の露骨にガッカリしたこんな顔を見ると、苦笑いしか浮かばない。
ふと振り向くと、クリスがクスクスと笑っているのが視界に入る。
「クリス」
「申し訳ございません、お嬢様。旦那様たちのお姿がとても滑稽で」
「こ、滑稽!? 何故そのようなことを言うのだ!?」
クリスは綺麗な口調で毒を吐く。
お父様はそんなクリスの毒舌に唖然とするも、いつものことかとため息をつき落ち着きを取り戻す。
「しかし……お前を貰ってくれる男性はもう現れないかもしれんぞ」
「その時はその時ですわ。悩んでいても仕方ありません」
「お前は楽観的すぎる。もう少し悩んでくれ」
お父様の小言が始まり、解放されたのは夜遅くのこと。
疲れ果てた私は、自室に戻るなりすぐ横になった。
数日後。
天気もいい朝、日課である槍の訓練をしようと庭に出た時のことだ。
軽く屈伸運動をしていると、庭へと入って来る男性の姿があった。
彼は炎のように赤い髪に、キラキラと輝きを放つ碧眼。
いまだかつて見たことないようほど美しい顔立ちをしており、背も高く、理想を具現化したような殿方であった。
そんな彼は、柔和な笑みを浮かべながら、私に近づいて来る。
私は内心ドキドキしており、彼が一歩一歩歩み寄って来るのを黙って見ていた。
お互いの視線が絡み合い、世界には私たちだけしか存在していないような錯覚を覚える。
彼は私の前に立ち、とびっきりの笑顔を浮かべた。
「アリーヴェ・ドンコタス、だね?」
「い、嫌な予感が的中してしまった……」
「ま、まさか、やらかしてはいないのでしょうね?」
「やらかしたと言うのは、どういったことを言うのでしょうか?」
お母様は私をジト目で睨む。
そして嘆息して口を開いた。
「……槍を使っていないでしょうね?」
「使いましたわよ」
バタン! と勢いよく倒れるお母様。
お父様は顔を真っ青にしてお母様の体をさする。
「だ、大丈夫か、おい! しっかりしろ」
「あのお父様。先に言っておきますが、婚約を破棄したのと槍は関係ありませんわよ?」
「関係あろうがなかろうが、醜態を晒したことを嘆いておるのだ! 私もこいつも!」
「ああ……それは大変申し訳ございませんでした」
両親の気持ちを考えると、少し心が痛む。
さすがにやらかしてしまったか……しかし、あの時はああするのがベストだと思ったのだ。
私はあの行為を後悔はしていないが、両親の露骨にガッカリしたこんな顔を見ると、苦笑いしか浮かばない。
ふと振り向くと、クリスがクスクスと笑っているのが視界に入る。
「クリス」
「申し訳ございません、お嬢様。旦那様たちのお姿がとても滑稽で」
「こ、滑稽!? 何故そのようなことを言うのだ!?」
クリスは綺麗な口調で毒を吐く。
お父様はそんなクリスの毒舌に唖然とするも、いつものことかとため息をつき落ち着きを取り戻す。
「しかし……お前を貰ってくれる男性はもう現れないかもしれんぞ」
「その時はその時ですわ。悩んでいても仕方ありません」
「お前は楽観的すぎる。もう少し悩んでくれ」
お父様の小言が始まり、解放されたのは夜遅くのこと。
疲れ果てた私は、自室に戻るなりすぐ横になった。
数日後。
天気もいい朝、日課である槍の訓練をしようと庭に出た時のことだ。
軽く屈伸運動をしていると、庭へと入って来る男性の姿があった。
彼は炎のように赤い髪に、キラキラと輝きを放つ碧眼。
いまだかつて見たことないようほど美しい顔立ちをしており、背も高く、理想を具現化したような殿方であった。
そんな彼は、柔和な笑みを浮かべながら、私に近づいて来る。
私は内心ドキドキしており、彼が一歩一歩歩み寄って来るのを黙って見ていた。
お互いの視線が絡み合い、世界には私たちだけしか存在していないような錯覚を覚える。
彼は私の前に立ち、とびっきりの笑顔を浮かべた。
「アリーヴェ・ドンコタス、だね?」
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