大宋の転生「覇道ではなく、王道を」
殿試の答案に「デフレと信用創造」を書いた受験生が、皇帝に見出された。剣も魔法も持たない経済学徒が、信用と鉄道と統計で魔帝の帝国に立ち向かう。英雄ではなく国が強くなる、全440話完結の中華風異世界内政譚。
経済学部の大学生・林修平は、就職初出勤の朝、交通事故に遭ったはずが、気づけば見知らぬ農地に倒れていた。
スマートフォンは圏外、周囲の人間とは言葉も通じない。だが漢字だけは通じる筆談を頼りに、修平はこの世界が中華文明圏らしいことを知る。私塾で言葉と学問を学び直し、街で目にした国号は「大宋」。てっきり過去の宋代へ来たのだと思い込んだ修平は、身寄りのない自分がこの巨大な官僚国家で生きていく唯一の道として、科挙合格を志す。
だが殿試で提出した「デフレと信用創造」を論じた策論は、皇帝の目にまで留まり、及第した修平は異例の出世を遂げていく。やがて夜対の場で明かされる衝撃の真実――この国が戦っているのは遼でも金でもなく、魔法を操る魔族軍であるという事実。ここは史実の宋ではなく、大宋という国家そのものが丸ごと転生した、異世界だったのだ。
武力を持たない一介の経済学徒に、剣も魔法も扱えない。だが修平には、現代日本で培った経済学・統計学の知識がある。銭荒に喘ぐ大宋を救う信用創造と中央銀行、位取り記数法、そして産業革命――主人公はあくまで方向性を示す羅針盤に過ぎない。実際に国を動かすのは、皇帝・宰執・武将・技術者・そして無数の名もなき民たちだ。
主人公がチートなのではない。国そのものが強いのだ。
魔族との激突による壊滅的な敗北、そこからの産業革命による大逆転、政治と軍事の分立、そして民の声を掬い上げる新たな仕組みの模索――大宋は幾度もの敗北と対話を重ねながら、覇道ではなく王道による統治を追い求めていく。
これは、一人の転生者の物語ではない。
武力ではなく徳と制度によって世界を変えようとする、ひとつの国家の物語である。
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