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プロローグ
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ここは、アルク王国。裕福な国として有名な国である。
しかし、光が全くない暗い地下の一室で──
「おい!」
と、突然大声で怒鳴り声を上げられ一人の少女はビクッと肩を揺らした
「陛下がお呼びだ。来い、化け物」
「…っ」
カツカツと靴の音だけが響く。
「陛下。ゴミをお連れしました」
「うむ、ご苦労」
国王の元へ行くと、ドサッと強引に跪かされた。
「貴様、隣国へ嫁げ。以上」
国王は少女を害虫でも見るような目つきで、食事をとりながら言ってきた。
(………?……)
あまりの爆弾発言に何年ぶりか、少女の表情が微かに動いた。
「!な、なんだ!その顔は⁉︎貴様、余を馬鹿にしているのかっ⁉︎兵よ、鞭打ちをしろ‼︎」
「御意」
バシっ!バシっ!
何回も何百回も細かい刃のついた太い鞭で打たれる。それを周囲の人間達が笑いながら見ている。終いには、俺にもやらせてくれという者も。
一様、少女にも感情はある。まだ、残っている──否。消えかけている。感情のない声で応答などはできるが、痛みがほぼ分からなくなってきているほど、少女の心は壊れていた。
隣国へ嫁げ。誰の元へとも言われていない以上、少女は隣国の物となる。最悪の場合、国中の男の相手をしなくてはいけない可能性も。
隣国へ行くのは明日だと言う事で、少女は、明日に向けて寝た。否。寝させてもらえた。
『ねぇ、ははうえ』
幼い少女の声がする。しばらくして、この声は自分の声だと分かった。もう、何十年もの前の出来事だ。
『なぁに、ルー』
ルー?誰だろう。と思ったが思い出せた。
(…ああ、私の……な、まえ)
ルーチェ──これが自分の名だと。
そして、ルーチェの横にいる金髪に晴れた空のような瞳を持つ美女は、自身の母親だということも思い出した。
『はんようってなぁに?』
『っ……』
『ははうえ?』
『……大丈夫よ。いつか…いつか、貴方も分かる日が来るわ』
コテン、と首をかしげる幼いルーチェ
そこに──
『……すまない』
と、ルーチェを膝の上に乗せている雪のような美しい、長い白髪に血のような赤眼を持つ、人手離れした美貌の男が辛そうな顔をして謝った
『?どうして、あなたが謝るの?』
『わたしは何も考えていなかった。君たちが苦しんでい──』
『フェリーチェ様!』
男が言い終わる前に母親が彼の名を呼んだ。
『ねぇ、フェリ様。いつ、どこで私が、この子が幸せではないと言ったの?』
『君たちではないっ!他の奴らだ。人間どもが…』
『私達の幸せを勝手に決めないで!』
『……え…』
『私は、幸せなんです。大好きな貴方と一緒になれて。この子を──ルーチェを授けてくださって。幸せなんです。』
『っ!……!ルー?』
クイッと幼い自分が、フェリーチェ──父親の袖を引っ張った。
『ちちうえ。わたしね、ちちうえとははうえの子供にうまれて嬉しいの!』
『っ!……そう、か。ふふ。そうか』
『ええ、そうよ。大好きよ。愛してるわ、あなた』
『わたしも大好き!ちちうえ!ははうえ!』
『ふ。ああ、わたしも愛してるよ。セレーノ、ルーチェ』
ハッ…!
少女──ルーチェは、薄暗く汚い部屋で目を覚ました。
何も変わらない。今の夢が、偽りの幸福だったかのように思えてくる。でも、それが偽りではなかった事はよく知っている。
「……解除」
フゥ…
傷だらけの首下にネックレスが現れた。父親と自分の魔力でできた、美しい輝きを放つ石がはめてある。
本来、人間は魔法を使えない。魔法が使えるのは人間以外の生き物だけだ。しかし、ルーチェは使えた。何故なら、彼女が半妖だから。
半妖。ルーチェの母親は人間であったが、父親は神獣である。しかも、神獣の頂点として決して多くはない神獣達を治めている。その間に生まれた、人間でもなく、神獣でもない。中途半端の存在、半妖。だから、ルーチェは嫌われ、虐げられながら生きていた。
それでも、神獣達などの人間以外の者達だけは、ルーチェの事を愛し、大切にしてくれた。
「…ちち、うえ」
父親を呼んでも何も起こらない。当然だ。聖なる存在の神獣は、この腐り果て魂が穢れている者しかいないこの国に入れないから。そんな、神獣の子であるルーチェもこの穢れた空気に当てられている。
*次の日
何年ぶりかお風呂に入れされてもらえた。体を洗い、髪を梳き、そこそこの服を着る。
ルーチェの世話している侍女の手は、恐怖でカタカタと震えていた。
「っ……で、でき、ました…っ」
「………あり、がとう、ござい、ます…」
ルーチェが辿々しい言葉でお礼を言うと侍女達は目を丸くしていた。
バァン‼︎
大きな音を立てて扉が開かれた。
「おい!半妖‼︎」
入ってきたのはこの国の王太子とその婚約者だ。婚約者はアイリーン・シルバー。シルバー公爵家の娘で、ルーチェの血の繋がらない義妹である。
「貴様こどきが隣国へ嫁げるんだ。土下座して喜ぶか良い!」
「そうよ~。生きても価値のないお義姉様が生きさせてもらえるのよぉ。ふふっ。ほんと、穢らわしいわね。その髪といい、目といい」
「ああ、本当だな。それに比べ、君は美しい。」
「あらぁ」
目の前でイチャつかれてもルーチェは何も行動する事は許されない。
ただ、王子達が去るのを待つだけだ。
「おい」
「!」
そんな中もう一人やってきた。シルバー公爵だ。彼は仕方なくルーチェを養女とした、書類上だけの義父。ルーチェの事を暇さえあれば殴っている。それでも、まだ殴るだけたらマシな方だ。他の者は、殴るだけではなく熱湯をぶっかけたり…他にもいろいろひどい事をされたり、言われたりしてきた。
「半妖、さっさと死ね。消えろ。分かったか」
「…は、い……うま、れて…きて、申し訳…ありま、せん、でし、た…」
「本当にな」
バンっ!
大きな音を立てて扉が閉まった。
ルーチェは、もう普通に生きる事を諦めていた。これから先、何が待っているのか──
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こんにちは、月華です。
今回、初めて恋愛系を書かせていただきました。初心者故、間違えが多いかと思いますが見守っていただけたらと!
追記:もう一つの【転生したら妖精や精霊を統べる「妖精霊神王」だったが、暇なので幼女になって旅に出ます‼︎】を中心に書いていますので、不定期更新となります。申し訳ありません。
しかし、光が全くない暗い地下の一室で──
「おい!」
と、突然大声で怒鳴り声を上げられ一人の少女はビクッと肩を揺らした
「陛下がお呼びだ。来い、化け物」
「…っ」
カツカツと靴の音だけが響く。
「陛下。ゴミをお連れしました」
「うむ、ご苦労」
国王の元へ行くと、ドサッと強引に跪かされた。
「貴様、隣国へ嫁げ。以上」
国王は少女を害虫でも見るような目つきで、食事をとりながら言ってきた。
(………?……)
あまりの爆弾発言に何年ぶりか、少女の表情が微かに動いた。
「!な、なんだ!その顔は⁉︎貴様、余を馬鹿にしているのかっ⁉︎兵よ、鞭打ちをしろ‼︎」
「御意」
バシっ!バシっ!
何回も何百回も細かい刃のついた太い鞭で打たれる。それを周囲の人間達が笑いながら見ている。終いには、俺にもやらせてくれという者も。
一様、少女にも感情はある。まだ、残っている──否。消えかけている。感情のない声で応答などはできるが、痛みがほぼ分からなくなってきているほど、少女の心は壊れていた。
隣国へ嫁げ。誰の元へとも言われていない以上、少女は隣国の物となる。最悪の場合、国中の男の相手をしなくてはいけない可能性も。
隣国へ行くのは明日だと言う事で、少女は、明日に向けて寝た。否。寝させてもらえた。
『ねぇ、ははうえ』
幼い少女の声がする。しばらくして、この声は自分の声だと分かった。もう、何十年もの前の出来事だ。
『なぁに、ルー』
ルー?誰だろう。と思ったが思い出せた。
(…ああ、私の……な、まえ)
ルーチェ──これが自分の名だと。
そして、ルーチェの横にいる金髪に晴れた空のような瞳を持つ美女は、自身の母親だということも思い出した。
『はんようってなぁに?』
『っ……』
『ははうえ?』
『……大丈夫よ。いつか…いつか、貴方も分かる日が来るわ』
コテン、と首をかしげる幼いルーチェ
そこに──
『……すまない』
と、ルーチェを膝の上に乗せている雪のような美しい、長い白髪に血のような赤眼を持つ、人手離れした美貌の男が辛そうな顔をして謝った
『?どうして、あなたが謝るの?』
『わたしは何も考えていなかった。君たちが苦しんでい──』
『フェリーチェ様!』
男が言い終わる前に母親が彼の名を呼んだ。
『ねぇ、フェリ様。いつ、どこで私が、この子が幸せではないと言ったの?』
『君たちではないっ!他の奴らだ。人間どもが…』
『私達の幸せを勝手に決めないで!』
『……え…』
『私は、幸せなんです。大好きな貴方と一緒になれて。この子を──ルーチェを授けてくださって。幸せなんです。』
『っ!……!ルー?』
クイッと幼い自分が、フェリーチェ──父親の袖を引っ張った。
『ちちうえ。わたしね、ちちうえとははうえの子供にうまれて嬉しいの!』
『っ!……そう、か。ふふ。そうか』
『ええ、そうよ。大好きよ。愛してるわ、あなた』
『わたしも大好き!ちちうえ!ははうえ!』
『ふ。ああ、わたしも愛してるよ。セレーノ、ルーチェ』
ハッ…!
少女──ルーチェは、薄暗く汚い部屋で目を覚ました。
何も変わらない。今の夢が、偽りの幸福だったかのように思えてくる。でも、それが偽りではなかった事はよく知っている。
「……解除」
フゥ…
傷だらけの首下にネックレスが現れた。父親と自分の魔力でできた、美しい輝きを放つ石がはめてある。
本来、人間は魔法を使えない。魔法が使えるのは人間以外の生き物だけだ。しかし、ルーチェは使えた。何故なら、彼女が半妖だから。
半妖。ルーチェの母親は人間であったが、父親は神獣である。しかも、神獣の頂点として決して多くはない神獣達を治めている。その間に生まれた、人間でもなく、神獣でもない。中途半端の存在、半妖。だから、ルーチェは嫌われ、虐げられながら生きていた。
それでも、神獣達などの人間以外の者達だけは、ルーチェの事を愛し、大切にしてくれた。
「…ちち、うえ」
父親を呼んでも何も起こらない。当然だ。聖なる存在の神獣は、この腐り果て魂が穢れている者しかいないこの国に入れないから。そんな、神獣の子であるルーチェもこの穢れた空気に当てられている。
*次の日
何年ぶりかお風呂に入れされてもらえた。体を洗い、髪を梳き、そこそこの服を着る。
ルーチェの世話している侍女の手は、恐怖でカタカタと震えていた。
「っ……で、でき、ました…っ」
「………あり、がとう、ござい、ます…」
ルーチェが辿々しい言葉でお礼を言うと侍女達は目を丸くしていた。
バァン‼︎
大きな音を立てて扉が開かれた。
「おい!半妖‼︎」
入ってきたのはこの国の王太子とその婚約者だ。婚約者はアイリーン・シルバー。シルバー公爵家の娘で、ルーチェの血の繋がらない義妹である。
「貴様こどきが隣国へ嫁げるんだ。土下座して喜ぶか良い!」
「そうよ~。生きても価値のないお義姉様が生きさせてもらえるのよぉ。ふふっ。ほんと、穢らわしいわね。その髪といい、目といい」
「ああ、本当だな。それに比べ、君は美しい。」
「あらぁ」
目の前でイチャつかれてもルーチェは何も行動する事は許されない。
ただ、王子達が去るのを待つだけだ。
「おい」
「!」
そんな中もう一人やってきた。シルバー公爵だ。彼は仕方なくルーチェを養女とした、書類上だけの義父。ルーチェの事を暇さえあれば殴っている。それでも、まだ殴るだけたらマシな方だ。他の者は、殴るだけではなく熱湯をぶっかけたり…他にもいろいろひどい事をされたり、言われたりしてきた。
「半妖、さっさと死ね。消えろ。分かったか」
「…は、い……うま、れて…きて、申し訳…ありま、せん、でし、た…」
「本当にな」
バンっ!
大きな音を立てて扉が閉まった。
ルーチェは、もう普通に生きる事を諦めていた。これから先、何が待っているのか──
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こんにちは、月華です。
今回、初めて恋愛系を書かせていただきました。初心者故、間違えが多いかと思いますが見守っていただけたらと!
追記:もう一つの【転生したら妖精や精霊を統べる「妖精霊神王」だったが、暇なので幼女になって旅に出ます‼︎】を中心に書いていますので、不定期更新となります。申し訳ありません。
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