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コライユ帝国

隣国へ

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ついに、隣国── コライユ帝国へと出発する時が来た。コライユ帝国は、どの国にも引けをとらない圧倒的戦力を持つ国だ。そしてルーチェは、そのに嫁ぐ。

「化け物!」
「消えろ!」
「死ね!」
「隣国で穢されろ!」

ひどい言葉がたくさん降ってきていたが、ルーチェは全く気しなかった。

(………でら、れ、た……)

そんな幸福?らしきものを感じながら彼女は、記憶が薄れていく中でも母の言葉を思い出していた。

『ルーチェ。これから貴方には、たくさんの困難が待っていると思います。辛くて、悲しくて、寂しくて、死にたいと思うかもしれない。……でも、諦めないで。必ず、その先には輝かんばかりの光が──未来が待っていますからね』
『はい、ははうえ!』

──何があっても、母上と父上はルーの味方よ。

(……は、は、うえ…)

しかし、彼女の心を荒んでいた。もう、どうでもいいと思うほどに

こうして、半妖の少女──ルーチェは隣国へ向かった。

馬車に揺られている間もご飯は最低限のものだけで、休む事なくずっと揺られていた。


*五日後

五日後、アルク王国とコライユ帝国の境界線に到着した。
そこには、コライユ帝国からの使者が待っていた。

「お待ちしておりました、ルーチェ様。ここからはコライユ帝国の騎士団長、デューク・フラックスがお連れいたします」

騎士団長のデュークは、黒髪黒目のイケメンさんだ。

「そんな丁寧なお迎えをしてくださって、勿体無く存じます」

そう答えたのは、ルーチェが隣国へと向かう為に共にきた、アルク王国の騎士団長だ。
そして、彼は馬車に乗ったままのルーチェにしか聞こえないように──

「おい、さっさと行け。そして、死ね。貴様など存在自体が邪魔なんだ。せいぜい、苦しみながら死ぬ事だな」
「………」
「チッ!返事は⁉︎」
「…は、い…生ま、れてきて、もう、し訳、あり、ません、でし、た」

そして、エスコートもされる事なくルーチェは馬車から降りた。

「さぁ、ルーチェ様。この馬車にお乗り下さいませ。あと、1時間もすれば城に着きますので」

そう、優しく言われてルーチェは混乱した。

「…は、い…」

ルーチェは、顔を覆うフードをかぶっている為、顔が見えない。
どうせ、また虐げられるだろうと思いながら馬車に乗った。


*1時間後


     ヒヒーン!

馬の声が聞こえた。どうやら王城に着いたようだ。

「お手をどうぞ、ルーチェ様」

手を出されたが、どうすれば良いかわからず言われたまま手を差し出した。

「⁉︎」

手を差し出すと、「失礼します」と断りを入れてから、デュークはルーチェを抱き上げ、地面に下ろした。

「ルーチェ様は、失礼ながらお体があまりよろしくないようなので」

デュークはルーチェの体調を気遣ってくれているようだ。
王城の長い廊下を、デュークに支えられながら進んでいく。着いた先は大きな部屋だった。

「?」

不思議に思っていると──

「コライユ帝国へよくぞお越しくださいました。皇帝陛下にお会いする前に服を着替えてもらいますね」

扉の先で、侍女さん達が優しい微笑みを浮かべていた。

「ご自分で、着替えますか?」

その言葉にコクリと頷くと、一人の侍女さんに奥の部屋に連れて行かれた。

「ふふ。そんなに緊張なされなくとも大丈夫でございますよ。それと、そのフードはお外し下さいね」

その侍女は、アメリーと名乗り部屋を後にした。

一人になった部屋で言われた通り、着替えることにしたルーチェ。
人に見せられるような体ではない。身体中に大きな傷や小さな傷の痕が残っている。最近付けられた傷もあれば、古傷もある。
で治せるかもしれないが、できるだけ使いたくなかった。

──これ以上、傷つきたくなかったのだ

着替えた服は綺麗な銀糸で縫われた、ローブのようなものだった。それが、雪のような真っ白な髪にとても合う。

     カチャ…

「!終わりましたか、ルーチェ様──っ⁉︎」

ルーチェが姿を表すと、その場にいた全員が目を見開き、息を呑んだ。

「!」

体を硬くしているルーチェにようやく我に帰ったのか、次々にお綺麗ですと口にした。

「今から向かうところは、公式の場ではございません。ですから、そんなに緊張なされなくともよろしいのですよ」

微かにカタカタと震えているルーチェを見てどう思ったのか、アメリーがそう答えた。
ルーチェは、この髪と瞳の色に対して言われると思っていたからそんな事を言われて呆気に取られた。



こうして、ルーチェは隣国──コライユ帝国に無事、到着したのであった。
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