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マーマン集落編
濡れた蜘蛛の巣
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アレから1週間が過ぎた。
俺達の視線のむこうには、あくせくとバンカーホーク迎撃の準備をするマーメイド達の姿が見える。
マーメイド達はなんかすげー長いワカメらしきものを組み合わせて網状に張り巡らせている。
確かあのワカメは……
「あいつ等何をやっているんだ?」
一緒に見学に来ていたイシクダキが俺に質問してくる。
「連中が持っているのは硬水藻だ。恐らくアレをよりあわせて大きな網を作って鳥の魔物を捕獲するつもりなんだろう」
硬水藻は本当に硬いワカメ系の海草で、地上で乾燥させて使えばロープ代わりになるほどだ。
「捕まると思うか?」
だがイシクダキはそんなマーメイドの作戦に懐疑的だ。
「あー、無理だろうな。普通の魔物ならイケルだろうが、相手は数十mの巨体を高々度から勢いをつけて飛び込んで来るんだ。仮に硬水藻が保っても、ソレを構えている連中は踏ん張りが効かんから空へビューンだろうな。うまい事ど真ん中に突っ込んでくれれば、上空に出た際に網で上手く羽ばたけずに墜落する可能性も多少はある」
とはいえそれは硬水藻が引き千切られなければの話だ。
俺の回答に納得がいったのか、イシクダキはウンウンと頷く。
っつーか考えるのが苦手なイシクダキでも無意識に無理だろうと理解できてしまうような作戦で、あいつ等は何故イケると考えたのだろうか。
こういう時、周囲に固定するもののない深い海は不利だな。
「よーし、罠が出来たぞ、全員配置に付け!!」
「はっ!」
アカヤリの号令に従ってマーメイド達が拡散していく。
武器を持ったマーメイド達が拡散すると共に、硬水藻の端を持つマーメイド達も広がり藻網を広げていく。やはり藻網の端をマーメイドが引っ張って展開するみたいだ。
だがその中でアカヤリだけが、一人その場に残っていた。
もしかして自分が囮になるつもりなのだろうか?
だとすれば意外に部下思いだな。
「始めるみたいだな」
「ああ」
「なぁ、あれで捕まえようとするのは良いんだが、例の魔物に気付かれないのか?」
そんなイシクダキの疑問を解消するようにマーメイド達が硬水藻を半回転させる。
「成程」
硬水藻はワカメのような形をしている。つまる90度回せば薄くなるから上空からは見えないだろうという作戦みたいだ。意外に考えているな。
「……」
イシクダキもそれに気付いたのか無言だ。
ふとアカヤリがこちらへ振り向く。
「見ているが良いツラヌキよ! 我等マーメイドがあの魔物を見事退治してくれようぞ!」
「ああ、楽しみに見させてもらうさ」
さてさて、うまくいくだろうか?
◆
バンカーホークが現われるのをじっと待ち続けるマーメイド達。
釣りと一緒で待っている間は暇だな。
「なぁ……」
ふとイシクダキが声をあげる。
「どうした?」
「いや……ちょっと思ったんだが……」
イシクダキが藻網を指差して言う。
「あの鳥の魔物は斜めに飛び込んで来るんだよな」
「ああ、そうだな」
「じゃあ斜めからだとあの藻網は見えているんじゃないのか?」
「……あ」
それに気付いた時には既に遅かった。
赤い巨体が突然海中に姿を現す。やはりバンカーホークの突入速度はハンパないな。
そしてバンカーホークは……アカヤリではなく藻網を持ったマーメイド達に襲い掛かった。
マーメイドの数人が足の杭で串刺しされる、そしてバンカーホークは何事もなかったかのように空へと帰って行った。
「あっというまだったな」
「ああ、あっというまだった」
まぁ、網をオトリであるアカヤリの前に広げていたんだから、ソレを持っているマーメイド達が狙われるのは必然か。ほんとコイツ等頭悪いんだな。
結局、マーメイド達は何も成果も挙げる事が出来なかったのであった。
俺達の視線のむこうには、あくせくとバンカーホーク迎撃の準備をするマーメイド達の姿が見える。
マーメイド達はなんかすげー長いワカメらしきものを組み合わせて網状に張り巡らせている。
確かあのワカメは……
「あいつ等何をやっているんだ?」
一緒に見学に来ていたイシクダキが俺に質問してくる。
「連中が持っているのは硬水藻だ。恐らくアレをよりあわせて大きな網を作って鳥の魔物を捕獲するつもりなんだろう」
硬水藻は本当に硬いワカメ系の海草で、地上で乾燥させて使えばロープ代わりになるほどだ。
「捕まると思うか?」
だがイシクダキはそんなマーメイドの作戦に懐疑的だ。
「あー、無理だろうな。普通の魔物ならイケルだろうが、相手は数十mの巨体を高々度から勢いをつけて飛び込んで来るんだ。仮に硬水藻が保っても、ソレを構えている連中は踏ん張りが効かんから空へビューンだろうな。うまい事ど真ん中に突っ込んでくれれば、上空に出た際に網で上手く羽ばたけずに墜落する可能性も多少はある」
とはいえそれは硬水藻が引き千切られなければの話だ。
俺の回答に納得がいったのか、イシクダキはウンウンと頷く。
っつーか考えるのが苦手なイシクダキでも無意識に無理だろうと理解できてしまうような作戦で、あいつ等は何故イケると考えたのだろうか。
こういう時、周囲に固定するもののない深い海は不利だな。
「よーし、罠が出来たぞ、全員配置に付け!!」
「はっ!」
アカヤリの号令に従ってマーメイド達が拡散していく。
武器を持ったマーメイド達が拡散すると共に、硬水藻の端を持つマーメイド達も広がり藻網を広げていく。やはり藻網の端をマーメイドが引っ張って展開するみたいだ。
だがその中でアカヤリだけが、一人その場に残っていた。
もしかして自分が囮になるつもりなのだろうか?
だとすれば意外に部下思いだな。
「始めるみたいだな」
「ああ」
「なぁ、あれで捕まえようとするのは良いんだが、例の魔物に気付かれないのか?」
そんなイシクダキの疑問を解消するようにマーメイド達が硬水藻を半回転させる。
「成程」
硬水藻はワカメのような形をしている。つまる90度回せば薄くなるから上空からは見えないだろうという作戦みたいだ。意外に考えているな。
「……」
イシクダキもそれに気付いたのか無言だ。
ふとアカヤリがこちらへ振り向く。
「見ているが良いツラヌキよ! 我等マーメイドがあの魔物を見事退治してくれようぞ!」
「ああ、楽しみに見させてもらうさ」
さてさて、うまくいくだろうか?
◆
バンカーホークが現われるのをじっと待ち続けるマーメイド達。
釣りと一緒で待っている間は暇だな。
「なぁ……」
ふとイシクダキが声をあげる。
「どうした?」
「いや……ちょっと思ったんだが……」
イシクダキが藻網を指差して言う。
「あの鳥の魔物は斜めに飛び込んで来るんだよな」
「ああ、そうだな」
「じゃあ斜めからだとあの藻網は見えているんじゃないのか?」
「……あ」
それに気付いた時には既に遅かった。
赤い巨体が突然海中に姿を現す。やはりバンカーホークの突入速度はハンパないな。
そしてバンカーホークは……アカヤリではなく藻網を持ったマーメイド達に襲い掛かった。
マーメイドの数人が足の杭で串刺しされる、そしてバンカーホークは何事もなかったかのように空へと帰って行った。
「あっというまだったな」
「ああ、あっというまだった」
まぁ、網をオトリであるアカヤリの前に広げていたんだから、ソレを持っているマーメイド達が狙われるのは必然か。ほんとコイツ等頭悪いんだな。
結局、マーメイド達は何も成果も挙げる事が出来なかったのであった。
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