『妹に全部あげました――婚約者も爵位も。代わりに“自由”をもらいます。』
侯爵家の長女リディアは、王太子エドガーから婚約破棄を突きつけられる 。隣には妹セシル 。涙を浮かべる妹に、貴族たちは“真実の愛”を称え、リディアを悪役に仕立て上げた 。
しかしリディアは怒鳴らない 。泣かない 。
「婚約者も爵位も。妹に全部あげます。代わりに――“自由”をもらいます」
そう言い残し、屋敷を出た 。
向かったのは霧深い辺境「ユノの谷」 。温泉と薬草の小さな村 。そこでリディアは、罠にかかり傷ついた白銀の大狼――“守り獣”を見つける 。
撫でて癒やした瞬間、守り獣は奇妙な共鳴を起こし、人に変わってしまう 。ただし人型は完全な人間ではなく、耳と尻尾、縦長の瞳、熱い体温が残る 。そして言葉は話せない 。単語すらおぼつかない 。それでも守り獣は、リディアのそばでだけ安定し、生きるために“保護”を必要としていた 。
「守り獣は聖遺物だ。教会に引き渡せ」
王都から届く回収命令 。密猟者の影 。弱まる結界 。
――守る側だったはずの獣が、道具として奪われる世界で 。
リディアは初めて、自分の意志で誰かを守る 。
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