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4話 侯爵令息 その1

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「レナ、気持ちは落ち着いているかな?」

「お父様……はい、大丈夫です」


 私は1週間以上休んでいる状態が続いていた。その間は引き籠っているのとなんら変わらない生活だわ。お父様も毎日のように心配してくれている。母様や兄さまや姉さまも同じく心配してくれたけれど、今は屋敷にはいない。

「お父様、私はこれからどうしたらいいか悩んでいます」

「うむ、当然の悩みかとは思うな」

「今後、私を婚約者として認定してくれる方が現れるのか……それがとても心配です」


 貴族間で行われるパーティーには出席していない。おそらくハグリズとの婚約破棄の噂が流れているだろうからだ。しばらくは出席しない方がいいと判断した。お父様も賛同してくれている。

「私の魔法を重宝してくれる方は現れるのでしょうか……とても心配です」

「気に病むなとは言えぬがレナよ。ここは強い心を持つべきだと思うぞ? お前はまだ16歳だ、それに器量もよい。お前を好きになってくれる殿方は必ずいるだろう」

 しかし、私はハグリズに裏切られてしまった。器量がよい……確かに外見には少し自信はあるけれど、突出しているほどではない。私以上の外見の人なんて大勢いるくらいだわ。お父様の慰めの言葉は今の私にはなかなか届かなかった。

 本当に私のことを好きになってくれる人は存在するのだろうか……それが不安で仕方なかった。多少、外見がよいことなど貴族の地位に比べたら微々たるものでしかないから……。

「う~む、レナよ。相当に参っているようだな」

「すみません、お父様。私も想定より落ち込んでいるようです。この1週間でハッキリしました」

「そうか……まあ、難しい問題だからな。しかし、このまま引き籠っていても解決しないのも事実だ」

「そうですね……」

 それは分かっている。いつかは元気を取り戻して活動しなければどうにもならない話なのは分かっていた。でもその足掛かりはなかなか難しいものがある。私の心はかなりふさぎ込んでいるようだった。

「あ、あの……ローゼン様! 少しよろしいでしょうか?」

「ん? どうかしたのか、アンナ」


 メイドの一人であるアンナが声を掛けて来た。ローゼンというのはお父様の名前だ。

「それが……今、侯爵令息の方がお越しになっています」

「何……侯爵令息だと? 誰だ?」

「リクイド・ブラムス様とおっしゃっていますが……」


 その名前を聞いて私の時間はしばらくの間、止まっていた。私の幼馴染と同じ名前だったからだ。いや、でもあの人は子爵令息だったはずだし……まさかとは思うけれど。えっ? 同一人物なの……?
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