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3話 家に帰る その2

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「父さん……母さん、実はそういうことなの……ごめんなさい」

「なんということだ」

「アリッサ……」


 婚約破棄の事実を知った父さんと母さん……やはりというか、悲壮感が漂っていた。まあ、トトメスとの婚約が決まった時、あれだけ喜んでくれたからね。それだけに落胆は大きいのだと思うわ。


「ごめんなさい……私が情けないばかりに……」

「いや、アリッサが悔いることはない。お前は被害者なのだからな」

「そうよ、アリッサ。自分を責める必要なんてないのよ」

「父さん……母さん……」


 私を責めることはしない二人……本当は落胆しているだろうに、私を怒りはしなかった。とても嬉しいけれどなんだか悪い気がしてしまう。


「諸悪の根源はトトメス様にあるわけだ。お前の技術を盗んだと言ったのだな?」

「ええ、そのように言っていたわ。私も調合の時にもっと気を配れば良かった。見物人が多いとは思っていたのよ」

「ふむ……」


 父さんは何かを考えているようだった。なんだろうか?


「そういうわけで父さん。私は妹が虐げられていることに我慢できないのだけれど……」

「ハルナンナ……気持ちは分かるが早まったことはするなよ。アーレス伯爵令息との婚約に響いてしまうぞ」

「うっ……それはそうかもしれないけれど」

「決して早まるな」


 父さんは姉さんの行動の先を読んでいるようだった。やはり親子で通じるものがあるのね。姉さんは何も言えない状況だ。先ほどは文句を言いに行きそうだったし。


「婚約破棄の件はとても悲しいけれど、先祖代々伝わる薬の技法が盗まれたのもショックなの」

「ふむ……そのことだがな、アリッサ」

「父さん?」


 父さんはどこかにやりとしていた。一体どうしたと言うんだろう?


「トトメス様は果たして本当に盗めたのかな?」

「えっ……どういうこと? 私は確かに用なしだと言われたのよ?」

「ふふふ、確かにそうね」


 なんだか母さんも笑っているようだった。一体全体どういうことなの?

「マクレガー家の遺産はそんなに簡単に盗めるものじゃないということだ」

「えっ……?」

「試しにアリッサ。こういうのはどうかな?」


 父さんが顔を近づけて来た。その表情は自信に満ち溢れているように見える。

「どうしたの、父さん……?」

「悲しみの胸中だろうが、それを忘れるためにも店を開いてみないか?」

「ええっ、店を……!?」


 何を言いだすのかと思ったら、父さんは予想の斜め上の提案をしてきた。私が店を出す……それって薬屋ということ? 父さんの真意が測れないでいた……どういうつもりなの?
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