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19話 トトメスの不祥事

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(トトメス視点)

「くそ……一体なぜこんなことが起こったんだ」

「原因がはっきりしないようです」

「くそ、くそ……」


 クレームの連絡はあの後も続いていた。エリックに入って来る情報でも原因が分からないのだ。しかし、大量生産体制を止めるわけにはいかない。どんどん薬を作って売り上げを上げなくては。


「トトメス様、検品体制を完璧にして少しでも不良品を失くすことから始めなくてはならないのでは?」

「やはりそれが必要か……くそ」


 サーチによる検品は難易度が高い。完璧に揃えるとなるとかなりの出費になってしまう。それを続ければ維持費も馬鹿にならない結果に。少しでも利益を上げようとして先走り過ぎたか。


「仕方がない。検品体制を整えるとしよう。あとは早く原因をはっきりさせるんだ」

「分かりました。早急に準備をいたします。それから……」

「どうした? エリック」

「原因についてですが、現場レベルでは調合技術そのものが足りていないのではないかと言われているようです」

「なんだと? どういうことだ……?」


 意味が分からないぞ。調合技術が足りていないだと? 十分な期間と人員を確保している部分だ。間違えるはずがないと思うが。エリックは不安そうな顔をしている。

「アリッサ嬢から奪った技術……数カ月かけて奪ったかと思われましたが、誰もそれを実践できていないのではないかと」

「馬鹿な……かなり念入りに盗ませたはずだ。その技術が行使出来ていないなど考えられない」


 いくらなんでもそれはおかしい。アリッサの才能が高いといっても限度があるはずだ。あれだけの準備をして盗むことができない技術などあるわけがない。

「心配し過ぎだエリック。そんなわけはない。きっと調合過程で些細なミスをおかしているとかその辺だろう。検品体制をしっかりすれば、なんとかなるはずだ」

「だといいのですが……」


 エリックは不安な声を漏らす。まさかそんなことがあるわけがない。あれだけの期間をかけてじっくりと盗んだ技術そのものが間違っているなど……いや、あり得ないな。とにかくまずは検品体制を完璧にすることだ。費用はかかるが仕方ない。このままでは売れなくなってしまうからな。
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