スパダリかそれとも悪魔か

まめ太郎

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 退院してから特にやることもない俺は家の大掃除をしてみたり、読みたかった漫画を大人買いしたりしたが、一週間ほどで飽きてしまった。
 かといって会社を休んでいる身としては大っぴらに一人で遊びに出掛けるのも気が引ける。

 怜雄はどこかよそよそしさを感じるが、そのくせこちらをじっと見つめている時もあって、よくわからない。
 もしかして俺の怪我に責任を感じているのかとも思ったが、向こうから何も言ってこない以上俺から話題に出すこともできなかった。

 そんなことをつらつら考えていると、俺のスマホが着信を告げた。
「よう、神崎。今いいか?」
 相手は西條だった。
「ああ、全然大丈夫。むしろやることないから暇で。」
 そう言うと電話口から西條の笑い声が聞こえた。
「ならちょうどよかった。神崎、明日時間あるか?」
「だから暇なんだって。時間ならたっぷりあるよ。何?なんか用?」
「実は明日会う予定だったクライアントにドタキャン食らわされてな。一日予定が空いてしまったんだ。神崎が良ければ、前から気になっていた江の島のかき氷屋に付き合って欲しいんだが。」
「かき氷?わあ、行きたいっ。ちょっと時期的に寒そうだけど、江の島も久しぶりだし楽しみだな。」
「そう言ってもらえると誘った甲斐があるな。じゃあ、明日の九時に車で家の前まで迎えに行くよ。」
「本当?ありがとう。よろしくな。」

 俺は電話を切ると浮上した気分のまま明日着ていく服を考えようと立ち上がって、振り返ると、そこにはじとっとこちらを見ている怜雄がいた。
「うわっ、びっくりした。帰って来たなら声かけろよ。」
「ごめん。」
 謝る怜雄の顔が暗い。仕事で何かあったのだろうか。

「怜雄、珍しく今日早いじゃん。帰ってくるって連絡なかったからラーメンくらいしかないけどいい?」
「ん。」
 怜雄はコートを脱ぎながらちらちらとこちらを見ている。
 リビングの椅子に座った怜雄の前に野菜たっぷりのラーメンを出してやる。
 怜雄はそれを食べながらも俺に何か言いたそうにしているので、俺は「何?」と苦笑しながらきいた。

「いや…努なんだって?」
「ああ、明日江の島にドライブに行こうって。」
 俺の言葉を聞き、怜雄が盛大に咳きこみ始める。
「おい、大丈夫かよ。ほら、水。」
 水の入ったコップを渡すと怜雄がむせながら礼を言った。
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