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晩秋な私の魔王編

第329話 ダンスとボス退治は両立するのか伝説

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 チーム三棋将の快進撃は続く。
 というか、実際はバングラッド氏一人で配信なしでも殲滅しちゃうと思うけど……。
 ここは他の二人の見せ場を作るべく、彼には力をセーブしてもらっているのだ!

『はっはっは、まあまあやるなあ』

 棒を持って殴りかかってくる、オークみたいなモンスター数匹を剣一本で捌くバングラッド氏。
 配信で映えるよう、きちんと拮抗してみせたりしている。

 長いゲーマー生活でプロ根性を養ったんだなあ。
 でも、そろそろ巻いたほうがいいかもなので、私はさささーっと走っていって、オークの横に並んで。

「ちょっと急いでくださーい」

『ウオッ!?』『グオオオッ!?』『グオー!』

『当たり前みたいな顔をしてモンスターの横に立つ娘はお主くらいであろうなあ! 良かろう! では決めるとする!』

 オークたちはびっくりしてるけど、バングラッド氏の相手で精一杯で私には何もできないっぽい。
 攻撃が来るなら私もデコピンカウンターの用意はしていたけど、さすがバングラッド氏だなあ。

『ふっ……はぁっ!』

 いきなりバングラッド氏の剣が加速した。
 オークの棍棒を全部叩き切ると、返す刃でオーク全員の首が飛んだ。

 剣がチンッと音を立てて鞘に収められる。

「おおーっ」

※『つええええ』『本当に一蹴しやがった』『ゲームしてる時より実戦のほうが強いもんなあ』『こいつ、はづきっちと戦った時は六刀流だっただろ? つまりこれ……力を二割も使ってない……』

「私のゴボウを初めて削った人ですからねー。最初の頃のゴブリン以来の衝撃!」

 私がバングラッド氏を褒めると、コメント欄がどよめいた。
 しかも飛べるし、変形できるし。
 あれ?
 実力的にイカルガナンバー2はこの人だな?
 兄を計算にいれると、互角かなあ。

 トリットさんは分かりやすい活躍をしてる。
 基本は二丁拳銃とキックが武器。
 うんうん、分かりやすく兄の弟子だね!

 で、自在に飛べるもんだからぐんぐんダンジョンを攻略するのだ。
 彼の配信は酔いそうー。
 私の三半規管はチタン製とかよく言われますけど。

 こっちは、ベルゼブブがフォローのために追いかけてくれてる。
 彼女、私との最大の違いは飛べるんだよねー。

『あまり長い間は飛べないよ。お腹減るし』

 たしかに飛ぶとお腹すきそう!

 さてさて、こっちはバングラッド氏が敵を片付けて、カモちゃんもひと仕事終えて戻ってきたので。

 私がカンペを持って彼らに今後の動きの指示を出した。

※『はづきっち、カンペ持ってカメラの前に普通に立っちゃだめだよw!!』『スタッフのいるべき位置を知らない女w』『まあ最前線に飛び込んでいける最強のスタッフだからな……』『自分の配信で忙しいのにイベントの補助までバッチリやるんだなあ』

「あっあっ、すみませんすみません」

 私はカメラにペコペコしながら、サササッと横に動いた。
 そしたらそこにデーモンが『もがーっ!』と出現したので、お尻で横に弾いておいた。

『ウグワーッ!』

※『あっ、画面外でデーモンが消滅した!』『もののついでみたいに尻でデーモンを倒すなw』『このスタッフは強すぎるw』

 さあさあ、配信を続けていきましょうー。
 飛び回るAフォンを誘導しながら、私は三棋将のみんなを追っていく。

 安全になったダンジョンを、後からスタッフさんがやってくるのだ。

「ここで一曲でーす!」

 企画部の人から指示が飛んだ!
 三棋将の三人は、予定の配置についた。

 音楽がかかり、ダンスと歌を披露する。
 コメントは大盛りあがり。
 ダンジョンはコンサートステージだあ!

 ちなみにこうやって盛り上がってても、関係なくモンスターがやって来る。
 これをなんとかするのが私とベルゼブブのお仕事なのです!

 二人でバーチャルゴボウを握り、画面外でモンスターをペチペチ叩いて回る。

『ウグワーッ!』『ウグワワー!』『ウグワッウグワーッ!』

※『画面外から妙な合いの手が挟まってくるな……』『見なくても何が起きてるか想像できるw』『ちゃんと歌の盛り上がりに被せないように音がしてるの、芸が細かい』

 コンサートで盛り上がるコメント以外に、いつものお前らがいるなあ。
 私たちが画面に映らないように頑張ってるところを、ずっと注目してる。

 デビューイベントに集中しろー。

 あっ、ここで熟成されたボスデーモンの登場です。
 私と宇宙さんによってダンジョンは今日まで封印されてきていたので、ボスはぐんぐんと成長して大きくなっていたのだ。

 外見は真っ青な肌色の、物凄く大きな赤ちゃん。
 ただ、シルエットがそう見えるだけで、金属とか木材をでたらめにツギハギにした悪趣味ロボットみたいな外見なのだ!

 こわあー。

 これがサビの部分で出現したので、コメント欄が大騒ぎになった。
 後ろで、企画担当のプロデューサーさんがガッツポーズしてる。

 ナイスタイミングだったみたい。
 私はカンペを受け取り、サッと走った。

「歌ってない人でやっつけて! 入れ替わりで!」

 一見すると無茶なオーダー。
 だけど、ちゃんとこういうことを想定して、歌ってない人が攻撃できるようになっているのだ!

 バングラッド氏の剣が炸裂し、トリットさんの拳銃が炸裂し、最後にカモちゃんのよく分からない魔法が『天和!』炸裂した。

『オギャギャギャギャギャ……せっかく出てきたと思ったのに……オギャウグワーッ!!』

 ボスデーモンが崩れ落ちていく。
 断末魔は邪魔になるので、強烈にノイズキャンセルを掛けて配信に流れないようにした。

「うんうん、完璧じゃないか」

 兄が嬉しそう。

「お前、引退してもスタッフとして超一流だな……。雇われる気ないか?」

「ありませえん」

 妹を今からスカウトする人がどこにいますか。
 そんな感じで、三棋将のデビューイベントは大盛況のうちに終わったのだった。

 明日から独り立ちだねえ……!
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