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2.ついてない日

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シェイラは、"トップ"の中では下っ端の役立たず扱いをされているが、同期の魔術士研究管理塔に入った研究員の中では比べ物にならない程、実力・実績共に飛び抜けている。
その為、本来なら若手の中では誰もが認めるはずの出世頭のはずなのだが、元々の控えめな性格が災いしてか、何故か同期の研究員達からも下手にみられてしまっているのだ。

しかも、それは"トップ"での扱いとは違い、所謂同じ女性からの程度の低いのようなものだった。


「あのぉ、資料消えましたけど?どうしますか~?」

「あ~ら、ごめんね。そのサンプルならゴミかと思って捨てちゃったわ!貴女なら、また作れるでしょう?」


「・・・・・」

(はぁ~…またか)


心の中では、大きな溜息が溢れていた。

シェイラにとって、自分が馬鹿にされている事などは、正直些細な事でしかない。
別に、周りからなんと言われようともあまり気にならない。
だからこそ、"トップ"の先輩方から『手元が遅い』とか『要領が悪い』等の指摘に関しても、真摯に受け止めて改善に努めているし、それに関して不満をもつことはほぼ無い。
まぁ…口は悪いと思うけど。
基本的に、彼らは研究熱心すぎるだけだ。

しかし、彼女達の嫌がらせまがいの事に関しては別だった。
そろそろ堪忍袋の尾が切れそうだ。

彼女達は、シェイラにとって何よりも大切な研究に対して害を及ぼそうとすからだ。
何度も、資料や研究経過のサンプルなどを捨てられたり無くしたりされれば、いくら争い事を嫌うシェイラとしても許せなくなる。
一度意を決して、彼女達に立ち向かおうとしたのだが、生憎呼び出したタイミングで"トップ"の先輩方からの呼び出しがあった。
シェイラにとっては、何よりもそちらを優先させてしまう。
そんなことの繰り返しで、結局何も手を打てないまま現在に至るのだ。

流石に、このような事が続けば心身共に疲弊していくことは避けられない。
口の悪い上司と意地悪ばかりの同僚達…
辞めたいけれど、踏み出せない。
働けば働くほどお金は貯まるけれど、自由な時間は無くなっていった。


シェイラは、悩みながら重い身体を引き摺るようにして家路に着く。

しかし、ついてない時は、とことんついていなかった。

疲れてよろよろと歩いているシェイラの背後から、誰かがドンッ!とぶつかってきたのだ。
痛いと思っても、出てくる言葉は言い慣れた「すみません!」である。
咄嗟に出た言葉と同時に、振り返ろうとしたシェイラは相手から漂う甘い匂いを嗅いだ瞬間、そのまま意識を手放した。
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