俺の前世が◯◯だって言ったら、――信じる?

 放課後の教室で。何気なく拾った一冊のノート。
 誰の?
 名前も何もないノート。誰のものか確かめたくて、ノートを読んだ俺は、胸が苦しく切なく、泣きたいぐらい、ワケのわからない衝動に駆られる。
 「読んだのか? これを」
 慌てて戻ってきたノートの持ち主。クラスメートの桜町。
 「頼むから、このノートのことは忘れてくれ」
 そう懇願され、俺も忘れるつもりだったのに。
 そこから、少しずつ、少しずつ。
 友だち、五木と川成とバカをやるだけの日常が変わっていく。
 ついさっきまで見てたはずなのに全く覚えてない夢。自分の体なのに、別の誰かが乗り移ったような動き。不気味な既視感。
 歯車が軋んでズレていくように、俺のなかの何かが少しずつ変化してる――気がする。
 「頼む! あのノートの小説、もう一回読ませてくれ!」
 拝み倒し、どうにかノートを借りることに成功するも、桜町から「これはあくまでフィクションだから」、「読んだら内容は忘れてること」と念を押されて。
 (……これって、まさか)
 小説の内容と、掴むことのできなかった夢の記憶が、少しずつ重なっていく。遠いとおい昔、戦乱の世にあった、悲しい男女の物語。俺の身の上に起きた、遠いとおい過去の記憶。
 (俺の前世って、まさか……姫?)
 悲恋の片割れ、千寿姫。瞼を閉じるたびにまざまざと浮かび上がる姫の姿。胸に響く姫の心情。これで俺が姫じゃなければ、誰だったっていうんだ。
 (ってことは、どこかにアイツも、どこかで生まれ変わってるのか?)
 久慈三郎真保。姫の父親を殺した男。許嫁のいた姫を、領地と一緒に我が物にした、傲慢極まりない男。俺がここに生まれ変わってるってことは、アイツもこの世界のどこかいにるってことか?
 千寿姫だった俺と、真保かもしれない桜町と。
 前世の俺と、現世の俺と。前世のアイツと、現世のアイツと。

 過去と今を巡る、新里千尋と桜町和真の物語。
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