復讐なんて意味がない? そんなのやってみないと分からないよね

ももがぶ

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第1章 始まり

第5話 俺はどこで間違ったんだろう

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「なんだよ、ここは!」
「ジョー君、多分森の中だと思うけど、あまり大声は出さない方がいいと思うよ」
「うっせぇ! 俺に指図するな!」
「でも……」
「まだ、言うか! あぁん!」

 森の中へと転移してきたジョー達のグループ七人だったが、転移した場所は鬱蒼とした森の中でどこに向かえばいいのか案内板があるわけでもなくジョーが癇癪を起こせば、一緒に転移してきた坂井誠さかいまことがジョーに騒がない方がいいとアドバイスするがジョーはそれを一蹴する。だが、他に一緒に転移してきた仲間も同じ様にジョーに対し騒ぐなと言う。

「ジョー、そのへんにしておけ」
「そうだぜ。確かにソイツの言う通りだ」
「ああ、お前が騒いで魔物が来たらどうするつもりだ?」
「そんなの、俺のスキルで「こんな場所で狂戦士パーサーカーなんて、使ったらダメだよ」……なんでお前が俺のスキルを知っている?」
「え、当てずっぽうだったけど、もしかして当たっちゃったのかな」
「ぐっ……」

 まだ騒いでいるジョーに対し空手部の鈴木慧すずきさとし、剣道部の内田剛うちだたけし、相撲部の太田亮介おおたりょうすけがジョーにこんな森の中で騒げばどうなるか分からないだろと言えば、ジョーはそんなのは自分のスキルを使って蹴散らすと言えば自分より下に見ている坂井誠に自分のスキルを当てられてしまい、憤慨する。

 坂井誠は少年が特性に合ったスキルを用意したという言葉から、ジョーなら多分と思ったスキルを言っただけだが、その慌てた様子から予想が的中したことが分かる。

 そんな様子を見て坂井誠はふふっと笑う。

「まあまあ、ジョー君落ち着いて」
「お前まで俺に指図するのかよ!」
「もう、ちゃんと皆の話に耳を傾けなよ。ほら、見てよ。こんな鬱蒼とした森の中で魔物じゃなくても誰かに襲われたら一溜まりもないよ。優太に会う前にやられちゃってもいいの?」
「それは困る」
「なら、まずは状況を確認しないとでしょ」
「ああ、そうだな。悔しいがお前の言う通りだな。……で、誰?」
「ヒドい! 同じクラスでしょ」
「悪い……それで名前は?」
「私は森千夏もりちなつ。理恵と同じ茶道部だよ」
「そ! 私と千夏は親友マブなの。ねぇ」
「ねぇ」

 坂井誠の言葉に苛立っているところに知らない女子からも落ちつけと言われカチンとくるが言っていることをよく聞けば確かにそうだと思い素直に言うことを聞くが言っている女子の名前が分からない。だが、そんなジョーを放っておいて目の前の女子は勝手に自己紹介を始め、佐々木理恵と同じ部活仲間で親友でもある森千夏だと自己紹介する。

「……それで結局、どうすればいいんだよ」
「先ずは街道に出るのが先だな」
「そうだな。アイツは人里の近くに転移させると言ってたしな」
「だな。ん? あっちの方が明るいな。多分、森の切れ目だと思うぞ」
「じゃあ、そこを目指すか」
「ああ、行こ……ゴフッ……」

 ジョーはやっと皆の意見に耳を傾け、ここからどうするのが正解なのかと話を切り出せば、人がいる場所に行くのが先だろうと鈴木慧すずきさとしに街道に出るのを提案され、内田剛うちだたけしが少年の言っていたことを思い返し、太田亮介おおたりょうすけが指差す先を見れば、確かに少し明るくなっている。それを見てジョーもじゃあとそこを目指そうと歩きだしたところで、鈴木慧が急に血を吐いて倒れる。

「おい、どうした! 慧!」
「ぐぉ……」
「剛、お前まで……血?」
「ジョー、気を付けろ! 狙われているぞ……カハッ……」
「亮介! どうした……おい、誰にやられたんだ! おい!」
「ジョー君、どうなってるの?」
「俺に言われても……」

 急に倒れ口から血を吐き出している三人を見てジョーだけでなく、理恵達も何が起きたのかが分からず不安になりジョーに確かめるが、ジョーにも何が起きているのか分かるハズもない。すると、どこからともなくさっきまで気配すら感じ取れなかった坂井誠が面白そうに笑いながらジョー達、三人の前に立つと意味深な言葉を述べる。

「ふふふ、知りたい? 知りたいよね、ジョー君」
「坂井、お前何か知っているのか?」
「知っているよ」
「教えろ! 誰が慧達をこんな目に「僕だよ」……え?」
「だから、僕がやったって言ってるの」
「……どういうことだ?」

 ジョーは血を吐き続ける三人の出血を止めることも出来ずにただ呆然と見ていることしか出来なかった。そんなジョー達の前に坂井誠が現れ、この状況について知りたいかと問われればジョーは当然、知りたいと答えれば坂井誠は自分が殺ったと答えるが、ジョーは目の前に立っている如何にも気弱ないじめられっ子な坂井誠が自分の仲間である三人を殺したと言われてもにわかに信じることが出来ずに「どういうことだ」と坂井誠に尋ねる。

「どういうも何も僕が君達にイジメられたから仕返しただけだよ。そんな不思議なことじゃないよね」
「……だからって、殺すことはないだろうが!」
「ふふふ、ジョー君おかしなことを言うね。だって、アイツが言ってただろ。これは最後の一人になるまで続くデスゲームだって」
「ぐっ……」
「あれ? もしかして、僕なんかに殺られる訳ないって思ってた? ふふふ、バカだねぇ。だから、狂戦士なんて使いどころがないスキルしかもらえないんだよ」
「お前、俺のスキルを知っているのか?」
「知っているも何もラノベじゃ神風アタックの代名詞だよ。使ったが最後、そのスキルの効果が切れるまで敵味方関係なく動く物に反応するんだからさ。ホント残念スキルだよ。そんなんでよく福島とやり合おうなんて考えたよね。どう考えても無理目だよ」
「ね、ねえ坂井君。もしかして私も殺すの?」
「……そんなスキルはいらない。ってか、それ以上に仕掛けるなら、殺るよ?」
「ひっ……」

 坂井誠は佐々木理恵が自分に対し魔眼を使って魅了しようとしているの止めるように言えば、佐々木理恵は思わず悲鳴を上げる。そして坂井誠も三人も殺して気が大きくなったのかいつの間にか一人称が僕から俺に代わっている。

「ふぅ~アイツが言ってたのはホントだったね。俺が殺った三人の固有スキルが俺の中に入って来たよ。いやあ、楽しいね」
「ふ、巫山戯るな!」
「何が?」

 ジョーは友達三人を殺され、それが当然だとでも淡々と話す坂井誠に激昂するが、当の坂井誠は「だってそういうゲームだよ」と返す。

「……それは分かっているさ。でも、先ずはこっちの世界に慣れるのが先だと俺達のグループに入って来たんじゃないのか!」
「ん~まあ、確かにそうは思ったけど、やっぱり俺って人に使われるのは慣れてないんだよね」
「ん? どういう意味だ」
「ジョー君のお父さんは、坂井物産に勤めているんでしょ」
「あ、ああ、そうだ。でも、今はそんなの関係ないだろ!」
「まあ、いいじゃない。で、俺の名前は言えるかな?」
「お前は坂井誠だろ。それがどうした!」
「ははは、俺も人のことは言えないけど、虎の威を借る狐ってのはこんなにも滑稽なんだね」
「何が言いたい?」
「だからぁ、俺の名前は坂井……で、ジョー達の父親の勤務先は坂井物産でしょ。ついでに言うなら、ジョーのお父さんの出世の切っ掛けになったのが、坂井物流との大型契約だよね。ここまで言っても分からない?」
「だから「ジョー君、逆らわない方がいいよ」……はぁ?」
「あのね、ここまでの話を纏めると坂井君は坂井物産、坂井物流を纏める坂井財閥の関係者じゃないかな」
「だから、それがどうした!」
「ははは、佐々木さん。もうここは日本じゃないから、そういうのは関係ないよ。確かに俺は坂井財閥の直系だよ。祖父が庶民の心情を理解することから始めなさいなんてバカげた家訓から、俺も公立の中学に入れられたんだよ。それが、このザマだからね。こんな場所じゃ家の力なんて使えないから自力でどうにかするしかないんだ」
「だからって、いきなり三人を殺すなんて……」
「そうかな。多分だけど、ジョーも含めてさ。どこかで落ち着いたら俺を殺す気でいたと思うよ。だって、俺だけが外様だからね。そうでしょ?」
「……」
「沈黙は正解だと言ってるのと同じだよ」

 坂井誠はジョー達の父親が勤める会社の頂点に位置する経営者の直系であることを明かすが、こんな異世界では何の役にも立たないと言う。そして、頼れるのは自分の力以外に何もないことを悟り、三人を殺したと言えば佐々木理恵は、そうだとしてもいきなり殺すのは間違っていると反論する。でも、坂井誠は今殺らないと真っ先に殺られたのは自分だからとジョーに言えば、ジョーは無言のままだ。

「ま、言わないなら言わないでもいいよ。でも、あのまま日本にいたら破滅したのはジョーのお父さんだったんだから、それについては福島に感謝した方がいいよ」
「それはどういう意味だよ!」
「ホントに分からないの?」
「だから、どういうことだよ! パパには関係ないだろ!」
「「「パパ?」」」
「あ……」
「パパ……ぷっ……やっぱ、コイツはダメだな」

 坂井誠はあのままアイツが何もしないでいれば、破滅へと導かれたのはジョー達の家族、更に言うならばジョーがイジメた坂井誠に対する責任を坂井誠は集めた証拠を手に親に託し弁護士を通じ、ジョーの親に対し裁判も視野に入れていることを言い含め中学での立場を逆転させる計画だったことを話す。だが、それも福島優太のお節介により不発に終わり、果てにはこんな異世界へと連れて来られたのだ。

「そういう訳でお前の『狂戦士』には興味ないし。お前をこの場で殺ってしまうのもアイツのデスゲームの趣旨から外れるだろうから、生かしておいてやるよ。感謝しろよ? お前のそのゴミスキルによ」
「くっ……」
「ねえ、私達はいいの?」
「ん?」
「だから、私達はいらないの? これでもいろいろ役に立つと思うけど?」
「思うよ?」
「ふん! いらねぇ。じゃあな」
「「あ……」」

 坂井誠は隠密スキルを使い、ジョー達三人の前から姿を消せば、残されたジョーは友だった三体の亡骸と、自分を見限ろうとした女子二人を見詰め「俺はどこで間違ったんだろうな」と天を仰ぎ見る。
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